【投薬にお悩みの飼い主さん必見】簡単!確実!薬の飲ませ方

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:苦い薬をむりやり食べ物に隠して与えたことにより食べムラ・食い渋りになる

改善策:食べ物と薬を完全に分ける方法で確実に薬を飲ませる

 

 

食べムラ・食い渋り・食欲不振は投薬が原因かも

 

※この記事は、以前投稿した記事(ワンワンラボトップ画面にバナーがあります)をリライトして再投稿しています。

 

 

我が家の最愛の愛犬クリンは、昨年の3月に19歳1ヶ月でこの世を去りました。

大きな持病もなく、旅立つ直前までいつも通りに過ごしてくれたことは、飼い主としてとても嬉しいことであり、今でもこれからもずっと自慢の我が子です。

クリンはとても聞き分けがよくてとてもお利口な子でしたが、たった1つ最後まで頭を悩ませたことがありました。

 

それが、食べムラ・食い渋りです。

 

そしてそれは、飼い主の失敗から始まってしまいました。

そう、「投薬の失敗」がきっかけでした。

 

 

すべての飼い主さんに伝えたい!薬は分けて与えましょう

 

 

クリンが15歳の時、脚の不具合で痛み止めを飲ませたことがありました。当時は飼い主もまったく知識がなく、フードの上に薬を載せて食べさせようとしましたが、全然ご飯を食べてくれませんでした。

それまでは胆泥症で利胆剤と強胆剤の2種類の薬を毎日飲ませていましたが、いつもフードの上にちょこんと載せてやるとそのまま食べていてくれたので、いつも通りフードの上に載せたんですが、まったく食べてくれませんでした。

数日して痛みが治まったので痛み止めはなくなりましたが、その後子宮の不具合からCRP(炎症数値)が高くなった時に処方された抗生剤が非常に苦いもので、それに気づかずに好きな肉やおやつに隠して無理やり飲ませようとしたことから、強烈な食べムラ・食い渋りが始まってしまいました。

そうなんです、クリンに「食べるものには薬が隠されている」と思わせてしまったんです。

それから約4年、ほぼ毎日食べムラ・食い渋りに悩みました。

試したフードは50種類以上、冷蔵庫は開けたけど食べなかった缶詰やおやつでいっぱいになり、封を切ったドライフードがいくつもあるという状態でした。

その後転院し、そこで薬の飲ませ方を教えてもらい、完全に薬と食べる行為を分けるようにしたことで、何とか食べ物に対する不信感は払拭できましたが、昔のようにご飯を出してすぐに食べてくれるということはなくなり、食事の時間になると憂鬱で毎日食べるか食べないかで悩みまくりました。

 

愛犬の食べムラ・食い渋りで悩んでおられる飼い主さんで、毎日の投薬をフードにまぜて与えているという飼い主さんがおられたら…

薬は絶対に分けてください!!!

食べない悩みは深刻です。そして、それは投薬が原因の可能性が非常に高いです(涙)

シリンジとピルクラッシャーが必要になりますが、ネットだとシリンジは1本50円くらいで、ピルクラッシャーは1000円くらいで購入できます。

とても簡単で、確実に薬の飲ますことができる方法ですので、薬を飲んでくれないとお悩みの飼い主さんはぜひ一度試してみてくださいね。

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老犬の食べムラ・食い渋り ~老犬が食べない悩みをお持ちの飼い主さんへ伝えたいこと

ワンワンラボにご訪問いただき、ありがとうございます。

今日はクリンの20歳の誕生日。

クリンは2019年3月に19歳1ヶ月で旅立ちましたので、残念ながら成人式を迎えることは叶いませんでした。

この記事を書いた当初は、クリンは18歳を迎えたばかりで、食べムラ・食い渋りに悩んでいる真っ最中でした。ありがたいことに、この記事はたくさんの方にお読みいただき、2年前の記事にもかかわらず、今でもコメントをいただいております。

クリンを見送ってから思うこと、気づいたことなどを追記して、クリンの20歳の誕生日にリライトして公開させていただくことにいたしました。

どうか、食べムラ・食い渋り・食欲不振で悩んでおられる飼い主さんに届きますように。

 

 

シニア犬の「食欲不振」は特別ではない

 

 

我が家の愛犬クリンの食べムラは、15歳の時から始まりました。

食べムラを経験し、いろんなことを知りました。

食べることは決して当たり前のことではないこと、フードと薬は分けた方がいいこと、実は食べムラや食い渋りは一番精神的に堪える、ということなどです。

同じ悩みを持つ飼い主さんはたくさんいらっしゃると思います。食べムラ・食い渋りに約4年間悩んだ飼い主のひとりとして、経験と感じたことなどを書いていきます。

 

クリンの食べムラが始まって一番最初に思ったことは、「このままどんどん弱って衰弱していくのではないか」ということでした。若い頃は、お腹の調子が悪くなると1~2日食事抜きで様子を見るということもありましたが、この頃は普通に食欲があったので、さほど気になることはありませんでした。

 

そして「あること(飼い主の失敗)」がきっかけで、「食べること」そのもの、食べ物に対しての不信感を持たせてしまいました。今まで喜んで食べていたものですら、口にしなくなってしまいました。

ネットで「シニア犬 食べムラ」で検索すると、「食べないのは末期症状…」「最期は食べなくなって…」など、かなりネガティブな表現のものが多く、読めば読むほど余計に不安になっていきました。少しでも希望を持ちたくて検索するのに、出てくる結果がマイナスのものばかりだと、ただでさえ弱っている心がどんどん追い込まれてしまうんですよね。

歳を取ると、体調も常に万全ではありません。寝不足だったり、前日に胃の調子が悪いと、それだけで食べなくなることもあります。ですから、愛犬がシニアになって食欲が落ちることは、とても自然なことなのだとは思いますが、それでもやっぱりとても心配になります。

 

 

食べムラの原因を考えてみる

 

 

食べムラの原因として、元々食べることに執着がなかったり、単なるわがままであったりもしますが、何かしら「食べなくなった」きっかけがあったという場合もあります。いくつかの複数の問題が原因で食べない、ということもあると思います。

愛犬が食べないことは、飼い主にとってとても深刻です。食べないと体力の低下や体が冷えて代謝が低下することもありますので、少しでもいいから何か食べてほしいと願ってしまいます。

振り返ると、うちの場合は食欲不振の時には必ず原因がありました。

 

食べない時に考えられること

 

1.なんとなく食べたくない

2.胃腸の調子が芳しくない

3.噛む力が弱まって、または歯に問題があって食べにくいため食べない

4.体のどこかに痛みや不具合(病気)がある

5.食べることそのものへの不信感

 

1.なんとなく食べたくない

前日にたくさん食べた時などは、翌日なかなかご飯を食べないことがあります。シニアになると長時間寝ていることが多くなりますので、動く時間が少なくなり、胃腸の動きも悪くなっていることがあります。若い頃と違い、老犬になると消化にも時間がかかるため、お散歩などの適度な運動や気分転換は食欲を高めるきっかけになります。

また、鼻が利かなくなっていることも考えられます。犬にとって匂いはとても大切な情報。ところが年を重ねるごとに匂いもわからなくなっていきます。良い匂いにつられてキッチンに飛んでくるようであれば問題ないですが、無関心でいるようなら、もしかすると匂いがわからなくなっているのが原因のひとつかもしれません。

そしてこれはシニア犬あるあるですが、「単なるわがまま」ということも考えられます。人間同様、歳をとると犬もわがままになります。食べムラ・食い渋りが続いている時は、手を変え品を変えいろんなものを与えてしまいがちです。すると、「待っていたらもっといいものが出てくるかも」と、ドッグフードなどを食べなくなってしまうこともあります。

こんな時は、匂いの強いトッピングが有効です。多少の添加物もよしとして、かなり匂いが強い缶詰をトッピングしたり、ふりかけをレンジで温めて匂いを強くしたりすると食べてくれることもあります。

わがままかも、と思う場合は、少し様子を見るのもひとつです。病気や体調不良がない場合はドッグフードを下げてしまうのもひとつ。ただし、ハイシニアの場合は、好きなものをおいしく食べてもらうというのもありだと思っています。お腹を壊さないなら、人間用の牛乳もおススメです。クリンの晩年はテラカニスという缶詰と人間用の牛乳にとても助けられました。

 

2.胃腸の調子が芳しくない

歳と共に代謝が落ち、内臓の働きが悪くなります。消化の悪いものを食べたり、なかなか消化できない場合などは食欲が減退する原因になります。クリンは夜中にご飯を食べたがることが多く、ご飯を欲しがるのが嬉しくてついつい食べさせてしまうと、翌日はなかなかご飯を食べなかったということがありました。

胃腸の調子が悪い時は便の状態がいつもと違ったり、腸がキュルキュル鳴ったりします。そんな時は食欲が出るまでそっとしておきます。そんな時、牛乳はとても役立ちます。牛乳は犬に与えてはダメという意見もありますが、お腹を壊さなければ問題ないですし、牛乳だけで数ヶ月生きた犬もいると獣医さんに聞きました。牛乳は栄養もあるし液体で飲みやすいので、なんとなく食欲がない、という時にはとても助かります。ワンコは甘い味をおいしいと感じるそうなので、体に優しい砂糖やはちみつなどを混ぜて甘味をつけてあげると、より飲んでくれるかもしれません。

お腹の音が数日治まらなくて食欲がない場合は、胃腸炎・膵炎など、病気の可能性があります。数日続く場合は病院に行くことをおすすめします。こじらせてしまうと長引いてしまい、命を脅かす危険性があります。シニア犬の場合、こじらせると本当にやっかいなので、様子がおかしいと思ったら診察を受けることを強くおすすめします。

 

3.食べにくいから食べない

今まではパクパク食べていたフードも、歯の状態が悪くなったり、顎の力が弱まったりすることで、噛めなくなってしまったり、食べにくくなっていることが考えられます。

うちの場合、咥えたおやつをポロっと落としたり、それまで大好きだったキャベツの芯などを食べなくなったことで、顎の力がなくなったとわかりました。それ以来、食べやすい形状に小さくカットしたり、フードを砕いてやることで食べるようになりました。あまり大きな粒だと誤飲の危険もありますので、年齢と共にフードの大きさを変えてあげることをおすすめします。

犬って案外繊細で、「うまく食べられない」と食べなくなってしまうことがありますので、もし思い当たることがあれば、試してみてくださいね。

 

4.体のどこかに痛みがある

振り返ると、クリンが食べなかった原因は体の不具合が一番の原因だったと思います。食べムラ・食い渋りになったきっかけは投薬でしたが、食べない時には体のどこかに痛みがありました。

クリンの場合は子宮の鈍痛と歯の痛みでした。子宮摘出をしたのは18歳になる前でしたから、それまで約3年間も痛みがあったのだと思うと、もっと早く転院すればよかったと今でも思います。

術後摘出した子宮を見せてもらいましたが、片方が通常の2倍くらいに腫れあがっていました。ずっと気持ち悪いような痛いような状態だったから、食欲も出なかったんだと思うと言われたときは、気づいてあげられなかったことをものすごく悔みましたし、今でも後悔の念は消えません。

参考記事:避妊手術について考える ~老犬の子宮蓄膿症の治療について

 

体のどこかに痛みがある時は、何らかのサインがあります。食べムラ・食い渋りもそのサインのひとつです。

もしかしたら、なんとなく具合が悪いという感じで、検査では出てこないかもしれませんが、食欲不振が続くようでしたら、獣医さんに相談されることをおすすめします。

食べないことに以下のような症状が出始めたら、症状が悪化していたり、炎症数値が跳ね上がっていることも考えれ羅れます。

寝てばかりいる/失禁/軟便/腸から音がする/吐く/うずくまるなど

ワンコは我慢することが多いそうで、痛がったりするのはよほどの状態であることが多いそうです。特に老犬の場合は、たった1日処置が遅れただけで重篤な状態になることもあります。

ワンコは10歳を超えると体のあちこちに不具合が出始めることが多いそうです。どんな病気でも、早期発見できれば早く治療することができますし、心臓や腎臓などの再生しない臓器も、投薬により寿命を大きく伸ばすことができます。悪いところがないようでも、数ヶ月ごとの定期健診を受けておくと不具合に素早く対処できます。

 

5.食べることへの不信感

これは今でもずっと後悔していることで、クリンに申し訳ない気持ちでいっぱいです。

クリンの食べムラのきっかけは「投薬」です。

14歳で胆泥症と診断され、以来毎日の投薬が始まりましたが、普通にご飯の上に薬を置いて一緒に食べさせていたため、問題なく薬を飲むことができていました。ところが15歳の時の足の炎症がきっかけでご飯を食べなくなってしまいました。その時に処方された「抗生剤」が非常に苦い薬で、それを無理やり飲ませようとしたことがきっかけで食べ物に対する不信感を持たせてしまいました。

それまで大好きだったお肉やささみ、ジャーキーなどにくるんで薬を飲ませようとしましたが、結局ばれてしまって口から吐き出してしまいました。そんなことを繰り返しているうちに、痛みがあって食べなかっただけなのに、食べ物自体に不信感をもってしまい、食べること自体を嫌がるようになってしまいました。

これは飼い主として最大の失敗であり、今でもクリンに申し訳ない気持ちでいっぱいです。正直、この失敗がなかったら、食べることが大好きなままであったら、もしかしたら成人式を迎えることができたのではないかとさえ思います。

 

 

食べムラを怖がらないで

 

 

クリンが15歳の時から始まった食べムラ・食い渋りは旅立つ日までほぼ毎日続きました。

体の痛みや不具合が取れた時は食欲も改善しましたし、お腹が空くとすごい勢いで食べてくれることもありましたが、すぐに食べないことが癖になってしまったように思います。

一度食べムラや食い渋りになってしまうと、何とか食べてほしいと「好きなおやつ」や「好物のお肉」など、犬にとってのごちそうを用意したり、毎回フードを変えてしまったり、新しい缶詰を次から次へと開けてしまったりすることで、どんどんわがままになってしまいました。当時冷蔵庫の中はクリンの食べなかったものでいっぱいになることもありました。

愛犬が食べないことって、飼い主の精神的なダメージが本当に大きいんですよね。このまま食べなかったらどうしようと落ち込み、実際わたしはノイローゼになってしまいました。毎日眠れずにいろいろ考えては泣いてみたり、ネットで検索しては落ち込んだり、今考えると本当におかしくなっていたと思います。

でも、どれだけ食べなくても、お腹が減ると必ず何かを口にします。病気が原因の食欲不振でない限り、食べムラはいつか治まります。クリンは食べない日もありましたし、痩せてしまったこともありましたが、それでも19歳を迎えることができました。

 

特に老犬は、食べるスイッチが入りにくいという場合もあります。若い頃より運動量が減り、代謝が落ち、なかなかお腹が空かないということもあります。そんな時は「もっと食べたい」「お腹が減った」というスイッチを入れてあげるのも手です。スイッチは、大好物のおやつや、人間の食べるもので甘いものも結構有効です。

カステラ、バームクーヘン、バニラアイスクリーム、加糖ヨーグルトなど、お腹が減っている時はものすごく食いつきます。これは奥の手としておすすめです。

クリンの場合は、先にカステラだけを与え、食いついてきたらフードの上にカステラを小さくちぎったものをトッピングして食べさせたりします。これを我が家では「呼び水」と呼んでいます。

トッピングだけ先に食べてしまい、フードだけ残ると食べなくなることもありますので、食べている最中にトッピングを横から追加したり牛乳を入れたりして、そのまま止まらず食べ続けるようにしています。

 

 

愛犬に食べムラや食い渋りが出た時に大切なこと

 

 

今、愛犬の食べムラで悩んでいる飼い主さんへ。

クリンの食べムラ・食い渋りに約4年向き合い、もし持病や体調不良などがないのであれば、あまり深刻に悩まないでください。1日2日食べなくても、お腹が減ったら必ず食べてくれます。我が家のわがままシニア犬は、15歳から3年食べたり食べなかったりを繰り返していますが、今でも元気に過ごしていますから。

 

何よりも愛犬にとって一番ダメージが大きいのは、飼い主さんの悲しい顔や、食べないことを叱られることです。

犬って飼い主の精神状態をよく理解しているんですよね。クリンが食べない時、イライラしたり怒ったりすると、元気がなくなったり余計に食べなくなったりしました。

でもご飯を食べた時に「すごいね~~!」と褒めると、食べるスピードがアップするんです。ああ、犬ってちゃんとわかってるんだな、とつくづく思いました。

 

犬にとっての一番の良薬は、飼い主さんの愛情であり、飼い主さんの笑顔です。

 

たとえ食べなくても、どうか怒らないであげてください。大丈夫大丈夫、お腹が減ったら食べようね!と笑顔で接してあげてください。

15歳から4年間、ずっと食べないことに悩んできましたが、19歳を元気に迎えることができました。そして旅立つ前日まで、いつも通り過ごすことができました。

多少食べなくても、たとえ食べない日があっても、どうかあまり深刻にならないでくださいね。

 

 

ライター:福井 惠子

 

 

【老犬・シニア犬の食欲不振】年齢と共に変わる食い渋り・食欲低下の悩み②

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:食べムラ・食い渋り・食欲不振・食欲低下

発症年齢:15歳~

発症の経緯:投薬の失敗~加齢による食欲低下

治療法:自宅での工夫

 

関連記事:【老犬・シニア犬の食欲不振】年齢と共に変わる食い渋り・食欲低下の悩み①

 

「食べない」悩みから「食べられない」悩みへ

 

前回の記事では食べムラ・食い渋りの悩みから、体の機能が低下するのと同時に食べる機能の低下による「うまく食べることができない」悩みへと変化した過程についてお話させていただきました。

15歳の頃はクリン自身が食べたいと思うものしか食べなかったので、食べたいものが何かを探して当たりを見つけるといった感じでしたが、年を重ねるごとに、うまく食べられるように環境を整えることが必要になってきました。

最後の半年は、器の場所がわからなくなったため、どうやったらフードまで誘導できるか、また飲み込みが悪くなってきたことでフードの形状や大きさなども考えるようになりました。

今回は体の変化・老化に伴う「食べるもの・食べさせ方の変化」についてお話させていただきます。

 

関連記事:【老犬・シニア犬の食欲不振】年齢と共に変わる食い渋り・食欲低下の悩み①

 

15歳~17歳半:食べ物への不信感の払拭

 

クリンが食べなくなった最大の理由は投薬の失敗です。

好きな食べ物に苦い薬を隠して無理やり食べさせようとしたことで、食べることに対して恐怖を植え付けてしまったことが一番の原因でした。苦い薬は抗生剤と痛み止めで、投与は限られた日数しか投与していませんでしたが、薬をやめても食べることへの恐怖はなくなることはありませんでした。

当時常用薬だった利胆剤と強胆剤を1日2回服用していましたが、無味の薬でさえ嫌がるようになり、それまではフードの上に置いて一緒に食べてくれていたのが、薬やサプリメントの匂いがするだけで飛んで逃げるようになってしまいました。当時通っていた病院に確認したところ、1日くらい飲まなくても問題ないと言われていたので、投薬よりも食べることを優先しました。

今となっては15歳は若いと思えますが、当時は十分高齢だと思っていたため、食べないこと=体力が落ち弱ってしまう=もしかしたらこのまま衰弱してしまうのではないか…と考えていました。

今思い返すと、1日食べないことはあっても、丸2日何も食べないということはありませんでした。たいていお腹が空くと何かしら口にしてくれていました。無理やり投薬することをやめたことで薬への警戒心も少しずつ薄れていったのか、食べ始めの時に薬を入れなければ普通に食べてくれることもありました。

投薬については、当時はまだシリンジを使って投薬という知識はなかったため、薬をオブラートでくるんでジャーキーの匂いをこすりつけたり、おろし金ですったジャーキーをまわりにつけて、食べている時にトッピングをふりかけるフリをしてフードの下に隠し入れたりしてごまかして飲ませていました。

当時気に入っていたのは、砂肝ジャーキーでした。無添加のものや自宅でレンジで作ったジャーキーをはさみでカットしてふりかけたりフードに混ぜていました。

でも食欲が落ちている時は、匂いの弱い無添加だと食べないこともあったので、その時はホムセン等で売っている添加物たっぷりの砂肝ジャーキーを使うこともありました。クリンはこの体に悪そうなジャーキーが大好きで、食べないよりは食べた方がいいということで、結構お世話になりました。

 

【ご飯は食べないけど心配なかった時の状態】

  • ご飯を食べなくても水は飲んでいる
  • 好きなものには反応する(生クリームやバームクーヘン等)
  • 元気で動きもいい
  • 通常通り排泄ができている

 

 

17歳半~18歳半:体の機能が落ち始める

 

17歳の誕生日を迎えた頃は、まだまだ元気いっぱいでした。目も見えていましたし、アイコンタクトもしっかり取れていました。

ところが、17歳半を超えた頃だったと思いますが、初めて玄関前の段差のところで転んだんです。

その頃は、よく自宅前でノーリードで走らせていました。少し離れたところに連れて行き、地面に降ろしてそのまま自宅前に戻りクリンの名前を呼ぶと、嬉しそうに走ってきていました。

自宅前には少し段があり、2段の階段があります。それまでクリンは自分で階段を上っていました。腰が心配だったので、基本抱っこするんですが、ある時自分でいつものように上ろうとして、手前の段差でコロンと転んだんです。

以降、お散歩の時にしりもちをついたり、少し傾斜がついているところで転んでしまうといったことがありました。年を重ねるごとに転ぶ回数が増え、18歳半を迎える頃には、1日数回のお散歩の中で1回は転んだりしりもちをつくようになりました。

視力の低下もあったと思いますが、つまずいた時にふんばる力がどんどん衰えていたのだと思います。ちょうどこの頃、階段から落ちるということもありました。我が家のリビングは2階にあり、いつも帰宅したら3頭の子たちが階段前に集合して待ってくれていたのですが、その時にみのすけに押されて階段を落ちてしまいました。驚いてすぐに病院に連れていきましたが、どこも問題なくホッとしました。それ以来、階段前には柵を置くようになりました。

運動機能の低下と共に、食べる機能にも少しずつ衰えが見られました。

食べるスピードがそれまでよりもゆっくりになり、サイズの大きな野菜やおやつなどをくわえて落としてしまったりということが見られるようになりました。

その頃から、台の上に置いてご飯を食べさせるようになりました。それまでは床置きでしたが、すごく食べにくそうにしていたため、高さを変えてみたところ、それまでよりもスムーズに食べてくれるようになりました。

17歳9ヶ月の開腹手術後からシリンジを使うようになり、シリンジでの投薬となりました。この時に投薬の苦労から解放されることになりました。

シリンジを使えるようになると、食べない時には流動食や介護食をシリンジで与えられるようになりました。最初は嫌がりましたが、少しずつ慣れてくれて飲み込んでくれるようになりました。シリンジを使えるようになり、介護の時間がぐっと減りました。できるだけ自力で食べてほしいと思っていたので、シリンジ食はできるだけ控えるようにしていましたが、投薬のストレスから解放されただけでもかなり楽になりました。

 

 

【体の状態にあわせてご飯や薬の与え方を変える】

・ドライフードの粒の大きさはあっているか(飲み込みや咀嚼に問題はないか)

・以前より食べるスピードは落ちているようなら、フードの形状や大きさ・固さを変える

・食べにくそうにしていたら、食べる高さを変えてみる

・常用薬があり食べムラがある場合はシリンジ等で投薬コントロールすると安心できます

 

 

18歳半~19歳:顕著な機能低下~できないことが増えていく

 

クリンはとても元気な子でした。毎日のお散歩では楽しそうにピョンピョンと飛び跳ねるように走り、立ち止まるとわたしの周りをくるくると走るくらい足腰の丈夫な子でした。

ところが18歳半を過ぎた頃から、足腰に明らかな異変が出始めました。それまでは夜中に起き出して歩き回っていましたが、転んで起き上がれなくなるという状態になりました。

夜中に「ヒーン、ヒーン」と鳴く声が聞こえ、慌てて起きてクリンの元に行くと、倒れて起き上がれなくなっているということが度々起こるようになったのです。

病院では、とにかく体を冷やさないようにといわれていたので、この頃は服の重ね着+腹巻をしていました。軽い素材ではありましたが、動きが制限されているかもと思い、服を1枚にしました。そして毎日のお散歩+バランスディスクでのトレーニングをするようになりました。トレーニングの効果があったのか、転ぶ回数は少し減りました。

そして12月に歯石除去をしました。麻酔は笑気ガスのみで、挿管はせずに短時間で終了しました。年齢的に麻酔の負担はあったと思いますが、歯の状態がかなり悪くなっていたことと、ずっと炎症数値が下がらなかったことで投薬が続いていたため決断しました。

術後数日は食欲低下がみられましたが、食欲が戻ってからはよく食べてくれるようになりました。歯の状態が悪いと、食欲にかなり影響があると感じました。特に歯槽膿漏や歯のぐらつきで痛みがある場合は、食欲に直結するように思います。

食べない日はシリンジ食で与え、とにかく体重が減らないように気をつけていましたが、クリンの体重は3kgちょっとになっていました。ヘルニアもあったので、あまり体重が増えるのもよろしくないですが、体力が落ちないようにかなり気をつけていました。

19歳を迎える頃には、お散歩で転ぶようになり、リードを上に引っ張って転ばないようにしていました。そしてわたしの周りをグルグルと走り回ることもなくなっていました。

ほんの半年前までは台の上のフードを食べることができていましたが、この頃には口元まで手で持っていき、食べやすい角度をつけてご飯を与えるようになっていました。台の上に載せても、顔を下げることが難しくなっていたことと、口にうまく運ぶことができなくなっていたんです。

そして誕生日を迎える頃には、お水を飲みにいくこともなくなりました。最後に自力でお水を飲みにいったのは、確か19歳の誕生日を迎える前の1月だったと記憶しています。なので水分量を計って与えるようになりました。

クリンは水頭症があったため、その影響が大きかったように思います。認知症も多少あったかもしれませんが、夜鳴きもせず、撫でたり抱っこしりすると嬉しそうにしてくれていましたし、病院では先生に反抗もしていました(笑)

時系列で整理すると、足の衰えと食欲低下は比例していることがとてもよくわかりました。足の衰え=体力・筋力の低下なので、当たり前といえば当たり前なんですが、よく転ぶようになったのと同時に、お口の中に食べ残しが多くなっていました。大好きだったバームクーヘンも、食べようとするものの、口の水分をとられるためか飲み込めなくなり、口の中がバームクーヘンだらけになることもありました。

この時に、「食べない」のではなく、「うまく食べられなく(飲み込めなく)なっている」のだと認識しました。

 

 

【老犬・シニア犬の食欲不振】年齢と共に変わる食い渋り・食欲低下の悩み③に続く

 

ライター:福井 惠子

 

 

 

【老犬・シニア犬の食欲不振】年齢と共に変わる食い渋り・食欲低下の悩み①

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:食べムラ・食い渋り・食欲不振・食欲低下

発症年齢:15歳~

発症の経緯:投薬の失敗~加齢による食欲低下

治療法:自宅での工夫

 

 

飼い主の精神的負担が大きい愛犬の『食べない悩み』

2019年2月撮影 ご飯を食べさせていたキッチンにて。口の周りにいっぱいご飯をつけて冷蔵庫に激突していたのでたくさん跡がついています。

 

我が家の長女クリンの「食べない悩み」が出始めたのは、15歳の頃からでした。ある日突然前足の不具合が出始め、病院でもらった痛み止めの薬を食べ物に隠して無理やり飲ませようとしたことで、《食べること=苦い薬を隠されている=嫌なこと》と認識させたことがきっかけでした。

以来クリンが旅立つまでの約4年間、毎日食べムラ・食い渋り等の「食べない悩み」がありました。食事に関する悩みは歳を重ねるごとに少しずつ変化し、18歳を超えてからは「うまく食べられない悩み」が出始め、19歳を少し迎える前あたりからは、今度は「うまく口に入れられない悩み」になり、「うまく飲み込めない悩み」に変わっていきました。

うちの場合、食事に関する悩みにも段階がありました。今回は、時系列で実際に起こったことや、どのように対処したかをお話させていただきたいと思います。

 

 

その①:食べない悩み

2015年撮影。食べムラ・食い渋りがひどく痩せていた頃。

 

クリンが15歳の時に、食べ物に薬を隠したことがきっかけでご飯を食べることに対して躊躇するようになり、それからクリンが旅立つ19歳までずっと「ご飯を食べさせること」がわたしの毎日の悩みの種になりました。

 

関連記事:シニア犬(老犬)の食べムラ ~食べムラで悩んでいる飼い主さんへ伝えたいこと

 

クリンが14歳の頃から1日2回2種類の薬を飲むようになりました。最初はご飯の上に薬を載せて何の問題もなく完食してくれていましたが、15歳の時に痛み止めを無理やり口に入れて飲ませようとしたことで、薬は苦いものだとインプットされ、以降薬と口を触られることを拒否するようになりました。

それでもトッピングの工夫で食欲を刺激したり、好きなものを探してそれを食欲の呼び水にすることで、何とか食べさせることができていました。

 

関連記事:【シニア犬(老犬)の食べムラ】我が家の秘密兵器

 

同じく15歳の頃に見つかった子宮の不具合により、子宮に慢性疼痛があり食欲が落ちてしまっていたことが転院して初めてわかりました。約2年間内科治療をしていたことが、結果こじらせてしまうことになりました。当時の主治医の先生に対処療法で逃げる治療を勧められたこと、年齢的に積極的治療はやめたほうがいいといわれたこと、わたし自身外科治療が怖かったことなどから、結果クリンも自分も苦しむ結果となってしまいました。

転院し、初めて診察してもらった時にすぐ子宮の痛みがあることがわかり、見つかった時にすぐに手術をしていたらもっと早く改善していたかもと言われた時、早く転院すればよかったととても後悔しました。年齢的に外科治療を選択できないと思い込んでいたんです。病院・先生によって治療の選択が違うということを、この時実感しました。

すぐに手術を決意し、子宮摘出手術を受けたのは17歳9ヶ月でした。

食べない原因がはっきりしている場合は、それを改善することで食べてくれることもありますが、病気が原因の食べムラ・食い渋りや食欲不振も考えられます。

また、わがままも考えられます。いつものフードを食べないからと、様々な種類の食べ物やフードを次から次へと出してしまうと、「今我慢したらもっとおいしい物が出てくる」と学習してしまい、食べなくなることもあります。

食べない原因が体のどこかにあるのか、ただのわがままなのか、食べなくなってしまった原因に心当たりがあるかなどを見極めることが、食欲不振・食い渋りを改善するために必要だと考えます。

 


食べない原因は何か

・食事で嫌な思いをしたことはないか

・食べない時に新しいフードや食べ物を次々と出したことはないか

・食べない時に病院で検査(血液検査・エコー等)を受けているか

・歯の痛みや歯石など、口の中に原因はないか

 

 

その②:うまく食べられない悩み

 

15歳になるまでは、毎日ではないものの口の中のケアはガーゼや専用の指サックなどで拭きとっていたので、歯石以外はさほど大きな問題を感じることはありませんでしたが、一切口を触らせてくれなくなってから、あっという間に歯石だらけとなってしまいました。特に上の奥歯がひどく、歯石が頬側に飛び出してずっと当たっている状態でした。

17歳9ヶ月で手術を受けましたが、その際歯石取りと抜歯も合わせてお願いしました。

優先順位は子宮摘出⇒歯石取りということでしたが、歯石除去とぐらつきのあった歯を1本抜歯してもらうことができました。

病院では子宮の痛みがなくなれば食欲も戻るだろうし、口の中がきれいになったら食べやすくなるだろうとのことでした。術後5日目にやっとドライフードを食べるようになり、食欲もどんどん戻ってきました。麻酔の影響でそれまで問題のなかったヘルニアの痛みが出始めましたが、手術前よりもクリンの食欲は安定しました。食べ始めの食い渋りはあるものの、まるまる1日何も食べないということはなくなりました。

 

 

その③:機能低下による嚥下・咀嚼の悩み

 

クリンは年齢の割には機能を長く保てていたと思います。18歳になっても自力で走っていましたし、ご飯も食い渋りはあるものの、パクパクと食べてくれていました。

ところが、18歳半を迎えた頃から、目に見えて機能が低下していきました。

まずは視力の低下でした。それまではうっすらと見えていたようで、アイコンタクトもできていましたが、少しずつできなくなり、いつのまにかできなくなっていました。

次に筋力の低下。最初はしりもちをつくようになり、次にコロンと転ぶようになりました。そして前足がガクンとなりつんのめって顎からこけることがありました。そして転んだ後になかなか起き上がれなくなりました。

そして嚥下障害。それまでは超小粒のフードをそのまま食べていましたが、術後からフードを半分~1/3くらいにカットして与えていました。ところがその粒を全部飲み込むことができず、口の中に残ってしまうようになりました。

この頃は食欲不振が見られたらシリンジ食を与えていたんですが、以前は嫌がりながらも飲み込んでくれていましたが、口の横から漏れてうまく飲み込めないということも見られました。

それまでは好きなトッピングを準備して、一度食べてくれたらその後は最後まで食べてくれていましたが、嚥下障害が出始めてからは、途中で食べることをやめてしまい、あとから確認すると口の中にフードが残っているということも見られました。

クリンはそれまでふやかしたフードを拒否していたので、ドライフードを砕いてジャーキー等をすりおろして上にふりかけて食べさせるのが定番でしたが、この頃からは牛乳や鶏ガラスープなどの水分を一緒に与えるようになりました。

フードはフードプロセッサーで粉状になる手前くらいのかなり細かく砕いた状態にして、できるだけ飲み込みやすい状態にし、ご飯を食べた後の投薬時にシリンジで頬側を水で流すようにして、口の中に食べかすが残らないように気をつけていました。

年齢と共に機能が低下するのは当たり前のことですが、クリンに関していえば、18歳半を境に一気に落ちていったように思います。筋力を維持できるよう、日に数回のお散歩とバランスディスクは欠かさず行っていましたが、足の筋力が落ちるのと同時に体の機能もどんどん落ちていきました。

 

 

【老犬・シニア犬の食欲不振】年齢と共に変わる食い渋り・食欲低下の悩み②に続く

 

 

ライター:福井 惠子

 

 

【老犬の病気】高齢犬の積極的治療のメリット・デメリット(3)

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:歯周病・子宮の不具合・ヘルニア

発症年齢:14歳~・15歳~・18歳

発症の経緯:14歳の時突然右頬が腫れあがった

治療法:投薬~歯石除去&抜歯手術・再生医療

 

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ヘルニア治療スタート

 

クリンが手術を受けてから、それまでずっと悩んでいた食べムラ・食い渋りが少しずつ改善されていきました。

術後数日はほぼ食べませんでしたが、術後5日目にフードを食べてくれるようになってからは、ほぼ毎日フードを食べるようになりました。多少のムラはありましたが、術後2週間で抜糸してからは食欲も安定し、食べないという理由での強制給餌の回数も減りました。

ところが、抜糸しても曲がった腰はそのままの状態でした。最初は傷がつっぱるのかと思っていましたが、それがヘルニアの痛みが出始めたサインでした。手術後もお散歩は大好きでしたし、歩けなくなるということはありませんでしたが、腰の曲がりは一向に改善されませんでした。

検査の結果、椎間板ヘルニアの痛みが出始めたということがわかりました。

先生のお話では、術前にも腰の痛みがあったかもしれないが(レントゲンの画像診断では痛みが出ているレベルのヘルニアとの診断でした)、それよりも子宮と歯の方の痛みが強く、ヘルニアの痛みはさほど気にならなかったのだろう、とのことでした。

痛みはあるものの、生活に大きな支障はなかったことから、「アデクァン」という薬剤を筋肉注射する治療をすることになりました。

これは、痛みのある部位にクッションの役割となる物質を注射するという治療法で、最初の1ヶ月は週2回(月8回)の注射をし、その後少しずつ回数を減らしていき、月1~2回は継続して注射を打つという治療法でした。

初めてのヘルニア治療でしたが、注射が効いたようで痛みは随分軽減されたようでした。副作用も心配なかったので、この治療を継続することにしました。

治療を始めて3ヶ月は順調でしたが、注射を月1回にしたところ、腰の痛みが再発したようでした。クリンの場合は体に不具合や痛みがあると食い渋りが出るため、食欲が落ちたり食いつきが悪くなるとすぐに病院に行きました。

鍼治療とアデクァン注射の回数を増やして様子見していましたが、ほどなくしてまた食い渋りが出始めました。4月半ばのことでした。実は以前よりヘルニアと水頭症治療のために「再生医療をしてはどうか」と提案されていましたが、なかなか炎症が治まらなかったため、先送りになっていました。

再生医療をする方向で血液検査をしてもらったところ、なんとCRPが19という結果でした。原因はやはり歯の不具合でした。

クリンは投薬の失敗から口を触らせてくれなくなり、歯石を取ってもらってからも歯のケアはほとんどできず、手術からたった5ヶ月で結構な量の歯石が付いていました。

若い頃はしっかり噛んで食べられますし、お水もたくさん飲むことができるため、口の中に食べかすが残りにくいのですが、高齢になると飲み込む力が落ち、口の中に食べかすが残りやすくなるため、どうしても歯石が付きやすくなるようでした。

残念ながら、再生医療は一旦お預けとなり、歯の炎症を抑える治療をすることになりました。

 

 

再生医療~二度目の手術まで

 

歯の炎症を抑えるため、抗生剤を処方されました。高齢のため、できるだけ副作用が少なくて、体に負担のない薬を選んでいただきましたが、薬の耐性がついてしまっていたこともあり、長期にわたり薬を飲み続けることになりました。週に1~2回血液検査を受け、薬の効きを確かめ、数値が改善していないと薬の変更をするということを数度繰り返しました。

クリンは肝臓が弱く、転院した当初からGPT数値は100を超えていました。腎臓は大きな問題がなかったため、最初は肝臓に負担の少ない薬を選択しましたが、効きが悪かったので肝臓に負担のかかる薬に変更しました。なんとか炎症数値は治まりましたが、GPTが500を超えてしまったため、抗生剤をストップして再生医療も数値が落ち着くまで見送りとなりました。

※薬は肝臓に大きく負担のかかるタイプと腎臓に大きく負担のかかるタイプの2種類あるそうです。

 

それから約4ヶ月間投薬とヘルニア治療を続け、8月になりやっと再生医療を受けることができました。再生医療後はとても調子がよくなり、足取りも軽やかになりました。10月には頸椎ヘルニアの痛みが出始めたため、二度目の再生医療を受けました。

再生医療は副作用がほとんどないためリスクが低く、ヘルニアだけでなく脳疾患や心臓・腎臓など、治療が難しい病気にも効果が期待できる反面、癌や炎症などがある場合はそれを悪化させてしまうこともあるそうです。

クリンの場合は、問題のあった歯に影響があったように思います。歯石取りと抜歯してからも、歯の炎症が治まらず、1回目の歯の処置をしてから今年の3月までの1年4ヶ月の間で、抗生剤を飲まなかったのは3ヶ月あるかないかくらいでした。

もしクリンがもう少し若ければ、問題のあった奥歯を抜歯してもらっていたと思いますが、クリンの年齢を考えると長時間の麻酔は非常にリスクが高く、ぐらつきのある歯しか処置ができない状態でした。

再生医療の影響もあってか、抗生剤を止めると炎症数値が上がり、また薬を飲むということを繰り返していて、肝数値も少しずつ上がっていたため、いつかは歯の治療が必要になると考えていました。一度目の再生医療をした後の9月から、歯の状態をこれ以上悪くしないために「デンタルバイオ」という口内細菌の繁殖を抑えるサプリメントを使うようになりました。

 

わたしは過去に何度も「もっと早くやっておけばよかった」と後悔することがありました。もっと早く転院して子宮を取ってもらっていたら、こんなに食い渋りに悩むこともなかったかもしれませんし、高齢のクリンに痛い思いをさせずに済みました。投薬の失敗から口の中を触れなくなってしまったのも、最初からシリンジで飲ませることができていれば、こんなに歯の状態が悪くなることもなかったと思います。この後悔から、できるうちにやれることをやった方がいい、と考えるようになりました。

歯の菌の怖さについては、いつも病院で聞かされていました。歯が悪い場合は最優先で治療をした方がいいし、悪いまま放置すると他の臓器に影響を及ぼす可能性が高いといわれていたため、先生からストップがかからない限り、できる治療は何でもやろうと考えていました。

先生に歯の治療について相談したところ、調子がいいうちに処置をした方がいいだろうとのことで、2018年12月3日に2回目の抜歯と歯の掃除をしていただくことになりました。

 

 

2度目の手術~術後の変化

 

歯の処置をする時、クリンは18歳10ヶ月になっていました。病院でも麻酔をする最高齢だといわれました。もちろん不安はありましたが、先生を信頼していたこと、これが最後のチャンスであることから、迷っている時間がもったいないと考えました。

 

そして手術当日を迎え、オペ前検査すべて無事クリア。クリンは麻酔に耐え、無事帰ってきてくれました。抜きたかった奥歯はまったくぐらつきがなくて手付かずとなりましたが、小さな奥歯を1本だけ抜いてもらいました。トータルでかかった時間は、歯の掃除と合わせて20分弱でした。

麻酔はガスのみで挿管はしなかったそうです。管を喉に通そうとしたら、ガスで眠っているはずなのに全力で喉をしめて管を阻止したそうです。「この子は誤飲することはないと思うよ」といわれ、思わず笑顔になりました。

術後の経過は順調で、多少の食い渋りはみられましたが、1日1回はフードを食べてくれましたし、二度の再生医療の効果もあり、ヘルニアについては痛みもないようでした。相変わらず歯を触られるのは嫌がっていましたが、痛みが軽減したこともあり、以前よりは反応しなくなっていたので、食後に食べかすが残らないよう、シリンジで唇と歯の間を洗浄したり、指で食べかすを取ってできるだけ歯石がつかないようにケアすることができました。

二度目の麻酔は、時間が短かったため術後も平熱体温だったこと、その後の血液検査でも問題なしだったので、影響はほぼなかったと思います。計2回の手術はどちらもうまくいきました。ヘルニアという不具合は出ましたが、これも想定内。わたしはやってよかったと心から思います。

ただ、もう少し若い頃にしてあげればよかった、と思っています。

もっと早く積極的な治療を選択していれば、クリンはもっと楽に過ごせたし、人間でいうと90歳を過ぎた年齢でこんなに痛い思いをすることもなかったでしょう。

そして高齢になればなるほど慎重に事を進めるため、医療費もかさみます。若い頃の避妊手術なら数万円で済みますが、クリンの場合は数十万円かかりましたし、術後の通院も若い子なら数回で済むところを、十数回は通いました。

 

 

老犬の医療費は、楽に旅立つための保険料

 

老犬になってからの医療費は、眠るように旅立つための保険料だと思っています。

クリンは14歳までほとんど病院のお世話にならず、心臓の薬を飲み始めたのは16歳になってから。毎月かかる医療費は17歳になってからぐんと上がり、旅立つまでの約2年間でかなりの金額になりました。でも後悔はまったくありませんし、やってよかったと思っています。

クリンが18歳を超えてから、近い将来に必ずやってくるお別れの覚悟を少しずつしていました。いつか来るその時に、笑って見送ってやれるように、自分にできることはできる限りどんなことでもしよう、と心に決めていました。

もし昨年12月に歯の治療をしなければ、もう少し長生きしてくれたかもしれませんし、歯の不具合もさほど問題なかったかもしれません。でも治療をしなければ、抵抗力が落ちて体中に菌が回ってしまい、心臓が悪くなったり、他の臓器に不具合が出ていたかもしれません。

積極的治療を選択したからこそ、最後の血液検査・エコー検査でほぼ問題なしと診断され、治療を一旦終えることができ、「元気なままピンコロ」で旅立ってくれたのだと思っています。

何よりも大切なのは、飼い主自身が納得して決断しているかだと思います。先生に遠慮して質問できなかったり、セカンドオピニオンを受けたいけど言い出せなかったり、不安な気持ちのまま治療を続けることは、のちに後悔することになってしまうのではないでしょうか。

 

クリンは19歳の誕生日以降、目に見えて機能が落ちました。ご飯を食べても太れなくなり、食べる量が少ないとすぐに体重は減ってしまいました。お散歩では楽しそうに走っていましたが、リードを引っ張っていないと転んでしまうこともありました。後足がつっぱってうまく曲がらないことや、前足が脱力して転倒してしまうこともあり、車いすを使おうか考えていた矢先の旅立ちでした。

きっとクリンは、自由に動けなくなってしまう前に、自分の意志で旅立ったのだと思っています。

どんな困難にも立ち向かい、辛い治療に耐え、病気に負けず、天寿を全うしてくれた。そんなクリンを、わたしはとても誇りに思います。

 

 

積極的治療は良い面も悪い面もあります。

どんな治療法を選択するかは飼い主にゆだねられます。どの病院を選択するか、どの先生に診てもらうか、どの検査をしてもらうか、どの薬を使うかなど、すべてわたしたちが決めるほかありません。

そして、どれだけできることをしても、大切な我が子をなくす辛さは同じです。今まで当たり前に傍にいてくれた存在がいなくなってしまうことは、たとえ天寿を全うしてくれたとしても悲しいし寂しいし苦しいです。

でも、後悔や悔いがないだけで、心は救われます。

皆様の大切な我が子が、元気に長生きされますように。そしていつか訪れるその時に、笑顔でお見送りできますように。

 

 

高齢犬の積極的治療をして~飼い主としての感想まとめ

 

【良かったこと】

・食欲が増す/普通にご飯を食べてくれるようになった(食べムラ・食い渋りの改善)

・毎日元気に過ごせる/最期の時までお散歩に行くことができた

・日々の変化をそれまでよりも敏感に察知するようになり、体の不具合に早く気づけるようになった

・旅立つ直前まで元気に過ごしてくれた(元気あり、食欲旺盛、自力で排泄、穏やかな睡眠)

・天寿を全うしてくれたと思える最期を迎えることができた(飼い主の願い通り、元気なまま眠るように旅立ってくれた)

 

【良くなかったこと】

・麻酔で体温が下がることにより、別の症状(クリンの場合はヘルニア)が出始めた

・高齢で痛い思い(怖い思い)をさせてしまった

・高齢になればなるほど、医療費(治療費用)がかかった

 

 

 

 

 

ライター:福井 惠子

 

 

【老犬の病気】高齢犬の積極的治療のメリット・デメリット(2)

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:歯周病・子宮の不具合・ヘルニア

発症年齢:14歳~・15歳~・18歳

発症の経緯:14歳の時突然右頬が腫れあがった

治療法:投薬~歯石除去&抜歯手術・再生医療

 

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術前検査~手術当日

 

転院先の病院は、しっかりと検査をして状態をできるだけ正しく知る、という方針でした。

血液検査・エコー検査・心電図・血圧・CT・レントゲンなど、ありとあらゆる検査をしました。CTの結果、中度の水頭症であることがわかりましたが、当時は特に症状が出ていなかったため経過観察となりました。そして心電図で不整脈があることがわかりました。

歯の状態も悪かったのですが、何よりも子宮の方が問題がありましたので、今回は子宮摘出がメインで、心臓の状態によっては命優先で歯は治療できないかもしれない、といわれました。

そして麻酔に耐えうるかどうかの判断が必要となりました。ホルター心電図を装着して24時間の心臓の動きを確認することになりました。検査の結果、不整脈はあるものの、それ以外は大きな問題はないとの診断でした。

一通りの検査結果、現段階ではおそらく手術はできるであろう、との判断となりました。

とはいえクリンはまもなく18歳を迎える超高齢。年齢を考え、何かあった時にすぐに対処できるよう、他の手術の予定があまり入っていない日にしますとのことで、手術は2017年11月3日に決まりました。

 

早く手術を受けて楽にしてあげたいという気持ちと、もしかしたらそのままということもあるかもしれないという気持ちで、落ち着かないままいよいよ手術当日を迎えました。ワンワンラボライターの奥村さんが、わざわざお守りを送ってくださり、毎日手を合わせ、手術当日もポケットに忍ばせて持っていきました。

当日は血液検査と、麻酔で心臓が弱った際に使用する強心剤のテストと、血液凝固検査を受け、すべてパスしました。

麻酔が効くまでに30分、処置に最低30分はかかるだろうとのことで、早くて1時間くらいで出てくるといわれ、抱っこされて連れていかれました。

 

待っている間、ずっとお守りを握りしめ、無事を祈っていました。

病院の外で待っていたら、1時間立たずに看護士さんが呼びに来てくれました。看護士さんに抱えられて戻ってきたクリンは、まだ麻酔が効いて朦朧としていました。口は開いていて血を出していて、初めて見る姿にこのままどうにかなってしまうのでは…と思いました。この病院は基本飼い主がそばについているという方針でした。初めて見る術後すぐの朦朧としている状態は、本当に怖かったです。

体温が35℃台に下がっていたため、ヒーターと暖房と電気ストーブとドライヤーでクリンの体を温めてもらいました。ほどなくして声を上げ、顔を下に敷いていたバスタオルにこすりつけだしました。先生が降りてこられ、手術は問題なく無事終わったこと、歯石がかなりひどかったこと、歯自体の状態は思ったほど悪くなかったこと、1本だけ抜歯したこと、その他の歯はぐらつきなくしっかりしていたこと、時間の関係で歯石は取ったけど磨くまではしていないことなどを伝えられました。

子宮を見せてもらうと、片方の卵巣が大きくなっていました。「これが痛みの原因だったと思う」といわれ、もっと早くに転院していればこんなに痛い思いをしなくて済んだのに、と後悔しました。

 

 

術後の経過

 

術後30分くらいして、クリンは起き上がろうとしました。まだ朦朧としていたため、支えながらお座りの体勢にし、点滴をしながら体温が上がるのを待ちました。人間だと手術をした後にすぐに動けないと思いますが、犬はとても強いなと感じました。

昼からの手術で、術後は点滴、注射、投薬をしてもらい、そのまま様子見し、帰路についたのは夜10時を過ぎていました。

帰宅したら、さっそく部屋をうろうろと歩き出しました。傷が癒着しないよう、できるだけ動くようにといわれていたので、少しだけお散歩にも行きました。18歳目前といえば人間でいうと90前の年齢となりますが、足元のおぼつかないままクリンは走ろうとするんです。

クリンの生命力の強さに感動し、この子は大丈夫だと心から思えました。

翌日からは少しずつ食事をしてくださいといわれましたが、なかなかすんなりとは食べてくれませんでした。元々食べムラ・食い渋りがあったことと、今までべったりついていた歯石がなくなり、口の中がいつもと違うことに戸惑っているようでした。奥歯の頬側にもたくさんついていて、その違和感がなくなったことが、今までと違うためかえって違和感に感じたのだと思います。

それともうひとつ。術後の点滴のため、前足には留置針が入っていました。クリンはとにかくこれが嫌なようでした。

結局手術当日と翌日の丸2日は何も口にしませんでした。食欲が戻るまでは朝晩の点滴で水分と栄養を補給してもらい、術後2日目の夜にやっと水と牛乳を少し飲み、当時お気に入りだったおやつを少し口にしました。

その翌日病院に行った時、留置針が嫌で食べないかもしれない、と伝えました。本当は食欲が戻るまではそのままの方がいいとのことでしたが、17年クリンと一緒に過ごしてクリンの性格はよくわかっていたので、食べない理由はこれもあるような気がしたんです。

無理を承知でお願いして留置針を抜いてもらい、皮下点滴と注射で対応してもらうことになりました。

飼い主の予想は見事的中し、帰宅後鶏肝の水煮を少しを食べ、薬を飲んだ後はスイッチが入ったように大量の牛肉をバクバク食べてくれました。

多少の食べムラはあったものの、その日を境に食欲は徐々に戻り、どんどん元気になっていきました。

 

 

手術大成功~想定内の弊害

 

子宮の痛みがなくなり、クリンはみるみる元気になりました。

17歳9ヶ月で一大決心して受けた手術は、大成功に終わりました。ちなみに病院の手術最高齢を更新しました。

この年齢で手術を勧めてくださった先生には感謝しかありません。転院していなければ、クリンは19歳を超えるまで長生きしてくれなかったと思います。

 

大好きなお散歩では走るスピードがアップし、まるでうさぎのように跳ねるように走っていました。

抜糸までは術後着を着ていたため、少し動きにくそうにしていました。お腹のつっぱりがあるようで、少し腰を浮かしたような姿勢でした。傷口も順調に治り、約2週間後には無事抜糸となりました。

やっと術後着を脱ぐことができましたが、クリンは腰を浮かしたような姿勢のままでした。

 

これは、ヘルニアの痛みが出始めたサインでした。

手術前に、麻酔の影響で体温が下がるため、その影響で他の部分に不具合が生じる可能性がある、と聞いていました。クリンはレントゲンで椎間板ヘルニアがあることがわかっていたため、もしかしたら痛みがでるかもといわれていました。

事前に知らされてはいたものの、ここで始めて手術を受けたことによるデメリットを感じました。

 

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【老犬の病気】高齢犬の積極的治療のメリット・デメリット(3)につづく

 

 

ライター:福井 惠子

 

 

【老犬の病気】高齢犬の積極的治療のメリット・デメリット(1)

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:歯周病・子宮の不具合・ヘルニア

発症年齢:14歳~・15歳~・18歳

発症の経緯:14歳の時突然右頬が腫れあがった

治療法:投薬~歯石除去&抜歯手術・再生医療

 

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積極的治療の選択

 

我が家の長女クリンは、17歳9ヶ月と18歳10ヶ月の時に積極的治療を選択しました。一度目は子宮摘出手術と抜歯と歯の掃除、二度目は抜歯と歯の掃除で、共に麻酔をしての処置となりました。

まもなく19歳を迎えるという年齢での全身麻酔はとてもリスクが高く、どんな影響があるかは、実際にやってみないとわからない、といわれました。

 

ではなぜリスクを背負ってまで積極的治療をしてもらったのか。

それは不具合を放置することで、他の臓器に悪い影響を与える可能性が高い、と考えたからでした。

高齢になってから体の不具合で悩まれている飼い主さんはたくさんいらっしゃると思います。特に大抵の老犬は歯が悪い子が多いと聞きます。犬の場合、歯の治療も全身麻酔となります。

年を重ねるほど麻酔のリスクは高まります。すぐに命に直結する病気などの場合は早めに処置を希望される飼い主さんが多いと思いますが、歯の治療になると投薬などで様子見される方がほとんどで、積極的な治療をするか悩んでおられる飼い主さんも多いのではないでしょうか。

今回はクリンが実際に17歳9ヶ月と18歳10ヶ月で積極的治療を選択した経緯と、自分自身が感じた積極的治療のメリットデメリットについて書かせていただきたいと思います。

 

 

不具合の始まり~右頬の腫れ

 

クリンが14歳のある日、突然頬が腫れあがりました。いきなり右目の下がぷっくりと腫れていて、驚いてすぐに当時通っていた病院で診察を受けたところ、歯が原因であるといわれ、数種類の薬を処方されました。

この薬、後でわかるのですが、実は「ステロイド」でした。

薬を飲むとすぐに腫れは治まりました。でも薬をやめるとまたすぐに腫れ出して、当時全く知識のなかったわたしは、その病院で出される薬がとても効果があるのだと思っていたんです。でもこれって、実はただステロイドで腫れを無理やり抑えているだけで、根本治療は全くしていないんですよね。

もしその時、今の病院に通っていたら、おそらく抜歯などの根本治療を選択していたと思います。

ちょうど同じくらいの時期に胆泥症が発覚し、胆のう摘出手術を強く勧められたことが病院に対する不信感となり、セカンドオピニオンを希望しました。そして投薬で治療してもらえる病院に転院しました。転院先の病院で、歯の腫れのことも相談し、その時は歯石はさほどひどくなかったため、麻酔なしで歯石を取ってもらいました。それ以降歯の腫れは一旦落ち着いたため、そのまま何もせずに過ごすことになりました。

この頃は、14歳でもかなりの年齢だと考えていました。今思うとめちゃくちゃ若いなぁと思いますが、当時は寿命は15歳くらいなんだろうと漠然と思っていました。なので14歳で手術なんて…と考えていました。

そして、この時強く勧められた胆のう摘出手術について、このままだと命の危険性があるとまで言われていましたが、転院先の病院では胆のう摘出については、する必要はないといわれました。

 

余談になりますが、この病院はニコの乳腺腫瘍を発見し手術をしてもらった病院でもあります。しかしこの病院を選択したことが、ニコの心臓病を発症したきっかけになったと思っています。あくまでも主観であり証拠などはありませんが、主治医の先生はオペ経験が少ない方で、恐らくニコの手術の際に長時間の麻酔をかけたことで心臓に負担がかかったことが心臓病発症の原因であったと考えています。飼い主の知識不足でニコの寿命を縮めてしまったことは、今でも大きな後悔として残っています。

病院選びは我が子の寿命に直結しますし、本当に心から信頼できる病院に出会うことはとても難しいことだと改めて思います。

 

 

ターニングポイントとなった15歳の出来事

 

2015年5月、クリンが15歳の時に突然前足を引きずりだしたことがありました。この時に処方された痛み止めの薬で胃が荒れたことでご飯を食べない日が出てきて、6月にヒートになった時から本格的に食べムラ・食い渋りが始まりました。

このヒートでは、いつもより経血量が多く、検査の結果子宮内に水があるといわれました。診断は子宮水腫。子宮蓄膿症の前段階のような病気です。

 

※当時、食欲について書いていたメモ

 

このまま3ヶ月ほど食べたり食べなかったりを続け、やっと落ち着いた10月に、またヒートが始まりました。ここでまた食べない日が続き、点滴を受けながら様子見していましたが、突然クリンの具合が悪くなり、膵炎の疑いで入院することになりました。

薬を飲まないと相談したところ、先生から「口を開けて喉の奥に入れるか、好きな食べ物に隠して食べさせて」といわれました。これこそが、この後約4年に渡って悩むことになる「食べムラ・食い渋り」の始まりであり、口腔ケアが一切できなくなった原因になりました。

先生にいわれた通り、無理やり口をこじ開けて飲ませようとし、何度も失敗しました。

「何とか薬を飲ませなきゃ!」という一心で、鬼の形相でクリンの口をこじ開け、薬を入れて口を閉じさせる。最初の何回かは飲ますことができましたが、その後は全く口を触らせてくれなくなってしまいました。

実はこの薬、めちゃくちゃ苦かったんです。

あまりに嫌がるため、ある時ふと「どんな味なんだろう」と思い、薬を少し舐めてみたんです。すると驚くほど苦いことがわかりました。焼いた牛肉に薬を巻きつけて隠していたため、薬が肉の水分で溶けて肉自体が苦くなっていたんです。

クリンはとても聞き分けのいい子でした。それまでは口の中をガーゼや指でこすったり、歯ブラシを噛ませたりしていました。全然嫌がることもありませんでしたし、ケアする時はとてもおとなしくしてくれていました。頻繁にしていたわけではありませんが、それだけのケアでも歯石は少ししかついていませんでした。

ところが投薬の失敗から、全く口を触れなくなりました。食べ物への不信感が生まれ、食べることを嫌がるようになり、食べムラ・食い渋りによりフードを食べてくれなくなったことなどから、口の中の状態はどんどん悪くなっていったように思います。

 

そしてクリンが15歳になり、今度は子宮の不具合が発覚しました。ヒートから陰部の腫れが引かず、食欲が落ちたため病院で検査をしてもらったところ、子宮内に水が溜まっているのがわかりました。恐らくこのあたりから子宮に痛みが出始めたのだと思います。

口腔ケアができなくなったことでの歯の不具合と子宮の痛み。これこそがクリンの食べムラ・食い渋りの原因でした。

 

関連記事:【備忘録】クリンの体調

 

 

投薬治療~手術の決心

 

口腔ケアができなくなってから約2年。その頃には目で見てわかるくらい歯石がひどくなっていました。特に奥歯はべったり歯石がついていて、口の中はかなり不快だったと思います。

17歳8ヶ月の時、口を痛がるようなしぐさが見られたため、最初の時にペンチのような器具で歯石を取ってほしいとお願いしたところ、クリンは口を触られるのを嫌がるため無理、といわれました。これがきっかけで転院することを決意しました。

 

転院先は、ブログで知り合った方が長い間通っておられた病院でした。

病院によって治療の選択は大きく変わります。クリンはすでに18歳目前。前の病院では、14歳の時に積極的治療はリスクが高いから内科治療をしましょうといわれていましたが、この病院は「治せるものは治す」という考えでした。

歯の状態がとてもひどいこと、そして初めての診察の時、触診で子宮の痛みがあることをすぐに指摘されました。

先生は、「歯の治療について、飼い主さんは割と軽く考えている人が多いけど、本当は歯は命取りになる」といわれました。

歯の菌はとても恐ろしく、それが原因で心臓が悪くなり、あっという間に旅立ってしまう子もいるとのことでした。

病院によっては投薬で抑える治療を選択されるところもあります。実際にクリンも最初に歯が腫れた時は、ステロイドで抑えるという根本治療とはかけ離れた治療をしていましたし、病院の選択次第で全然治療法が違うということを思い知りました。

年齢的には非常にリスクが高かったのですが、子宮に痛みがあること、このまま放置すると子宮蓄膿症が重篤化し、命にかかわる可能性があるため、もし治療するなら1日も早く取ってしまう方がいいこと、そして歯の不具合を放置したら、他の臓器に悪影響を及ぼす可能性があること。年齢を考えると、迷っている時間はありません。老犬になると、ほんの少しの時間も命取りになります。

わたしはクリンの生命力を信じ、すぐに手術することを決意しました。

 

 

【老犬の病気】高齢犬の積極的治療のメリット・デメリット(2)に続く

 

 

ライター:福井 惠子

 

 

【シニア犬の食事】老犬(高齢犬)の食べさせ方の工夫

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:老化によりご飯がうまく食べられなくなった

発症年齢:18歳半~

発症の経緯:老化による視力・嗅覚の低下

治療法:自宅ケア

 

 

目に見えて進む老化現象

 

我が家の愛犬クリンは、先日19歳1ヶ月の生涯を終えました。

クリンはとても丈夫で、14歳の時に胆泥症が発覚するまでは持病もありませんでした。

ところが、投薬の失敗がきっかけで「食べムラ」「食い渋り」に悩むようになりました。体調不良が重なり入院した時は、食べなさ過ぎてこのままだと危ない、とまでいわれたこともありました。

若い頃は1日食べなくても問題ありませんが、老犬にとっては一大事。食べないとすぐに痩せてしまい、体力が落ちてしまいます。

食事は毎日のこと。どうしたら食べてくれるか、日々悩み続けました。先輩飼い主さんからアドバイスをいただいたり、いろんなフードを試したりしながら、何とか食べてくれるようになりました。

体の不具合が治まり、かなり食欲も改善され、食べない悩みから少し開放された18歳半を超えた頃、新たな悩みが生まれました。

今までは「食べたくないから食べない」だったのが、「食べたいけどうまく食べられない」に変化していたのです。

今回は、クリンがご飯をうまく食べられなくなった時に実践していた「食べさせ方」を紹介させていただきます。

 

 

徐々に衰える機能

 

クリンは18歳を迎える前までは目が見えていました。当時は自宅前でノーリードで運動をさせていましたが、一目散に飼い主に向かって走ってきてくれていました。

毎日お散歩と自宅前での運動を続けていました。ヘルニア予防のため、大きな段差は避けていましたが、小さな段差はあまり気にしたことがありませんでした。

ところが、ある日いつものように自宅前を走っていた時、玄関前のほんの数センチの段差につまづいたことがありました。それまでは段差前で止まっていたんです。

それからどんどん視力は低下し、18歳半を迎える頃には、うっすら光を感じる程度にまで視力は低下していたようです。

視力と共に、嗅覚も低下していきました。今まではおやつなどを近づけると、鼻をクンクンする仕草を見せていましたが、この頃になると鼻先につけないと気づかなくなっていました。

視力・嗅覚が衰えると、食事をするのも大変になりました。

それまではお皿にフードを入れて、高さ調節してやればご飯を食べてくれましたが、目も鼻も利かなくなると、ご飯がどこにあるかがわからなくなり、同時にうまく距離感を測れなくなっているようでした。

ご飯を食べたくても、お皿に顔をうまく近づけることができなかったり、鼻をお皿で強打してしまうこともありました。

年齢と共にわがままに頑固になってきたこともあり、些細なことでもご機嫌を損ねると食べなくなりました。

このあたりから、うまく食べられるようにするにはどうすればいいかを考えるようになりました。

 

 

食べさせ方①:ご飯の場所を確認させる

 

食べムラ・食い渋りでご飯を食べさせることにとにかく苦労していたので、食事はまずは食いつきのいいトッピング用のジャーキーや肉などを先に食べさせるという方法をとっていました。

器を2つ用意し、1つの器に先にジャーキーなどをおろし金ですりおろします。もう1つの器に、ドライフードを準備し、その上にジャーキーをすりおろしたものをふりかけ、全体を混ぜ合わせておきます。

そして、食事台の前にクリンを座らせ、2つの器を床にセット。まずすりおろしジャーキーの器を手に取り、クリンの鼻に器の中にあるジャーキーを近づけます。その時に少し鼻先にジャーキーをつけると、たいていペロッと舐めてくれます。

クリンの場合、ペロッと舐める=今日はこのジャーキーを食べる、という合図だったので、すかさず器をクリンの口元に持っていき、今度は口先にすりおろしジャーキーを少しつけると、そのままペロペロと食べ始めてくれました。

そのまま少しずつ器を降ろしていき、食事台のところまで誘導します。この時クリンはずっとジャーキーを舐めています。

台の上にセットできたら、もうひとつの器に準備していたフードを、ティースプーンで横からそっと入れていきます。

フードに絡めるジャーキーを多めにしておくと、器のすりおろしジャーキーからジャーキーまみれのフードに変わった時に、比較的違和感なく食べてくれます。

ジャーキーを食べているつもりが、いつの間にかフードに変わるんですが、先にジャーキーの味がするからか、この方法だと比較的うまくフードを食べさせることができました。

ただしひどい食い渋りの時は、フードとわかったらすぐに逃げていました。逃げられた時はめちゃくちゃガッカリしたものです。

 

 

食べさせ方②:汁物を使う

 

最初は①の方法で問題なく食べることができていましたが、今度はうまく飲み込めないという悩みにぶち当たりました。人間でも固いものがうまく食べられなくなったり、喉に詰めてしまうことがありますが、犬もまったく同じでした。

特にドライフードは口の中の水気をとってしまうのか、もさもさしてとても食べにくそうにしていたので、鶏ガラ・ささみ等を水煮にしたスープや、牛乳(クリンは牛乳が大好きで、下痢もしなかったためずっと使っていました)を一緒に与えるようになりました。

これもやり方は①と同じで、先にスープまたは牛乳を入れた器を口先に近づけ、飲みだしたら少しずつ器を下げ、食事台にセットできたら、横からフードを少しずつ入れていきました。

この方法も結構うまくいきました。

 

 

食べさせ方③:スプーンを使う

 

クリンが18歳8ヶ月の時、頸椎ヘルニアが発覚しました。それまでは食事台の上に置いた食器に顔を近づけていましたが、ある時から器に顔を近づけなくなりました。食事台に誘導しようとしても、下を向かないため、フードに誘導するのが難しくなりました。

そして飲み込む力がさらに落ち、4mmほどの超小粒フードもうまく食べられなくなっていました。この頃からフードプロセッサーで細かく砕いたフードを与えていました。(クリンはお湯でふやかしたフードは食べませんでした)

器を顔に近づけたいのですが、下を向いてくれないため、器からこぼれてしまいます。

この時に使用したのがティースプーンでした。

この頃はスープか牛乳がマストだったので、ティースプーンでスープまたは牛乳をすくい、それを口元まで持っていきます。

クリンは水頭症があり、首を反らせる仕草が見られたため、最初の一口を飲ませるコツをつかむまでは結構大変でしたが、ペロッと舐めてくれると、その後は少しずつ首をおろして飲んでくれました。

最初は水分をティースプーン3~4杯くらい飲んでもらいます。そしてスープの器に砕いたフードを入れて、今度はスープ+ほんの少し砕いたフードが浮いた状態のものを飲ませるようにしました。

スープと思って飲んだものに、異物(フード)があるので、最初に口に入った時は少し拒否反応のような仕草がありましたが、そのままスープと共に口に入れてくれたら、少しずつスプーンですくうフードの量を増やしていきました。食事が進むとフードはスープと混ざってドロドロになりますが、水気があるため食べやすいようでした。

この方法は、クリンが旅立つ前日まで実践していました。同じものばかりだと飽きるので、牛乳・鶏ガラスープ・ミキサーでスープ状にしたウェットフードなどでアクセントをつけていました。ウェットフードは、お湯や温めた鶏ガラスープをフードプロセッサーで混ぜ合わせていました。温かいとより匂いが立ち、とても食いつきがよくなりました。

事前にドライフードを測っておけば、食べた量の把握ができるため、食事の管理をしたい場合に向いている方法だと思います。

 

 

若い頃は当たり前に食べてくれますが、高齢になってからは「食べてくれることがとてもありがたいこと」になりました。クリンは食欲にムラがあり、余計に食べてくれるありがたさを実感することができました。

19歳を超えてからは、食べても全く太れなくなりました。でも食べないとすぐに体重は落ちてしまうため、最後の2ヶ月は1日の食事の回数は4~5回になっていました。

1回の食事でかかる時間は、うまくいくと5分。なかなか食べ始めてくれない場合は30分を超えることもありました。

約4年食い渋りに悩んでいたので、当時は食べないことにイライラしたり、本気で怒ったこともありました。

でも、その悩みがあったからこそ、食べてくれるありがたさが身に沁みましたし、スプーンからとてもおいしそうにペロペロとご飯を舐めている姿は、もう可愛くて可愛くて、こんなに食べにくくなっているのに一生懸命食べてくれると思うと、嬉しくて泣いてしまうこともありました。

残念ながら、もうクリンはいません。「今日は食べてくれるかな」と毎日ドキドキでしたが、その悩みもありがたいことだったんだとつくづく思います。

 

 

皆様のおうちの大切な我が子が、今日もおいしくたくさんご飯を食べてくれますように。

 

 

 

 

 

ライター:福井 惠子

 

 

【犬の老化】愛犬の機能を保つために飼い主ができること

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:老化による機能低下

発症年齢:17歳~

発症の経緯:年齢と共に徐々に衰える

治療法:自宅でのトレーニング

 

 

年齢を実感する時

 

我が家の長女クリンは明日19歳の誕生日を迎えます。今でも自力で排泄し、お散歩ではぴょこぴょこ走ってくれます。年齢から考えるとそれだけでもとてもありがたいことですが、ここ1年で目に見えて機能が落ちてきてしまいました。

年齢と共に衰えるのは当たり前のこと。加齢は止めることはできません。ですが少しでも長く機能を保てるよう、飼い主にできることはあると思っています。

今回は、クリンの機能が落ちていく過程と共に、できることを少しでも長く維持するために、我が家で実践していることを紹介させていただきます。

 

 

目に見えて衰えていく機能

 

クリンは個人宅で生まれ、約3ヶ月間おかあさんと一緒に過ごしていました。そのおかげでとても丈夫な体を持っているのだと思います。14歳になるまでは、毎年のワクチンと狂犬病・フィラリア予防以外で病院にかかることはほとんどありませんでした。

クリンが生活しているのは我が家のリビング。15歳まで40㎝はあるソファーに飛び乗ったり降りたりしていました。ソファーには階段を設置し、飛び下りそうなところにはクッションなどを置いていましたが、好きなところから平気で飛び下りるのでヒヤヒヤしたのを覚えています。ところが16歳になり、降りることはできても飛び乗ることが難しくなりました。

16歳後半になり、レントゲンで椎間板ヘルニアが見つかりましたが、日常生活に影響がなかったため経過観察となりました。

17歳になり、目の機能が落ちてきて、わずかな段差でつまずくようになりました。また後肢がもつれるようになり、しりもちをつくようになりました。

17歳9ヶ月の時に子宮摘出と抜歯の手術をした際に、麻酔の影響で体温が35℃台にまで下がり、その影響でヘルニアの痛みが出始めたようで、背骨に湾曲が出てきました。

この頃には目はうっすら光を感じるくらいしか見えていないような状態で、フリーで歩かせるといろんなところにぶつかるようになりました。そして突然しりもちをつくことが出てきました。排泄もそれまでほとんど失敗なくできていたのが、あちこちで粗相をするようになりました。

18歳半ばを過ぎた頃から、寝ている場所でおもらしをようになりました。おもらしは徐々に回数が増え、18歳9ヶ月頃からは2日に1回くらいはおもらしをするようになりました。

 

そして昨年の12月になり、おもらしの原因がわかりました。

 

 

起き上がれない原因

 

クリンは水頭症があり、ここ数ヶ月で深夜に徘徊をするようになりました。

徘徊の時にも転んでしまうことがあり、転んだ時にバランスがとれず起き上がれないと、鳴いて呼ぶようになりました。

夜中に何度も起こされ、倒れているクリンを起こす。そのまま寝かせようとするものの、また起きて徘徊する。転んで起き上がれずに鳴く。こんなことが続いていたので、飼い主も寝不足で、出かけることもままならない状態になりました。

ある日、クリンが転んで起き上がれずキュンキュン鳴いていた時、倒れた状態で粗相してしまいました。その時にやっと尿意を催してもすぐに起き上がれずに漏らしてしまっていたのだとわかりました。

獣医さんに相談したところ、老化による筋力の低下と、寒いため細い筋肉がつっている状態になり、うまく立てなくなっているのかもしれないという診断でした。もしかしたら水頭症が影響しているのではと思っていましたが、脳の場合は二度と起き上がれなくなることが多いとのことで、クリンの場合は水頭症が原因とは考えにくいとのことでした。

また、厚着により体のバランスが取れなくなって、うまく起き上がれないこともわかりました。体を冷やさないようにとマイクロファイバー素材の服を着て、厚手の腹巻と首巻をつけ、更に上から厚手の服を着せていたんです。ほんの数ヶ月前までは問題なかったことが、あっという間にできなくなってしまう。正直こんなに簡単にできなくなってしまうとは予想もしていませんでした。

 

 

機能を維持するために実践していること

 

クリンは昨年の12月3日に抜歯とスケーリングをしてもらったのですが、その後数日は食欲が落ちてしまい、それまで3.2㎏だった体重が2㎏台に落ちてしまいました。

老犬になると、ほんの少しの変化でも体に大きく影響します。クリンは元々食べムラ・食い渋りがあり、手術の影響で食欲が落ちてしまうことは覚悟していました。予想通り術後は食欲が落ち、体重は減ってしまいました。恐らく痩せたことも筋力低下に影響していると思います。

数日前、初めててんかん発作を起こした時は、足元もおぼつかず、このまま立てなくなってしまうのではないかと思いました。翌日には自力で立ち上がり、今まで通り歩けるようになりましたし、自力で起き上がれているのでとてもありがたいです。

 

また、加齢により筋肉や筋力は落ち、体力は低下します。栄養の吸収が悪くなってしまうことにより、どれだけ食べても太れなくなってしまいます。ですから食欲が落ちて食べなくなると、あっという間に体重は減ってしまいます。

このまま何もしないままだと体の機能はどんどん低下してしまいます。今ある機能をできる限り維持するために、これ以上筋肉を落とさないためのトレーニングと、食生活の見直しをすることにしました。

 

【筋トレ】バランスディスク

今から2年ほど前に、知人からの情報でバランスディスクを購入しました。バランスディスクで体幹を鍛えることで、体を支える筋肉を強化することができます。

今までは気が向いた時に乗せる程度でしたが、12月半ばから1日2~3回、1セット2~3分のトレーニングをスタートしました。

何も支えのない状態のディスクに乗せるのはとても危険なので、わたしの足でディスクを挟んで固定し、その上にクリンを乗せています。最初はバランスを崩して足を滑らせていましたが、今ではゆらゆらしながらも支えなしで立てるようになりました。あまり無理をすると筋肉を痛めてしまうこともあるため、最大3分・3回までにしています。

 

【運動能力維持】毎日のお散歩

クリンはお散歩が大好きです。獣医さんの話だと、お散歩はとても大切で、筋力維持という効果だけでなく、散歩に行く子と行かない子では、心臓の強度が全然違うそうです。

実は以前はあまりお散歩に連れて行ってなかったんです。クリンがまだ若い頃に「この子は心臓が弱いからあまり無理させない方がいい」といわれたことがあり、当時知識のなかったわたしはそれをそのままうのみにしてしまい、あまり外に出さなくなりました。その後心臓に問題ないということがわかり、14歳くらいから毎日お散歩に行くようになりました。

お散歩のおかげで心臓が強くなり、17歳9ヶ月の時に手術を受けることができ、18歳11ヶ月でも麻酔に耐えることができたのだと思っています。

また最近ナックリングが出てきたので、お散歩の時はソックスを履かせるようにしています。

 

【栄養補給】サプリメント投与

クリンがうまく起き上がれなくなった時、知人からサプリメントの情報をいただきました。そのサプリメントは血と骨を作ってくれるようで、知人の愛犬は足どりもおぼつかずヨタヨタ歩いていたのが、このサプリメントを摂るようになってから元気に走れるようになったとのことでした。

クリンもさっそくこのサプリメントを試すことにしました。それと数日前から足腰のためにコラーゲンを摂らせています。うまく立てない理由のひとつに、右前足の脱力が影響していると思っています。病院でも関節が弱ってきているといわれているので、サプリメントがうまく作用するといいなと思っています。

これ以外にも、数種類のサプリメントを与えています。サプリメントは、基本愛犬家の方からいいと聞いたものをチョイスしています。いろんな良い情報がいただけて、とても助かっています。

 

【食生活の改善】食べたいものを食べたいだけ、回数を増やして与える

老犬が痩せてしまう原因のひとつに、胃腸機能の低下があります。クリンが痩せてしまった一番の原因はこれだと考えています。

良質で高栄養の食事を摂らせたいと思いますが、クリンには食べムラがあります。ドライフードは栄養バランスはいいですが、フードだけでは食べてくれません。以前は何とかフードを食べさせようと必死になっていましたが、今では食べたいものを好きなだけ食べてくれたらいいと考えるようになりました。

またてんかん発作後は、一度の食事量が半分くらいに減ってしまいました。少し前から食べ物を飲み込まずに口の中に残してしまうということがたまにありましたが、発作を起こしてからはそれが毎回の食事でも見られるようになりました。

フードはフードプロセッサーで細かく砕いたものなら何とか食べてくれるので、クリンの好きな牛乳や鶏ガラスープと一緒に食べさせています。鶏ガラスープはとても食いつきがよく、調子があまりよくない時でもおいしそうに飲んでくれています。

また、栄養補助食品や介護食等を併用して与えています。肉類は好きでよく食べていましたが、うまく食べられないこともあるため、その場合はフードプロセッサーで液状にして、そこに栄養補助食品を混ぜてシリンジで与えることもあります。

食事の回数は1日4~6回に分け、少量ずつ食べさせるようにしています。今のところ食欲が安定しているので、とても助かっています。

 

 


 

犬の19歳は人間でいうと100歳近いといいます。この年まで長生きしてくれたこと、そして自分でできることがあること自体、とてもありがたいことだと思います。

できないことを嘆くよりも、できることがあることに感謝する。そして今使える機能をできるだけ長く保てるよう、飼い主としてできることを実践していきたいと思っています。

 

もし皆様が試されてよかったことがあれば、ぜひ教えてくださいね!

 

 

ライター:福井 惠子

 

 

【動物病院の選び方】獣医さんも使い分け時代

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:ヘルニア(誤診)⇒関節の不具合・骨粗しょう症

発症年齢:15歳

発症の経緯:歩行がおかしくなった、時々カックンとしりもちをつく

治療法:ステロイド注射⇒サプリメント投与、月1回の整体

 

 

チャッピーの異変とステロイド投与

 

我が家の愛犬チャッピーは、元繁殖犬です。11歳の時に我が家に迎えました。

うちに来た時、歯はボロボロ、おまけに乳腺腫瘍もありました。来てすぐに病院にて乳腺腫瘍摘出と顎の手術、しばらくして卵巣嚢腫が見つかり、そのとき避妊手術もしていただき、残った歯は左側に3本だけになりました。

来た当初は触られることすら慣れていないような状態でしたが、少しずつ人間に対する不信感が薄れ、初めてわたしが寝転んでいるお腹のところに来て、背中をくっつけて寝てくれた時はとても感動しました。

こんなに小さなこの子が、どれほど辛い思いをしてきたのだろう。そう思うと、より愛おしく感じました。このまま元気に長生きしてほしい。なので少しでもおかしいと思うとすぐに病院に駆け込んでいました。

 

ある日、チャッピーの歩く姿がおかしいことに気付きました。15歳という高齢であるため、脚が悪くなってしまったのかと思い、すぐに病院へ。診察の結果、おそらく椎間板ヘルニアであろうと診断されました。

痛みはさほどなさそうに見えましたが、週3回2日置きにステロイド注射をすることになりました。

治療が始まり、少しは改善されたようにも思いましたが、チャッピー自身は元気なさそうに見えるし、ステロイドを使い続けることへの不安もありました。ステロイドは根本治療ではないこと、副作用が怖いことなど、あまりいいものではないという認識でした。獣医さんへ「こんなに注射し続けて大丈夫ですか」と聞いたら「それほど多量ではないので」と言われましたが、疑問を持ちました。

 

 

セカンドオピニオンの選択

 

何度か治療のために病院に通っていましたが、ある日わたしがよく利用する犬の総合施設(トリミング・ホテル・カフェ・ドッグラン・しつけ教室などが併設されているところです)に行った際、そこのオーナーで犬のことにとても詳しい方に、自分の中にある不安や今のチャッピーの状態、治療内容などを相談しました。

すると、その方はチャッピーの背中や体を触られてこういわれました。

 

「この子はヘルニアには思えない。もしかしたら股関節とかではないの。背中シュッとしてるよ。」

 

その方がいわれるには、椎間板ヘルニアの場合、麻痺などが症状として現れたりすると言われていました。ヘルニアだと診断された時の話をすると、レントゲンを撮ったか聞かれたので、撮っていないと言ったところ、別の病院を紹介するとおっしゃってくださいました。

 

紹介先の病院の先生は、診断医としてはとても信頼できる先生だということで、電話をしていただきさっそくその病院に行くことにしました。電話はそばで聞いていましたがちょっと笑ってしまいました。

 

----------オーナーの電話での会話----------

「先生、よけいなことしなくていいから、レントゲンだけ撮って椎間板ヘルニアかどうか見て。私にはそう思えないのよね。背中シュッとしてるし、触っても痛がらないしね。結果は飼い主さんにちゃんと説明してね。理解できる人だから論理的にね。」

 

そして私に、

「別の先生に診てもらったら悪い、と思う人もいるけど、私は獣医さんってサービス業だと思うの。だからこちらが選べばいいし、疑問があったら別の病院へ行ってもいいのよ。自分の犬を守りたいでしょ。手術だって得意な人とそうでない人がいるんだから、大きな手術をまたすることになったら言ってね。紹介するから。」

といってくださいました。

 

 

全然違った診断結果

 

セカンドオピニオンの病院の先生は、飼い主に寄り添ってくださるようなとてもいい先生でした。レントゲンを撮り、わたしにもわかりやすいように、実際に重度のヘルニアを患っている子のレントゲンとチャッピーのレントゲンを並べて説明をしてくださいました。

 

「この子はヘルニアではありません。背骨の間に馬の頭のような形のところがあるでしょ。この子は皆きれいにその形になっているので大丈夫」

 

ヘルニアの子の場合は背骨の間の馬の頭型が潰れたり変形していました。チャッピーの背骨は全部同じ形できれいに並んでいて、ヘルニアの子とは全然違うことは、わたしの目でもわかりました。

 

先生の診断は以下のようなものでした。

・足のすべての関節のはまりが浅い

・この場合、股関節や膝を亜脱臼しやすい

・はまりが浅いことで、体をゆがめて歩くので足に負担がかかり影響が出やすい

・骨の色が真っ白ではない、これはカルシウム不足で骨粗しょう症気味である

 

わたしは先生の診断内容を聞いて、とても納得できました。レントゲンを見ながら、ひとつひとつわたしにもわかるように問題の箇所を指さしながら説明をしてくださったことが大きいと思います。

チャッピーは元繁殖犬でもあったため、カルシウム不足もとても納得ができました。

そして、炎症を抑える効果や皮膚にもいいというアンチノールというサプリメントを処方されました。それ以来、骨粗しょう症改善のために緑イ貝のサプリメントと、アンチノールを続けて飲んでいます。

サプリメントを飲み始め、チャッピーは歩き方も少しずつよくなり、今では随分改善されて歩行も問題なくできています。チャッピーは薬も飲んでいますが、薬の時間になると足の悪い老犬と思えないほどの力で逃げていきます。それだけ回復したのはとてもありがいたいですが、これも悩みのひとつでもあります(笑)

そして施設のオーナーさんが第三金曜日にわんこ整体の先生来るからしてみる?と言われ、もう半年くらい整体もしてもらっています。

でも、もしあのまま同じ病院に通っていたら、もし2日に1回のステロイドを注射し続けていたら、今チャッピーはどうなっていたのか。そう思うととても怖くなります。

歯は、結局もう一本を抜いたので片側に2本だけになりました。いつも右側にベロが出ています。あまり固いものは食べられませんが、缶詰のドッグフードや水でやわらかくした乾燥肉などは問題なく食べます。時々一口で飲み込んでいます。

整体の先生からも、股関節が悪く、腰痛や足の動きが固くなることはあるけど椎間板は大丈夫と言われました。すごくうれしくて泣きそうになりました。

 

 

どうかひとりで悩まないで

 

わたしには相談する方がいるのでとても救われました。その方に転院について報告した際、もし手術が必要な場合は、とても上手な先生もおられると聞きました。

 

今回の経験でわたしが思ったこと。それは、目的別に獣医さんを選んでもいいんじゃないか、ということでした。

今まではどちらかというと、1つの病院に通うことが普通だと思っていました。ずっと通っていると、カルテがあるし、うちの子のことを一番知ってくださっているのではないか、と思っていましたが、人間の場合はかかった病気によって選ぶ病院が違いますが、犬の場合は専門の病院はほとんどありません。

 

残念ながら愛犬は話すことができません。どこかが痛くても、それを直接わたしたちに訴えることができないんです。愛犬の健康を守るのは、飼い主のわたしたちが日頃の様子と変わったことがないかを気づくこと以外に早期発見することは難しいんです。それにもし誤診であっても、セカンドオピニオンを受けなければ、それが誤診だと気づくこともないままかもしれません。

 

困った時に相談できる相手がいれば、いろんな選択肢を考えることができます。でも周りに相談相手がいない飼い主さんの場合、かかりつけの先生の意見を信じるしかないかもしれません。

 

もし今わたしと同じようなお悩みをお持ちの飼い主さんや、もし病気で通院しているけどなかなか改善しないという飼い主さんがおられたら、セカンドオピニオンを受けることと、SNSでもなんでもいいので、他の飼い主さんと意見交換する場をつくられることをお勧めします。

 

愛犬を我が子として愛する飼い主同士、助け合うことができたらと思っています。

 

 

ライター:Madam osada