愛犬情報
犬種:ミニチュアダックスフンド
病名・症状:子宮蓄膿症
発症年齢:15歳
発症の経緯:ヒートの症状 食欲不振 陰部の腫れ エコー検査で子宮内に液体が映った
治療法:ホルモン注射(内科治療)⇒手術
避妊手術を受けなかった理由
我が家は雌2頭とも、不具合が出るまで手術を受けていませんでした。
手術を受けなかった理由は、一番は体にメスを入れることに抵抗があったからです。卵巣はホルモンを作りだし分泌する役割のある臓器。女の子にとってホルモンはとても大切なのに、病気にならないようにという理由で若いうちに取ってしまうことに抵抗がありました。
結果次女ニコは12歳で乳腺腫瘍が見つかり、その時に子宮と卵巣も取りました。クリンは15歳で子宮水腫になり、17歳9ヶ月で手術をすることになりました。
2頭とも、子宮に不具合があったため、避妊手術の適応にはならず、費用は十数万円かかりました。
一方、雄1頭は、1歳を迎える前に去勢手術をしました。理由は、いくつかあります。ひとつは、女の子たちの避妊手術をしていなかったこと。そしてもうひとつは、女の子よりもリスクが低いと考えたからです。
今振り返ってみて、我が家の3頭の去勢避妊手術について後悔しているかと聞かれると、うちはこれでよかったと思っています。
もしこれから新しく愛犬を迎えるとした場合、その子が女の子なら、おそらく今の2頭と同じように不具合が出たら手術をすると思います。ただクリンのように、かなりの高齢になってからだとリスクは高くなってしまうので、不具合が出なかったとしたら、おそらく15歳くらいまでにするのではないかと思います。
もし男の子の場合、1頭だけ飼うならもしかしたら手術は先送りにするかもしれません。ただ男の子は権勢症候群など毎日の生活に支障を来たしてしまうようなこともあるので、性格によっては早いうちにしてしまうかもしれません。
避妊手術の場合、抜糸まで約2週間かかるのに対し、去勢手術の場合はエリザベスカラーさえつけませんでした。去勢手術の方が簡単でオペ時間も短いです。
男の子も女の子も手術するということに変わりはありませんが、できるだけリスクの少ない方を選択すると思います。
でもこれは、あくまでもわたし個人の意見で、どんな選択でも飼い主さんが愛犬のことを思い決断されたことは、一番の選択だと思います。早く手術することでのメリットもあればデメリットもありますし、不具合が出てからの手術もメリットデメリットがあります。
今回は、高齢で子宮の不具合が出てしまった場合、避妊手術をしなかった「デメリット」についてお話をさせていただきます。
ハイシニア犬の子宮水腫の治療について
我が家の長女クリンの子宮の不具合が見つかったのは15歳の時。12歳を超えてからは年に一度くらいのヒートが、半年に一度ペースになり、食欲不振がさらに悪化した時に、病院の検査で発覚しました。エコーで確認すると、子宮内に血液ではない液体がありましたが、血液検査の結果と、陰部から膿が出ていなかったため、この時は子宮の中に水がたまる「子宮水腫」という診断でした。
子宮蓄膿症は、重篤化すると死亡するリスクも非常に高い病気です。避妊手術をすれば蓄膿症に罹患することもなく、また発症しても取ってしまえばすぐに完治するのですが、クリンの年齢的にも手術はリスクが高いということで、内科治療をすることになりました。これが後から大事になってしまうことになるのですが、この時はこれが最良の選択だと思っていました。
クリンの場合、何かあるとすぐに食欲に影響します。子宮水腫を発症した時も、食べムラから発覚しました。
当時通っていた病院の先生は、大学病院で長く研究をされていて外科治療の経験も豊富とのことでした。親切で飼い主がわかるように説明してくださる先生で、その時は絶大な信頼を寄せていました。
高齢で麻酔のリスクが高いということで、積極的治療ではなく、内科的治療をしようということになり、「アリジン」という黄体ホルモンを後退させる注射で様子を見ようと提案してくださいました。アリジンは大きな副作用もなく、老犬でも安心な治療法であるということでしたので、その治療法を選択することにしました。
犬の子宮蓄膿症
【原因】
発情後の黄体期(免疫力が低下します)に細菌が子宮内に、進入し増殖しておこります。卵巣のホルモン分泌バランスが悪いとおきやすい。今まで、しばらく生理がなかったのにしばらくぶりできた後は要注意です。原因菌は大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラなど様々です。
【症状】
はじめは無症状。病態が悪化するにつれ元気、食欲の減退、吐き気などが現れる。陰部より膿がでてくる場合もあるが、まったくでない場合もあり。出ない方がより深刻。多量の膿がたまった場合腹部が膨らむこともあり。
多くの症例で多飲多尿がみられる。子宮が破れて、腹腔に細菌が漏れ出た場合、腹膜炎をおこし、短時間で死亡します。
アリジンは1回目の接種の24時間後に2回目を接種します。(3回の場合もあります)
費用は1回の接種で約1万円。2回だと2万円になります。
初めて注射してもらった時、食欲も徐々に戻り、目に見えて効果を感じることができました。その後もヒートのような症状が出たり、食欲不振に陥ったりすると病院で検査を受け、エコーで子宮内に水があったり腫れが見られたらアリジンを注射する、ということが約2年続き、年2~3回くらいのペースで注射をしていました。
その後の経過
初回~2回目くらいは目に見えて効果を感じたアリジンですが、徐々にあまり変化を感じなくなりました。クリンは15歳8ヶ月の時に膵炎の疑いで入院したのですが、炎症数値が下がっても食欲が戻りませんでした。その時も少し陰部が腫れていたのでアリジン注射をしてもらいましたが、まったく食欲は戻りませんでした。約2週間の入院で、入院中はほぼ強制給餌で過ごし、先生からは「このまま食欲が戻らないと死んでしまうかもしれない」と宣告されるほどひどい食べムラが続きました。
元気はあるものの食べないという日が続いたため、炎症数値が一旦落ち着いたタイミングで退院し、帰宅したらご飯を食べるようになりましたが、その後もヒートのような症状と陰部の腫れは続き、食欲不振との闘いは続きました。
食べムラは続いていましたが、何とか元気に16歳の誕生日を迎えることができました。
陰部が腫れることはたびたびありましたが、原因はわからずでした。病院では抗生剤を注射してもらったり、点滴を受けたり、アリジンを注射してもらっていましたが、症状や状態が大きく改善することはありませんでした。
クリンは胆泥症と、16歳の後半くらいから心臓に雑音が出始めたので、肝臓と心臓の薬はずっと飲んでいました。退院後は大きく体調を崩すこともなく、クリンは17歳になりました。
原因がはっきりしないまま続く食べムラ、状態は変わらないのにかかる医療費。クリンは元気そうではありましたし、年齢を考えた時に維持できていることはとてもありがたいことでしたが、「いつ急変するかわからない」という漠然とした不安はずっとぬぐえないままでした。
クリンが17歳を迎えた頃から、ずっとセカンドオピニオンについて考えていました。このままだとクリンは良くならないのではないか、とずっとどこかで思っていたんです。でもそれまでお世話になっているし、救ってもらったから、となかなか決断できずにいました。
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転院先での診断
このままではダメだと思い、セカンドオピニオンを受けることにしたのは昨年の10月。強い食べムラが出て病院でアリジンと抗生剤を打ってもらった直後でした。
セカンドオピニオンを受けた病院で、まず最初にいわれたことが、
「なぜ発症した15歳の時にすぐに切らなかったの?」でした。
子宮の病気は、高齢であればあるほど拗らせやすく、完治することはほとんどないそうです。そして、気づいた時にすぐに手術をしてしまうのが一番リスクが低いといわれました。
確かにその通り、と思いました。もし15歳ですぐに手術していれば、こんなに長引かせずに済んだかもしれない。こんなに苦しい思いをさせなくてすんだかもしれない。こんなに悩まずにすんだかもしれない。
手術のリスクは何歳であってもありますが、悪性腫瘍など、すぐに切らないと命に関わるような大きな病気の場合と違い、慢性化して投薬で何とか逃げられるような病気の場合は、どうしても先延ばしにしてしまうことが多いと思います。
わたしもそうでしたし、もし病院を変わっていなければ、今も手術をしていないと思います。
これは選ぶ病院にもかかわることだと思いますが、老犬にとって子宮蓄膿症はとても怖い病気です。
冒頭でもお話しましたが、病院によっては最初のヒートが来る前に手術を勧めるところもありますし、もう少し大きくなってから手術した方がいいという獣医さんもおられると聞きます。
それぞれの考え方があるので、どれがいいと断言することはできませんが、うちの場合はもしかしたら避妊手術をしていなかったから元気に過ごせたのかもしれない、と思っています。ただ、ある一定の年齢になったら、子宮の不具合は命に関わる病気になってしまう恐れもあるため、何か不具合がでたらすぐに手術をした方がいいと考えます。
術後から現在まで
手術は無事成功しました。シニア犬の場合、術後の経過も怖いといわれていましたが、手術が終わって帰宅してすぐに元気に歩き回る姿を見て、とても嬉しかったです。食欲はなかなか戻りませんでしたが、術後初めて食べ物を口にした時はうれし泣きでした。
クリンの場合は子宮だけでなく、歯にも不具合があったんですが、無事18歳の誕生日を迎えることができました。
最近は少しお腹の調子を崩したりしていますが、転院する前と比べると、不具合がなくなったんだろうなと思えるほど元気に過ごしています。
犬は痛みに強い、とよく聞きます。その痛みに強い犬が痛がるというのは、かなりの痛いがあるのだと思います。クリンは子宮にずっと痛みがあったようで、転院先で触診してもらって初めてわかりました。
避妊手術を受けるタイミングはそれぞれ。かかりつけの病院にもよると思います。
ただ、手術を受けていなくて10歳を超えたら、具体的に考えた方がいいと思います。あとになればなるほどリスクは高まりますし、ただの避妊手術だと数万円ですが、病気を発症してしまうと手術代は数十万円に跳ね上がります。
そして年齢が高いほど、術後のケアも長引き、医療費はかなりの金額になってしまいます。
もしまだ避妊手術をしていないシニア犬の飼い主さんがおられたら、14歳を超えたらたとえ不具合がなくても定期的に獣医さんに診てもらうことをおすすめします。子宮蓄膿症は早期発見できれば、怖い病気ではありません。でも、あっという間に重篤化することもある病気でもあります。特にハイシニアの場合は、抵抗力の低下によりあっという間に悪くなってしまうこともあります。
ライター:福井 惠子
私も閉鎖型子宮蓄膿症の気づくのが手遅れでラブラドールを亡くしました。
でも今のお世話犬10才ラブの開放型蓄膿症は血のりがひどくなり、
食欲なく食べても吐いたり、水しか飲まなくなり、
子宮蓄膿症と判断し、悩んだ末手術を決意し、
血液検査6000円で白血球45000は別の病院で把握しましたが、
手術代は全部で10万。一昨日手術しました。
手術後二日後に亡くなったとネットに有ったりしたので、
入院費を節約で頼み込み日帰りしてて、翌日は死んでしまいそうに
ぐったり寝たきりでしたが、今日は回復の兆しをかんじてます。
どうか手遅れに成る前に皆さん手術です。
血の塊が出て止まらなければまず血液検査で白血球の数値を見てもらい、
悪化する前に必ず手術です。手術したらよっぽどのことがないかぎり
麻酔から覚めます。手術承諾書に勇気がいりますが托すしかありません。
血液検査の他の値が悪く成る前に手術に挑んでください。
きっと元気になる様
コメントありがとうございます。
大切な愛犬を亡くされたとのこと、心痛お察しいたします。
愛犬を病気で失うのは心が引き裂かれるくらい辛いですよね。
そして、大型犬の10歳での手術は、とても悩まれたと思います。
避妊手術は抵抗のある飼い主様が多いと思います。わたしもその1人でした。
でも年齢と共に病気のリスクは高まりますよね。
子宮蓄膿症はたった1日で急変することもある怖い病気だと主治医の先生がおっしゃっていました。
犬は人間の約4倍ものスピードで年を取るため、本当に怖いと感じます。
きっと元気になる様の愛犬ラブさんが、1日も早く回復されますように。
そして、きっと元気になる様のご経験が、今手術を悩んでおられる愛犬家の皆様に届きますように。
お辛いご経験をお話くださり、本当にありがとうございました。
通りすがりで、失礼します。
子宮蓄膿症の検索をしていたら、偶然こちらのサイトに辿りつきました。
とても参考になる貴重な記事を本当にありがとうございます。
私も数年前にこの病気で愛犬を亡くしました。(T_T)
高齢(当時10歳)なので、手術にはリスクがあるので、当初は『内科治療の副作用が全くない!?大学病院で始まったばかりの最先端の医療だ。』と獣医師にすすめられて、アリジンを選択しましたが…(当時、1本3万円ほどの高い薬でした)
うちのコは薬の副作用?が強くて、2本注射後は立ち上がることが出来ず、しばらく寝たきり介護状態に…。
一旦は排膿をして良くなりましたが、
逆に、今度は体力を消耗し、手術が出来ないほどかなり痩せこけてしまいました。
そして、まさかの数カ月後には再発!(泣)
その時はもう手遅れで、手術出来ずに、あっと言う間に亡くなってしました。
「子宮蓄膿症は早期発見!!」で、「なるべく体力があるうちに手術が鉄則」だと思いました。
避妊していない女の子の飼い主さんに、私のような後悔をしないように、病院選びと、ヒート後の検査など、早目に対処して頂きたく、コメントを残します。
ネットにはいろんな情報が流れてますが、「子宮蓄膿症はアリジンで完治は無し!」ですので、誤解なく。愛犬を守るためにも、正しい知識を持って頂きたく思います。
ありがとうございました。
シニア犬オーナー様
コメントありがとうございます。
アリジンを選択されたお気持ち、とてもとてもわかります。
ドクターに勧められたら、誰しもリスクの低い選択をしてしまうと思います。
麻酔のリスク、お腹を切ることへの抵抗、できるなら切らずに治したいと思うのは、愛犬を愛すればこそですもんね。
わたしも転院先のドクターが「すぐに切ろう」と言ってくださらなければ、手術の選択はできなかったと思います。
病院を変わることはとても勇気のいることで、長くお世話になっていたらなおさら転院はしづらいですし、
シニア犬オーナー様もきっと身を切る思いでのご選択だったのだと思います。
わたし自身転院できたのは、たくさんの重い病気を抱えながら闘病していた犬友さんの情報があったからでした。
それがなければ、うちの子もおそらく重篤化していたと思いますし、今命があったかもわかりません。
子宮蓄膿症という病気はよくある病ですが、とても恐ろしい病気です。
これからシニアを迎える愛犬が同じような症状で治療の選択をしなければならなくなった時、
シニア犬飼い主様のご経験はたくさんの愛犬の命を守ることにつながると思います。
お辛いご経験をお話いただき、本当にありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
福井 惠子