老犬の食べムラ・食い渋り ~老犬が食べない悩みをお持ちの飼い主さんへ伝えたいこと

ワンワンラボにご訪問いただき、ありがとうございます。

今日はクリンの20歳の誕生日。

クリンは2019年3月に19歳1ヶ月で旅立ちましたので、残念ながら成人式を迎えることは叶いませんでした。

この記事を書いた当初は、クリンは18歳を迎えたばかりで、食べムラ・食い渋りに悩んでいる真っ最中でした。ありがたいことに、この記事はたくさんの方にお読みいただき、2年前の記事にもかかわらず、今でもコメントをいただいております。

クリンを見送ってから思うこと、気づいたことなどを追記して、クリンの20歳の誕生日にリライトして公開させていただくことにいたしました。

どうか、食べムラ・食い渋り・食欲不振で悩んでおられる飼い主さんに届きますように。

 

 

シニア犬の「食欲不振」は特別ではない

 

 

我が家の愛犬クリンの食べムラは、15歳の時から始まりました。

食べムラを経験し、いろんなことを知りました。

食べることは決して当たり前のことではないこと、フードと薬は分けた方がいいこと、実は食べムラや食い渋りは一番精神的に堪える、ということなどです。

同じ悩みを持つ飼い主さんはたくさんいらっしゃると思います。食べムラ・食い渋りに約4年間悩んだ飼い主のひとりとして、経験と感じたことなどを書いていきます。

 

クリンの食べムラが始まって一番最初に思ったことは、「このままどんどん弱って衰弱していくのではないか」ということでした。若い頃は、お腹の調子が悪くなると1~2日食事抜きで様子を見るということもありましたが、この頃は普通に食欲があったので、さほど気になることはありませんでした。

 

そして「あること(飼い主の失敗)」がきっかけで、「食べること」そのもの、食べ物に対しての不信感を持たせてしまいました。今まで喜んで食べていたものですら、口にしなくなってしまいました。

ネットで「シニア犬 食べムラ」で検索すると、「食べないのは末期症状…」「最期は食べなくなって…」など、かなりネガティブな表現のものが多く、読めば読むほど余計に不安になっていきました。少しでも希望を持ちたくて検索するのに、出てくる結果がマイナスのものばかりだと、ただでさえ弱っている心がどんどん追い込まれてしまうんですよね。

歳を取ると、体調も常に万全ではありません。寝不足だったり、前日に胃の調子が悪いと、それだけで食べなくなることもあります。ですから、愛犬がシニアになって食欲が落ちることは、とても自然なことなのだとは思いますが、それでもやっぱりとても心配になります。

 

 

食べムラの原因を考えてみる

 

 

食べムラの原因として、元々食べることに執着がなかったり、単なるわがままであったりもしますが、何かしら「食べなくなった」きっかけがあったという場合もあります。いくつかの複数の問題が原因で食べない、ということもあると思います。

愛犬が食べないことは、飼い主にとってとても深刻です。食べないと体力の低下や体が冷えて代謝が低下することもありますので、少しでもいいから何か食べてほしいと願ってしまいます。

振り返ると、うちの場合は食欲不振の時には必ず原因がありました。

 

食べない時に考えられること

 

1.なんとなく食べたくない

2.胃腸の調子が芳しくない

3.噛む力が弱まって、または歯に問題があって食べにくいため食べない

4.体のどこかに痛みや不具合(病気)がある

5.食べることそのものへの不信感

 

1.なんとなく食べたくない

前日にたくさん食べた時などは、翌日なかなかご飯を食べないことがあります。シニアになると長時間寝ていることが多くなりますので、動く時間が少なくなり、胃腸の動きも悪くなっていることがあります。若い頃と違い、老犬になると消化にも時間がかかるため、お散歩などの適度な運動や気分転換は食欲を高めるきっかけになります。

また、鼻が利かなくなっていることも考えられます。犬にとって匂いはとても大切な情報。ところが年を重ねるごとに匂いもわからなくなっていきます。良い匂いにつられてキッチンに飛んでくるようであれば問題ないですが、無関心でいるようなら、もしかすると匂いがわからなくなっているのが原因のひとつかもしれません。

そしてこれはシニア犬あるあるですが、「単なるわがまま」ということも考えられます。人間同様、歳をとると犬もわがままになります。食べムラ・食い渋りが続いている時は、手を変え品を変えいろんなものを与えてしまいがちです。すると、「待っていたらもっといいものが出てくるかも」と、ドッグフードなどを食べなくなってしまうこともあります。

こんな時は、匂いの強いトッピングが有効です。多少の添加物もよしとして、かなり匂いが強い缶詰をトッピングしたり、ふりかけをレンジで温めて匂いを強くしたりすると食べてくれることもあります。

わがままかも、と思う場合は、少し様子を見るのもひとつです。病気や体調不良がない場合はドッグフードを下げてしまうのもひとつ。ただし、ハイシニアの場合は、好きなものをおいしく食べてもらうというのもありだと思っています。お腹を壊さないなら、人間用の牛乳もおススメです。クリンの晩年はテラカニスという缶詰と人間用の牛乳にとても助けられました。

 

2.胃腸の調子が芳しくない

歳と共に代謝が落ち、内臓の働きが悪くなります。消化の悪いものを食べたり、なかなか消化できない場合などは食欲が減退する原因になります。クリンは夜中にご飯を食べたがることが多く、ご飯を欲しがるのが嬉しくてついつい食べさせてしまうと、翌日はなかなかご飯を食べなかったということがありました。

胃腸の調子が悪い時は便の状態がいつもと違ったり、腸がキュルキュル鳴ったりします。そんな時は食欲が出るまでそっとしておきます。そんな時、牛乳はとても役立ちます。牛乳は犬に与えてはダメという意見もありますが、お腹を壊さなければ問題ないですし、牛乳だけで数ヶ月生きた犬もいると獣医さんに聞きました。牛乳は栄養もあるし液体で飲みやすいので、なんとなく食欲がない、という時にはとても助かります。ワンコは甘い味をおいしいと感じるそうなので、体に優しい砂糖やはちみつなどを混ぜて甘味をつけてあげると、より飲んでくれるかもしれません。

お腹の音が数日治まらなくて食欲がない場合は、胃腸炎・膵炎など、病気の可能性があります。数日続く場合は病院に行くことをおすすめします。こじらせてしまうと長引いてしまい、命を脅かす危険性があります。シニア犬の場合、こじらせると本当にやっかいなので、様子がおかしいと思ったら診察を受けることを強くおすすめします。

 

3.食べにくいから食べない

今まではパクパク食べていたフードも、歯の状態が悪くなったり、顎の力が弱まったりすることで、噛めなくなってしまったり、食べにくくなっていることが考えられます。

うちの場合、咥えたおやつをポロっと落としたり、それまで大好きだったキャベツの芯などを食べなくなったことで、顎の力がなくなったとわかりました。それ以来、食べやすい形状に小さくカットしたり、フードを砕いてやることで食べるようになりました。あまり大きな粒だと誤飲の危険もありますので、年齢と共にフードの大きさを変えてあげることをおすすめします。

犬って案外繊細で、「うまく食べられない」と食べなくなってしまうことがありますので、もし思い当たることがあれば、試してみてくださいね。

 

4.体のどこかに痛みがある

振り返ると、クリンが食べなかった原因は体の不具合が一番の原因だったと思います。食べムラ・食い渋りになったきっかけは投薬でしたが、食べない時には体のどこかに痛みがありました。

クリンの場合は子宮の鈍痛と歯の痛みでした。子宮摘出をしたのは18歳になる前でしたから、それまで約3年間も痛みがあったのだと思うと、もっと早く転院すればよかったと今でも思います。

術後摘出した子宮を見せてもらいましたが、片方が通常の2倍くらいに腫れあがっていました。ずっと気持ち悪いような痛いような状態だったから、食欲も出なかったんだと思うと言われたときは、気づいてあげられなかったことをものすごく悔みましたし、今でも後悔の念は消えません。

参考記事:避妊手術について考える ~老犬の子宮蓄膿症の治療について

 

体のどこかに痛みがある時は、何らかのサインがあります。食べムラ・食い渋りもそのサインのひとつです。

もしかしたら、なんとなく具合が悪いという感じで、検査では出てこないかもしれませんが、食欲不振が続くようでしたら、獣医さんに相談されることをおすすめします。

食べないことに以下のような症状が出始めたら、症状が悪化していたり、炎症数値が跳ね上がっていることも考えれ羅れます。

寝てばかりいる/失禁/軟便/腸から音がする/吐く/うずくまるなど

ワンコは我慢することが多いそうで、痛がったりするのはよほどの状態であることが多いそうです。特に老犬の場合は、たった1日処置が遅れただけで重篤な状態になることもあります。

ワンコは10歳を超えると体のあちこちに不具合が出始めることが多いそうです。どんな病気でも、早期発見できれば早く治療することができますし、心臓や腎臓などの再生しない臓器も、投薬により寿命を大きく伸ばすことができます。悪いところがないようでも、数ヶ月ごとの定期健診を受けておくと不具合に素早く対処できます。

 

5.食べることへの不信感

これは今でもずっと後悔していることで、クリンに申し訳ない気持ちでいっぱいです。

クリンの食べムラのきっかけは「投薬」です。

14歳で胆泥症と診断され、以来毎日の投薬が始まりましたが、普通にご飯の上に薬を置いて一緒に食べさせていたため、問題なく薬を飲むことができていました。ところが15歳の時の足の炎症がきっかけでご飯を食べなくなってしまいました。その時に処方された「抗生剤」が非常に苦い薬で、それを無理やり飲ませようとしたことがきっかけで食べ物に対する不信感を持たせてしまいました。

それまで大好きだったお肉やささみ、ジャーキーなどにくるんで薬を飲ませようとしましたが、結局ばれてしまって口から吐き出してしまいました。そんなことを繰り返しているうちに、痛みがあって食べなかっただけなのに、食べ物自体に不信感をもってしまい、食べること自体を嫌がるようになってしまいました。

これは飼い主として最大の失敗であり、今でもクリンに申し訳ない気持ちでいっぱいです。正直、この失敗がなかったら、食べることが大好きなままであったら、もしかしたら成人式を迎えることができたのではないかとさえ思います。

 

 

食べムラを怖がらないで

 

 

クリンが15歳の時から始まった食べムラ・食い渋りは旅立つ日までほぼ毎日続きました。

体の痛みや不具合が取れた時は食欲も改善しましたし、お腹が空くとすごい勢いで食べてくれることもありましたが、すぐに食べないことが癖になってしまったように思います。

一度食べムラや食い渋りになってしまうと、何とか食べてほしいと「好きなおやつ」や「好物のお肉」など、犬にとってのごちそうを用意したり、毎回フードを変えてしまったり、新しい缶詰を次から次へと開けてしまったりすることで、どんどんわがままになってしまいました。当時冷蔵庫の中はクリンの食べなかったものでいっぱいになることもありました。

愛犬が食べないことって、飼い主の精神的なダメージが本当に大きいんですよね。このまま食べなかったらどうしようと落ち込み、実際わたしはノイローゼになってしまいました。毎日眠れずにいろいろ考えては泣いてみたり、ネットで検索しては落ち込んだり、今考えると本当におかしくなっていたと思います。

でも、どれだけ食べなくても、お腹が減ると必ず何かを口にします。病気が原因の食欲不振でない限り、食べムラはいつか治まります。クリンは食べない日もありましたし、痩せてしまったこともありましたが、それでも19歳を迎えることができました。

 

特に老犬は、食べるスイッチが入りにくいという場合もあります。若い頃より運動量が減り、代謝が落ち、なかなかお腹が空かないということもあります。そんな時は「もっと食べたい」「お腹が減った」というスイッチを入れてあげるのも手です。スイッチは、大好物のおやつや、人間の食べるもので甘いものも結構有効です。

カステラ、バームクーヘン、バニラアイスクリーム、加糖ヨーグルトなど、お腹が減っている時はものすごく食いつきます。これは奥の手としておすすめです。

クリンの場合は、先にカステラだけを与え、食いついてきたらフードの上にカステラを小さくちぎったものをトッピングして食べさせたりします。これを我が家では「呼び水」と呼んでいます。

トッピングだけ先に食べてしまい、フードだけ残ると食べなくなることもありますので、食べている最中にトッピングを横から追加したり牛乳を入れたりして、そのまま止まらず食べ続けるようにしています。

 

 

愛犬に食べムラや食い渋りが出た時に大切なこと

 

 

今、愛犬の食べムラで悩んでいる飼い主さんへ。

クリンの食べムラ・食い渋りに約4年向き合い、もし持病や体調不良などがないのであれば、あまり深刻に悩まないでください。1日2日食べなくても、お腹が減ったら必ず食べてくれます。我が家のわがままシニア犬は、15歳から3年食べたり食べなかったりを繰り返していますが、今でも元気に過ごしていますから。

 

何よりも愛犬にとって一番ダメージが大きいのは、飼い主さんの悲しい顔や、食べないことを叱られることです。

犬って飼い主の精神状態をよく理解しているんですよね。クリンが食べない時、イライラしたり怒ったりすると、元気がなくなったり余計に食べなくなったりしました。

でもご飯を食べた時に「すごいね~~!」と褒めると、食べるスピードがアップするんです。ああ、犬ってちゃんとわかってるんだな、とつくづく思いました。

 

犬にとっての一番の良薬は、飼い主さんの愛情であり、飼い主さんの笑顔です。

 

たとえ食べなくても、どうか怒らないであげてください。大丈夫大丈夫、お腹が減ったら食べようね!と笑顔で接してあげてください。

15歳から4年間、ずっと食べないことに悩んできましたが、19歳を元気に迎えることができました。そして旅立つ前日まで、いつも通り過ごすことができました。

多少食べなくても、たとえ食べない日があっても、どうかあまり深刻にならないでくださいね。

 

 

ライター:福井 惠子

 

 

【ペットロス】愛情も後悔も思い出も全部一生もの

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

旅立った年齢:クリン/19歳1ヶ月 ニコ/16歳3ヶ月

死因:クリン/老衰 ニコ/心停止からの肺水腫

 

 

ペットロスについて考えてみました

 

我が家には3頭の我が子同然の子たちがいました。

長女クリンは2000年2月1日生まれ、次女ニコは2002年7月2日生まれ。

昨年の10月にニコが旅立ち、それから5ヶ月後の今年3月にクリンが旅立ちました。

今日はニコの命日。ちょうど1周忌を迎え、改めて自分の気持ちに向き合ってみました。

 

 

いまだに見ることのできない記録

 

ニコは、昨年の5月に初めて虚脱を起こしました。突然倒れた時はとても驚き、すぐに病院に駆け込みました。

ニコは僧帽弁閉鎖不全症でした。病院ではかなりの末期状態で、いつどうなるかわからないといわれていました。

虚脱を起こしてから、薬の量が増え、携帯酸素を常備するようになりました。かかりつけの病院は隣の市にあり、山をひとつ超えていくため、通院には携帯酸素はかかせませんでした。

そして、3回目の虚脱の時に心停止を起こしました。

携帯酸素を約1分ほどあて続けたら、蘇生してくれました。すぐに病院に行き、心電図とエコー確認してもらいました。状態は決してよくはないこと、そしてまた同じように心停止するかもしれないといわれました。蘇生後は少しだるそうにしていましたが、食欲はありましたし、いつも通り普通に過ごしていてくれました。

先生から、いつどうなるかわからないから覚悟はしておくようにといわれていました。わかってはいましたが、ニコの様子を見ていると、このままもしかしたら元気に過ごしてくれるのではないか、17歳の誕生日を迎えることができるのではないか、と思っていました。

京都市では、15歳になると長寿犬認定書をいただくことができます。ニコが15歳になったのは2017年でしたが、表彰対象となる誕生日が6月末までだったため、7月生まれのニコの表彰は2018年度になりました。表彰式典は9月23日。心のどこかで、長寿犬認定式までは何とか頑張ってほしい、と思っていました。

そして式典当日を無事迎えることができました。うちは多頭飼いで誰かひとりとお出かけするのは通院のみだったのですが、この日はニコとふたりで出かけると決めていました。ニコとふたりだけの外出。いつもの病院に向かう景色と違うからか、ニコもなんだか楽しそうに見えました。

駐車場に車を止め、会場までお散歩しながら歩いていましたが、ニコは途中で立ち止まり歩かなくなることがありました。あまり無理をさせるのもよくないとわかっていましたが、病院からは心臓が悪くても適度な運動は必要といわれていたこともあり、立ち止まったら少し休憩しながら、抱っこしたりまた歩いたり、ゆっくりと会場に向かいました。

認定書をいただき会場を一回りして、小一時間ほどで帰宅。帰宅してからもニコは元気いっぱいで、みんなで仲良くお昼寝をしたりしていました。

ちょうどこの日の夜はバイトで、出発する時間が近づいてきたため出かける準備をしている時、ニコが突然倒れました。

二度目の心停止でした。初めての虚脱から確か5~6回目だったと思います。

すぐに酸素をあてましたが、このまま蘇生してもいいのだろうか、もしかして苦しめることにはならないか、という迷いがわたしの心にありました。

酸素をあてて1分くらいで、またニコは蘇生してくれました。

ところが、2回の心停止により、ニコの心臓は大きなダメージを受けてしまいました。

そしてこの心停止から10日後、ニコは旅立ちました。

 

延命治療はしないと決めていたのに、二度も蘇生してしまったこと。結果それが原因で苦しい時間を長引かせてしまったこと。心臓病に罹患させてしまったこと。病気に早くに気付いてやれなかったこと。転院しなかったこと。手術を受けた病院をきちんと選んでやれなかったこと。

二度目の心臓発作でそのまま旅立たせてあげたら、ニコは元気なまま苦しむこともなかったのに。ニコの病気に気付いてあげられなかったからこんなに苦しい思いをさせてしまったのに、最後の最期にまた苦しませてしまう選択をしてしまったのではないか。

 

ニコには今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです。

ニコの最期の10日間は、かなり細かくメモを取っていましたが、いまだにそのメモを見ることができません。日々の状態を記録していたカレンダーすら見ることができないため、虚脱の回数も期間も確認できませんでした。

おそらくこの罪悪感と後悔は、一生消えることはないと思っています。

 

 

たとえ大往生でも悲しみは同じ

 

ニコが旅立ち、立ち直るまでかなり時間がかかりました。仕事の時などは普通にしていましたが、少し気を抜くとすぐに涙があふれてしまいました。夜になると布団をかぶって号泣。毎日そんなことを繰り返していましたが、ニコの旅立ちと同時期にクリンの老化が進んだこともあり、お世話に追われることで少し救われました。

クリンはありがたいことに、老衰により旅立ってくれました。改めてクリンの最期の数ヶ月を振り返ると、「もうそろそろだよ」と飼い主に合図をくれていたように思います。クリンには成人式を迎えてもらう気満々でしたが、クリンの体の変化を目の当たりにして、成人式を迎えてほしいと思いながらも、どこかでその日が来る覚悟をしていました。

いつも通りお散歩に行き、いつも以上にご飯を食べてくれ、旅立つ前日にはクリンからわたしのところに歩いてきてくれて、膝の上に顔を載せてくれたんです。視力も聴力もかなり衰えていたため、この頃にはほとんど自分から寄ってきてくれることがなかったのですが、間違って傍に来たのではなく、ちゃんとわたしの方に自分の意志で来てくれた感じだったんです。

それがあまりに可愛くて嬉しくて、思わず動画を撮ったくらいでした。

そして、クリンもまたわたしの夜のバイトの日に旅立ちました。

クリンはわたしの定位置で、まるで眠っているかのような穏やかなお顔で旅立っていました。わたしが帰宅した時にはすでに死後硬直している状態でした。

クリンは、きっとニコの時のわたしの姿を見ていたから、留守の間に旅立ったんだろうなと思えます。クリン自身、自力で歩けるギリギリ限界の状態でもあったので、歩けなくなる前に自分の意志で決めて旅立ったんだろうなとも思えます。

周りの方からは、とても温かい言葉をいただきました。クリンちゃんは親孝行だ、羨ましい、大往生だ、最高の犬生だったね、と。

温かい言葉にものすごく救われましたし、本当によかったと思えました。

でも失った悲しみは大きく、もっともっと一緒にいたかったと思いました。

いずれは必ずくるお別れ。ニコを失った悲しみとはまた違った、大切な家族がいなくなってしまったという喪失感が大きかったです。

 

楽しかったこと。驚いたこと。悩んだこと。特別なことだけでなく、なんてことない日常。

すべての思い出は、とても大切な宝ものになりました。

 

 

思い出は一生

 

我が家にはまだクリンとニコのお骨があります。この子たちは自分と同じお墓に入ろうと思っているんです。

うちの弟は住職をしていて、弟のお寺に母が建てたお墓があります。わたしはすでに嫁いでいる身なので、本来は主人のお墓に入るのが筋だと思いますが、子供もおらずわたしたちの代で終わるので、どうせなら大好きなおばあちゃんの眠るお墓にうちの子たちも一緒に眠りたいと思いました。

主人もそういうことにまったくこだわりがなく、うちのお墓に入ることに同意してもらったので、今度お墓参りに行った時にクリンとニコのお骨を埋めようと思っています。

それまではお骨はうちにいますが、今でも骨壺を抱っこしたり、話しかけたりしています。

不思議なもので、冷たい骨壺を抱っこしているのに、なんだか温かく感じます。クリンとニコがここにいる、という感覚はまったくありませんが、きっと見守ってくれているんだろうなと思えます。

 

うちには長男のみのすけがいます。現在10歳2ヶ月、おかげさまで持病もなく元気に過ごしてくれています。母のところには7歳の子ベリーがいます。母が元気なうちはいいですが、いつかはうちで引き取ることになると思います。

わたしはみのすけとベリーを見送った後は、よほどの事情がない限りはもう犬を迎えることはないと思います。

ワンコは大切な家族で、我が子同然。

これ以上 ❝大切な家族を失う悲しみ❞ にわたしの心が耐えられないのではないかと感じています。

 

愛が深ければ深いほど、失った悲しみは大きすぎてなくならないんだと思います。それだけ愛おしい存在と出会えたことを嬉しく思いますし、たくさんの後悔や罪悪感があるのも仕方ないことで、失った悲しみも深くて当たり前だと感じます。

いつの日か、クリンとニコと必ず再会すると信じています。そして、いつかくるその再会の時を楽しみにしたいと思います。

 

 

ペットロスって、きっと一生続くと思っています。

だって、それだけ大切で大きな存在だったんですから。

 

 

ライター:福井 惠子

 

 

【犬の老化チェックリスト】そのしぐさ、大丈夫? 10のチェック項目でわかる「犬の老化」のサイン

いつまでも元気でいてほしい大切な愛犬。

残念ながら、わたしたちと同じように愛犬も歳を取ります。老化は少しずつ進行するため、毎日一緒に過ごしていると見過ごしてしまい、ある時ふと「あれ?いつもと違う」と気づくことが多いと思います。

まずは下のチェックリストで、日頃の愛犬の様子をチェックしてみてください。

 

 

【チェックリスト】愛犬の老化度チェック

 

▢ ご飯は1分くらいで完食する

▢ 固いガムやおやつなどを喜んで食べる

▢ 飼い主さんがいる間はほとんど起きている

▢ 飼い主さんが動くと、寝ていても必ず起きる

▢ ぼーっとしている時間はほとんどない

▢ 運動した後でも足がもつれたりすることはほとんどない

▢ お散歩は10分以上止まることなく歩く(走る)

▢ ソファーやテーブルの上に平気で飛び乗る(飛び下りる)

▢ 足を崩さずにお座りの姿勢がとれる

▢ 自分の体高くらいの段差でも躊躇することなく歩く

 

 

実はこれ、1~10歳頃までは、病気やケガなどがなければ、どの項目も問題なくチェックできる質問なんです。ですからチェックがつかない場合=老化が始まっているかも、ということなんです。

老化は一気に進むものではありません。日々少しずつ少しずつ衰えていき、今まで当たり前にできていたことがある時できなくなり、その変化に気付いた時、飼い主さんは愛犬の老化を実感することが多いのではないでしょうか。

では、上記10項目について、1つずつ解説していきます。

 

 

各項目の解説

 

▢ ご飯は1分くらいで完食する

犬はほとんど丸飲みでご飯を食べます。なのでご飯を食べるのにさほど時間はかからないのです。噛まずに飲み込めるというのは若い証拠で、年齢を重ねるにつれ、少しずつ飲み込む力が弱まります。一気に飲み込めなくなるため、食べるのに時間がかかってしまうのです。

 

▢ 固いガムなどを喜んで食べる

犬には虫歯はないそうですが、歯周病にはなります。固いガムを食べることができるのは、顎の力が強いことと、歯がしっかりしているから。噛む力は年々弱まってきますので、顎に力がなくなったり、歯に不具合が生じると、ガムを噛む時間が長くなったり、食べられなくなったりします。

 

▢ 飼い主さんがいる間はほとんど起きている

犬は飼い主さんが大好きです。大好きな飼い主さんと一緒の時間は至福の時。飼い主さんの一挙手一投足が気になり、飼い主さんの行くところを目で追ったり、後追いしたり。でも歳をとると、少しずつ睡眠時間が長くなってきます。飼い主さんがいるにもかかわらず、寝ている時間が長い場合は、それだけ睡眠時間が長くなった=老化が始まったといえます。

 

▢ 飼い主さんが動くと、寝ていても必ず起きる

犬は浅く眠ることが多く、ほとんど熟睡しないといわれています。飼い主さんが動くと気配を感じ、パッと顔を上げて飼い主さんを見たりしますが、これも若い証拠です。年齢と共に、眠りが深くなるのか、ぐっすりと寝ていることが多くなり、飼い主が動いても眠ったまま起きなくなることが多くなります。

 

▢ ぼーっとしている時間はほとんどない

飼い主さんと一緒に過ごしている時は、犬は飼い主さんのことで頭がいっぱいです。飼い主さんのことをまるで見張ってるかのようにじっと見つめていたり、飼い主さんにおもちゃで遊んでほしいとねだったり、落ち着きなく動いたりしていることが多いですが、耳が衰えてきて聞こえにくくなったりすると、今まで反応していたことに反応しなくなったり、ぼーっと宙を見つめたりする行動が出てきます。

 

▢ 運動した後でも足がもつれたりすることはほとんどない

犬は運動能力がとても高い動物です。ドッグランにいって散々運動した後も、平気な顔でお散歩に行くことができます。ところが足腰が弱くなってくると、足(特に後足)がもつれたり、しりもちをついたりすることも。後足がもつれたりするのはヘルニアの可能性もありますので、注意深く観察してあげた方がいいでしょう。

 

▢ お散歩は10分以上止まることなく歩く(走る)

犬は散歩が大好き。排泄や他の犬の匂いを嗅いだりする時間以外はほとんど動いています。ところがシニアになると、散歩の途中で急に立ち止まったり、歩くスピードが遅くなったりすることが出てきます。続けて長い時間歩くことができなくなったのは、足腰が衰えてきたサインといえます。

 

▢ ソファーやテーブルの上に跳び乗る

ソファーが大好きな犬は多いと思います。少し背が高くてふかふかのソファーは、家族みんなを見渡せるし寝心地はいいし、最高の場所ですよね。またいたずら好きな犬はテーブルの上に飛び乗ったりすることもあります。しかし足腰が弱ってくると、それまで平気で飛び乗ったり下りたりという行動がしづらくなってきます。最初は1回で飛び乗れていたのに、乗るまでに数回かかるようになったり、飛び降りた時に踏ん張る力が弱まり、前につんのめるようになったりします。

 

▢ 足を崩さずにお座りの姿勢がとれる

たまに横座りのくせがある犬もいますが、背筋をまっすぐにした体勢でお座りができるのは、背筋がしっかりしている証拠。足を崩してしまうのは、筋力の低下も原因のひとつ。今まで背筋をまっすぐにしてお座りできていた子が横座りするようになったら、筋力の低下が疑われます。

 

▢ 自分の体高くらいの段差でも躊躇することなく歩く

若い時は平気でひょいと飛べていた段差でも、歳と共に飛び越えるのが一苦労になり、自分の体高の半分くらいの段差でも躊躇するようになります。犬は後肢から衰えが始まります。段差を飛び越えるために後肢を踏ん張る体勢を取りますが、年齢と共に踏ん張れなくなり、足が上がらなくなってすり足のような歩き方になっていきます。更に老化が進むと、前足も上がりづらくなってきます。

 

 

少しでも長く身体機能を保つために

 

これ、一般的に言われていることでもありますが、すべて自分自身が経験したことでもあります。

うちの愛犬クリンは、13歳で散歩の途中で急に立ち止まるようになり、14歳で持病持ちになり、15歳でソファーに飛び乗れなくなり、16歳で足がもつれるようになりました。

18歳の今は、部屋の中を歩いている途中でしりもちをつくこともあります。目もほとんど見えていないようで、壁にぶつかってしまうこともあります。

以前は、寝ていてもわたしが動くとすぐに起き上がっていたので、「この子はわたしといると安心できないのだろうか」なんて思ったこともありましたが、今は先にわたしが起きても熟睡しています。

犬は人の4倍ほど早く歳をとります。わたしたちの時間の感覚よりもずっと早く、犬の時間は過ぎています。老化を止めることはできませんが、少し気をつけて見てあげることで、身体機能を長く保つこともできます。

足腰が衰えてきたら、段差などに気をつける、フローリングなど滑りやすい床は滑りにくいようカーペットを敷く、ソファーは階段やスロープをつける。

ご飯が食べにくいようであれば、ご飯を食べやすくするため台の上に載せたり、小粒サイズにしてあげたり、お湯でふやかして柔らかくしてから与えてあげると食べやすくなります。また歯に不具合がないか、お口の中をチェックして、もし歯石などがついていたら、獣医さんに相談するのがおすすめです。獣医さん曰く、歯のケアをしている子は長生きするということでした。

身体機能を長く保つには、やはり日頃のケアが一番効果的だと思うのです。

大切な愛犬には、少しでも長く、元気で健康に過ごしてほしいもの。老化のサインに気付いたら、それは生活習慣を見直してあげるタイミングなのかもしれません。

犬の様子は日々変わります。愛犬の老化はあっという間にやってきます。昨日まで当たり前にしていたことが、今日はできなくなっているということもあります。

そして、犬は誇り高いため、できないと思った瞬間に諦めてしまい、そのままどんどんできなくなっていくということも考えられます。

愛犬の変化に気付いてあげられるのは飼い主さんだけです。できるだけ長く身体機能を保てるよう、共に頑張りましょう。