愛犬との出会い~私がお姉ちゃんになった日~

 

スタートは”犬嫌い”。

 

 

私は幼児時代、動物に対して好奇心旺盛な子供だったようで、ホームビデオにはモルモットに物怖じせず掴んで自分の所へ何度も引き寄せる様子や、ヨチヨチ歩きながらハトを追いかける様子が残っています。
そのせいでしょうか、三歳頃にお邪魔したお宅で飼われていた大きなラブラドールを触ろうとして指を噛まれてしまい、私はそれから「犬は怖いから嫌い」と思うようになりました。

しかし、母の友人でシーズーを10匹近く飼っているMという人がいたのですが、Mさんの所へ遊びに行くとシーズーが一気に駆け寄ってきて、ソファに座れば膝に上ってくる。
どの子もとても人懐こくいい子達ばかりで、初めの頃は怖かったけど、徐々に犬というものに慣れることができたのです。

でもやはり知らない犬は怖く、自分から近寄ることは絶対にしませんでした。

 

 

転機

 

 

私が小学校5年生の頃、近所のコンビニに家族で立ち寄った時に、今では安全面からほとんど見ることはありませんが、ロングのダックスフンドがガードレールに繋がれお留守番をさせられていました。
今では「飼い主さんに確認せず勝手にダメだよ~」と思うのですが、両親がそのダックスフンドの前にしゃがみ、撫で始めたのです。
私は少し離れて見ていましたが、両親が「噛まないから撫でてごらん」と何度も言ってくるので、Mさんの所の子たちも噛まないしと、その子に近づきしゃがみました。

その子は私が手を出すと、耳が見えなくなるほど倒し、尻尾をお尻ごと振り、そしてお腹まで見せたのです。
私が撫でると、嬉しそうに目を細めながら可愛い声を上げます。
私はその時に初めて心の奥底から犬を可愛いと感じました。

 

コンビニから自宅までの帰り道、両親に「ダックスフンドなら私、好きになれるかもしれない。飼ってみたい。」と話していました。

両親はそれまで私がそんな事を言ったことが無かったのでビックリしたのか、家に着くまでの間はずっと「どんなところが可愛かった?」「触ってみてどうだった?」と色々なことを私に質問してきました。

私はその日の夜、眠りにつくまでコンビニ前にいたダックスのことを考えていました。

 

 

 

気に入った子は「先約有」

 

 

 

小学六年生のある日、私は突然母に「Mさんのご近所にダックスが生まれたから見に行こう」と言われました。
突然のことに驚いたものの、「子犬が抱っこできる!」とウキウキで向かいました。

 

お宅にお邪魔すると、スムース・ブラックタンのお父さんと、ロング・レッドのお母さんが出迎えてくれました。

ーーそれと、レッドの男の子が1匹とブラックタンの女の子が二匹。
ブラックタンの女の子同士は、揉みくちゃになって遊んでいます。
一方、レッドの男の子はずっとお母さんを呼んでいて、お母さんが来るとすぐにくっついて離れずに甘えていました。

母はすぐにレッドの男の子が気になったようで抱っこさせて貰っていましたが、母曰く、その時に上目遣いで母を見上げるその子に一目惚れしてしまったんだそうです。
ところがその子は、他に貰い手が決まっているとのことで、少し話をしてそのお宅を後にしました。

 

ところが……!!!

 

それは今でも忘れない、夏の暑い日でした。
夏休みも終盤に差し掛かり、遊びに行く気も起きず家で冷房を満喫し、私は一人でダラダラしていました。
その時、「ちょっと出かけてくるね」と言って出かけていた両親の車が止まる音がしました。
私は玄関の方を向いて両親が入ってくるのを待っていました。

 

ドアが開き、そこには両親と……犬?……犬だ!!
ーーそれはあの時母が抱いた、レッドの男の子でした。
私はその時両親と、その腕の中に居る小さな子をリビングから見た光景を、今でも鮮明に覚えています。

私はリビングから玄関までの廊下を走って行きました。
口から出る言葉は、「なんで?!」「どうして?!」ばかり。
両親は私の反応が想像通りだったのでしょう、ご満悦の様子でした。

どうやら先約がキャンセルになり、我が家に来ることになったその子は、家族会議の結果、名前を決める時にテーブルにマクドナルドの袋が置いてあったのがキッカケになり、「マック」と名付けられました。

 

 

 

それからの暮らし

 

 

 

Mackが来てから両親は末っ子だった私を「お姉ちゃん」と呼ぶようになりました。
するとなんだか嬉しくて、”弟”であるMackの世話は”お姉ちゃん”である私が率先してやっていました。

夜眠るのも、初めて来た日から私と一緒。ご飯も私、ワクチンが終わってからの初散歩も、私と二人でした。
公園に友達と遊びに行く時も、通っていた塾にも、自転車のカゴにMackを乗せて連れて行ったり、先生や友達に自慢して歩きました。

両親に怒られたとき、学校でいじめられた時、私はMackに当たってしまうこともあったのに、Mackはいつも私のそばに居てくれました。

 

それでも中学・高校になると、一緒に寝るのは毎日していても、部活で夜ご飯をあげられなかったり、隣町まで友達と遊びに行ったりすることが増え、Mackとの時間は減っていきました。
高校を卒業する前に、家庭の事情で私は兄と二人、Mackを両親の元へ残して家を出てしまい、それから両親は離婚……私はMackと約二年間離れて暮らしました。

Mackと離れている間に夫と入籍し、妊娠。出産のために里帰りをした際に、当時父がMackの面倒を見ていたので、父宅へ会いに行くことにしました。
父は不在だったので持っていた合鍵で中に入ると、Mackはネグレクトされ、二年前とは全く違う姿に。

私はそのまま父には何も告げずにMackを連れて帰り、私の名前で登録しなおしてMackと再び暮らし始めました。

 

連れ帰ってから

 

私と暮らし始めてからMackは娘の誕生と成長・東日本大震災・数々の疾病を経験し、18歳と5か月になる前に亡くなりました。
離れていた二年間、人間の都合で振り回してしまい申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、最期は私の腕の中で老衰で亡くなり、私はMackのことを幸せな気持ちで旅立たせることができたと思っています。

 

最近、Mackはもうそろそろ生まれ変わる!そろそろまた帰ってくる!と感じています。
今度はずっと離れません。当時と違い私はもう大人です。全ての責任を自分で負うことができます。

今度は姉ちゃんはMackのママ。そしてMackの次の姉ちゃんは私の娘。
私とMackが歩いたような道を、娘とMackが歩いていくかと思うと、なんだか不思議な気持ちですが、楽しみでなりません。

 

 

ライター:奥村 來未

 

 

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