愛犬の介護……それは綺麗事だけでは出来ない、大変なことです。
小型犬か大型犬かで、肉体的な負担の違いはあると思いますが、夜鳴きや愛犬の体調不良が続き飼い主が眠れなくなることや、介護をしながら生まれる不安や困惑はどの飼い主さんも同じだと思います。
私も約1年間愛犬の介護をしていました。
沢山の不安・困惑・悩みに泣きながらお世話をしたこともありました。
誰でも介護の始まりはマイナスから
パピーの頃から過ごした愛犬が成長していく様子は微笑ましく嬉しいものですが、成犬から老いていく様子は切ないものです。
私自身も、愛犬Mackが家族になった時に小学六年生だったので、共に「子供」から「大人」へ”成長”した弟のようなMackが、あっという間に私を追い越して老いていき、できなくなることが増えていく様子を見るのはとても切なく胸が苦しくなりました。
2016年9月頃から、Mackは前庭疾患という脳の疾患により、歩行に異常が出始めました。
症状が酷くなってきた頃の同年11月、急性膵炎による約二週間の入院の末、完全寝たきりになりました。
私はそれからMackが2017年10月20日に亡くなるまでの約一年間介護をしていましたが、介護が始まったばかりの頃は精神的に辛い日が続きました。
キッカケは年賀状
Mackの介護が始まった2017年の12月、それまでの年賀状は娘とMackに干支の被り物をさせて、並ばせて撮った写真を印刷していたのですが、Mackは寝たきりになってしまったので、「並んで撮るのは難しいな……どうしようかな?今年は娘だけにするかな?」と考えていました。
娘だけの写真にするならどんなものかと考えていた時に、「娘が赤ちゃんなら寝相アートができたな。娘が赤ちゃんの時は、まだ寝相アートなんて聞いたことが無かったから撮ったことがなかったな。」と思った瞬間に”今のMackで寝相アートを撮ったらどうだろう!”と閃き、思い立ったら吉日!とすぐに材料を探しに車を走らせていました。
そして気づいた時にはカゴのなかにカラフルなバスタオルや画用紙、テーマに沿った使えそうな雑貨をつめ込み、ワクワクしながらレジに並んでいました。
悩みやイライラを忘れられる
Mackを寝相アートで可愛く撮ろう!と思い立ってから、小道具を作っている間も、セッティングしている間も、撮影・編集している間も、それまでの介護でのイライラや悩みはすっかり忘れ、頭の中は「あ~Mack可愛い!」ばかり。ーーそれはとっても嬉しい誤算でした。
そして、一つのテーマで撮影が終わっても、次は何のテーマで撮ろうか?どんなものを用意するかな?と寝相アートのことを考えるのが優先になり、介護での悩みやイライラしてしまう時間は大幅に減りました。
明るく前向きに
それからの私は、「決して永遠ではない限られた時間の介護生活なんだから、楽しくやってかなきゃ!」と考えるようになりました。
介護生活は大変だけど、こんなにも愛おしいMackと過ごす時間は、なにものにも変えられない、物凄く貴重なものなんだな。」と思えるようにもなりました。
これはMackを亡くした今だからこそ強く思うことですが、前向きに明るく考えて介護できたことによって、私もMackも今までより遥かに幸せで濃厚な時間が過ごせたと思います。
私が前向きに考えるようになってから、私の気持ちの落ち着きがMackにも伝わったのか、若い頃では考えられませんが、お腹の上で大人しくしていたり、そのままぐっすり眠ってしまったり。
日中も機嫌のいい時間が増えたりと、Mackにもいい影響があるようでした。
寝相アートへの「こだわり」
私には寝相アートを撮るうえで、絶対に譲れないこだわりがありました。
ーーそれは、「完璧に撮ろうとしないこと」。
Mackの寝相アートはどれも、影になってしまっているものや、ズレてしまった小道具、そして敷いているタオルにシワがあったりと、完璧に撮れたものは一つもありません。
勿論、セッティングの段階では綺麗にセッティングされています。
しかしMackを寝かせる際、Mackが唯一動く首を動かしたりすることで、どうしてもズレたり、シワが寄ったりしてしまいます。
ですが、Mackに協力してもらって完成させるこの寝相アートは、完璧に撮りたくて撮っているわけではありません。
純粋に、Mackとのこの時間を楽しみながら、Mackの負担にならないように、ズレようがシワが寄ろうが、光がうまく差さなくても、とにかく一番大事なのは”手早く終わらせる事”なのです。
いつもテーマを決めてから小道具の調達や作成に一か月近くかかりますが、撮影にかける時間はわずか1分。
そんな風に作り上げた完璧ではない作品たち。ブログで公開する度に「可愛い!」と褒めてもらえるのが、とっても嬉しかったです。
寝相アートの世界では、自由だった
寝たきりだったMack。
動くのは首だけで、起きることも立つこともできなかった。
だけど、寝相アートの世界では、Mackは立つこともできるし、走ることもできます。
花見でお酒を飲んだって、空を飛んだって、何をしたって自由です。
そんな姿を寝相アートで表現する度、私はその画の中のストーリーを想像し、笑みがこぼれました。
Mackは今は居ないけど、残ったこの寝相アートたちは楽しかった老犬介護の思い出がたくさん詰まった宝物です。
画の中のMackは今でも自由に動き回っています。
ライター:奥村來未