【老犬の病気】高齢犬の積極的治療のメリット・デメリット(1)

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:歯周病・子宮の不具合・ヘルニア

発症年齢:14歳~・15歳~・18歳

発症の経緯:14歳の時突然右頬が腫れあがった

治療法:投薬~歯石除去&抜歯手術・再生医療

 

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積極的治療の選択

 

我が家の長女クリンは、17歳9ヶ月と18歳10ヶ月の時に積極的治療を選択しました。一度目は子宮摘出手術と抜歯と歯の掃除、二度目は抜歯と歯の掃除で、共に麻酔をしての処置となりました。

まもなく19歳を迎えるという年齢での全身麻酔はとてもリスクが高く、どんな影響があるかは、実際にやってみないとわからない、といわれました。

 

ではなぜリスクを背負ってまで積極的治療をしてもらったのか。

それは不具合を放置することで、他の臓器に悪い影響を与える可能性が高い、と考えたからでした。

高齢になってから体の不具合で悩まれている飼い主さんはたくさんいらっしゃると思います。特に大抵の老犬は歯が悪い子が多いと聞きます。犬の場合、歯の治療も全身麻酔となります。

年を重ねるほど麻酔のリスクは高まります。すぐに命に直結する病気などの場合は早めに処置を希望される飼い主さんが多いと思いますが、歯の治療になると投薬などで様子見される方がほとんどで、積極的な治療をするか悩んでおられる飼い主さんも多いのではないでしょうか。

今回はクリンが実際に17歳9ヶ月と18歳10ヶ月で積極的治療を選択した経緯と、自分自身が感じた積極的治療のメリットデメリットについて書かせていただきたいと思います。

 

 

不具合の始まり~右頬の腫れ

 

クリンが14歳のある日、突然頬が腫れあがりました。いきなり右目の下がぷっくりと腫れていて、驚いてすぐに当時通っていた病院で診察を受けたところ、歯が原因であるといわれ、数種類の薬を処方されました。

この薬、後でわかるのですが、実は「ステロイド」でした。

薬を飲むとすぐに腫れは治まりました。でも薬をやめるとまたすぐに腫れ出して、当時全く知識のなかったわたしは、その病院で出される薬がとても効果があるのだと思っていたんです。でもこれって、実はただステロイドで腫れを無理やり抑えているだけで、根本治療は全くしていないんですよね。

もしその時、今の病院に通っていたら、おそらく抜歯などの根本治療を選択していたと思います。

ちょうど同じくらいの時期に胆泥症が発覚し、胆のう摘出手術を強く勧められたことが病院に対する不信感となり、セカンドオピニオンを希望しました。そして投薬で治療してもらえる病院に転院しました。転院先の病院で、歯の腫れのことも相談し、その時は歯石はさほどひどくなかったため、麻酔なしで歯石を取ってもらいました。それ以降歯の腫れは一旦落ち着いたため、そのまま何もせずに過ごすことになりました。

この頃は、14歳でもかなりの年齢だと考えていました。今思うとめちゃくちゃ若いなぁと思いますが、当時は寿命は15歳くらいなんだろうと漠然と思っていました。なので14歳で手術なんて…と考えていました。

そして、この時強く勧められた胆のう摘出手術について、このままだと命の危険性があるとまで言われていましたが、転院先の病院では胆のう摘出については、する必要はないといわれました。

 

余談になりますが、この病院はニコの乳腺腫瘍を発見し手術をしてもらった病院でもあります。しかしこの病院を選択したことが、ニコの心臓病を発症したきっかけになったと思っています。あくまでも主観であり証拠などはありませんが、主治医の先生はオペ経験が少ない方で、恐らくニコの手術の際に長時間の麻酔をかけたことで心臓に負担がかかったことが心臓病発症の原因であったと考えています。飼い主の知識不足でニコの寿命を縮めてしまったことは、今でも大きな後悔として残っています。

病院選びは我が子の寿命に直結しますし、本当に心から信頼できる病院に出会うことはとても難しいことだと改めて思います。

 

 

ターニングポイントとなった15歳の出来事

 

2015年5月、クリンが15歳の時に突然前足を引きずりだしたことがありました。この時に処方された痛み止めの薬で胃が荒れたことでご飯を食べない日が出てきて、6月にヒートになった時から本格的に食べムラ・食い渋りが始まりました。

このヒートでは、いつもより経血量が多く、検査の結果子宮内に水があるといわれました。診断は子宮水腫。子宮蓄膿症の前段階のような病気です。

 

※当時、食欲について書いていたメモ

 

このまま3ヶ月ほど食べたり食べなかったりを続け、やっと落ち着いた10月に、またヒートが始まりました。ここでまた食べない日が続き、点滴を受けながら様子見していましたが、突然クリンの具合が悪くなり、膵炎の疑いで入院することになりました。

薬を飲まないと相談したところ、先生から「口を開けて喉の奥に入れるか、好きな食べ物に隠して食べさせて」といわれました。これこそが、この後約4年に渡って悩むことになる「食べムラ・食い渋り」の始まりであり、口腔ケアが一切できなくなった原因になりました。

先生にいわれた通り、無理やり口をこじ開けて飲ませようとし、何度も失敗しました。

「何とか薬を飲ませなきゃ!」という一心で、鬼の形相でクリンの口をこじ開け、薬を入れて口を閉じさせる。最初の何回かは飲ますことができましたが、その後は全く口を触らせてくれなくなってしまいました。

実はこの薬、めちゃくちゃ苦かったんです。

あまりに嫌がるため、ある時ふと「どんな味なんだろう」と思い、薬を少し舐めてみたんです。すると驚くほど苦いことがわかりました。焼いた牛肉に薬を巻きつけて隠していたため、薬が肉の水分で溶けて肉自体が苦くなっていたんです。

クリンはとても聞き分けのいい子でした。それまでは口の中をガーゼや指でこすったり、歯ブラシを噛ませたりしていました。全然嫌がることもありませんでしたし、ケアする時はとてもおとなしくしてくれていました。頻繁にしていたわけではありませんが、それだけのケアでも歯石は少ししかついていませんでした。

ところが投薬の失敗から、全く口を触れなくなりました。食べ物への不信感が生まれ、食べることを嫌がるようになり、食べムラ・食い渋りによりフードを食べてくれなくなったことなどから、口の中の状態はどんどん悪くなっていったように思います。

 

そしてクリンが15歳になり、今度は子宮の不具合が発覚しました。ヒートから陰部の腫れが引かず、食欲が落ちたため病院で検査をしてもらったところ、子宮内に水が溜まっているのがわかりました。恐らくこのあたりから子宮に痛みが出始めたのだと思います。

口腔ケアができなくなったことでの歯の不具合と子宮の痛み。これこそがクリンの食べムラ・食い渋りの原因でした。

 

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投薬治療~手術の決心

 

口腔ケアができなくなってから約2年。その頃には目で見てわかるくらい歯石がひどくなっていました。特に奥歯はべったり歯石がついていて、口の中はかなり不快だったと思います。

17歳8ヶ月の時、口を痛がるようなしぐさが見られたため、最初の時にペンチのような器具で歯石を取ってほしいとお願いしたところ、クリンは口を触られるのを嫌がるため無理、といわれました。これがきっかけで転院することを決意しました。

 

転院先は、ブログで知り合った方が長い間通っておられた病院でした。

病院によって治療の選択は大きく変わります。クリンはすでに18歳目前。前の病院では、14歳の時に積極的治療はリスクが高いから内科治療をしましょうといわれていましたが、この病院は「治せるものは治す」という考えでした。

歯の状態がとてもひどいこと、そして初めての診察の時、触診で子宮の痛みがあることをすぐに指摘されました。

先生は、「歯の治療について、飼い主さんは割と軽く考えている人が多いけど、本当は歯は命取りになる」といわれました。

歯の菌はとても恐ろしく、それが原因で心臓が悪くなり、あっという間に旅立ってしまう子もいるとのことでした。

病院によっては投薬で抑える治療を選択されるところもあります。実際にクリンも最初に歯が腫れた時は、ステロイドで抑えるという根本治療とはかけ離れた治療をしていましたし、病院の選択次第で全然治療法が違うということを思い知りました。

年齢的には非常にリスクが高かったのですが、子宮に痛みがあること、このまま放置すると子宮蓄膿症が重篤化し、命にかかわる可能性があるため、もし治療するなら1日も早く取ってしまう方がいいこと、そして歯の不具合を放置したら、他の臓器に悪影響を及ぼす可能性があること。年齢を考えると、迷っている時間はありません。老犬になると、ほんの少しの時間も命取りになります。

わたしはクリンの生命力を信じ、すぐに手術することを決意しました。

 

 

【老犬の病気】高齢犬の積極的治療のメリット・デメリット(2)に続く

 

 

ライター:福井 惠子