【ヘルニア予防】専門家に聞く!愛犬のヘルニア予防のために飼い主がすぐに実践できること(2)

前回の記事では、ドッグケアのプロから、愛犬の足腰を守るためのお話を伺いました。今回の記事では、椎間板ヘルニアになってしまう原因と、愛犬の足腰に負担のない「抱き方」を紹介させていただきます。

 

 

どうして犬は椎間板ヘルニアになってしまうの?

 

獣医師の山路美晴先生にお話を伺いました。

山路 美晴 獣医師

滋賀ペット治療院代表。ペットの足腰ケアやヘルニアなど、鍼灸を主とした治療を行っている。飼い主が愛犬の体に毎日触れることはとても大切とのことで「自宅ケア」を推奨しており、全国各地で飼い主向けの鍼灸セミナーを開催している。

ペット鍼灸セラピー 滋賀ペット治療院

 


わたしの治療院は、ペットの足腰の不具合に悩む飼い主さんから相談を受けることがとても多いです。特に椎間板ヘルニアは、痛みを伴うことの多い疾患で、飼い主さんの悩みも深刻です。

椎間板ヘルニア(以下ヘルニア)は、軟骨の変性により椎間板が椎骨の間から飛び出すことによって脊髄の神経を圧迫し、痛みや麻痺を起こす疾患です。遺伝的に軟骨が変性しやすい犬種(ダックス、ペキニーズ、コーギー、フレンチブルドッグなど)がかかりやすい疾患です。この犬種は、比較的若い時期から発症することもあります。それ以外の犬種でも、加齢により椎間板の弾力性が失われ、発症しやすくなります。また、胴長短足という体型的な要素、肥満により筋肉が弱るなどの要素が加わると、さらに発症のリスクは高まります。

ヘルニアを発症しやすい犬種については、散歩や運動で筋肉をつける、肥満にしない、また体をねじるような抱き方をしないなど、日々の生活習慣を見直すことでもヘルニアのリスクを減らすことができます。犬は散歩が大好きで、運動することは楽しみのひとつです。歳をとっても愛犬が自分の足で歩けることは、長生きの秘訣だと思っています。


 

わたしたちが何気なくやっている普段の行動が、愛犬の足腰に負担をかけていることもあるのかもしれません。

 

 

ドッグケアのプロに聞く!愛犬の足腰を守るコツ

 

引き続き今井先生にお話を伺いました。

老犬訪問介護・犬のリンパマッサージ・リハビリケア やさしい手*リアゾン

老犬介護・犬のリハビリ・しつけ(犬のようちえん)レッツ(東京都江戸川区)

 

犬の姿勢は、足腰を守るためにはもちろんですが、犬の精神を安定させるためにもとても重要です。姿勢を正しくしてあげると、それだけで内面の変化があります。人間でも猫背でいる状態と、背筋をピンとして視線をまっすぐにしている時では、思考も気分も違います。

シニア期になると、足元がおぼつかないことも出てきます。「歩かせるのはかわいそう」といわれる飼い主さんもいらっしゃいますが、シニアになっても、できるだけ本来の姿勢をキープしてあげることはとても大切です。歩行ができなくなってしまった子も、補助しながら立たせてあげるだけで効果的です。たとえ短時間でも、自分の足で立たせて、歩かせてあげてください。

犬は歩くという行為をしなくなると、体を動かすこと自体が減っていきます。それが自信喪失につながることも。自信をなくしてしまうと、元気がなくなり、食欲は減退し、どんどん衰弱することもあります。それほど姿勢は大切であり、正しい姿勢をとるだけで、かなり違ってきます。病気などでたとえ歩けなくなったとしても、毎日立たせてあげたり、装具などを使って歩かせてあげることは、愛犬にとってはとても嬉しいことなのです。

 

 

ドッグケアのプロが勧める「愛犬の足腰を守る」抱き上げ方

 

引き続き今井先生に伺いました。

 

日々の生活の中で、抱き上げる動作があると思います。この「抱く」という行為自体、犬の体に負担のかかる体勢になりやすいので、特に注意が必要です。よく愛犬を抱っこされている飼い主さんを見かけますが、抱っこするということ自体、実はあまりおすすめできません。大事な愛犬の足腰を守るためにも、日々の生活の中では極力抱っこするのは控えるようにし、自分の足で立たせてあげてください。

 

 

抱き上げる時のポイント

愛犬を抱き上げる時・降ろす時には、四肢が地面に対して垂直になる体勢になるようにすると、愛犬の足腰に負担がかかりにくいです。今回は病院の診察時や車に乗せる時などの、愛犬抱き上げ方を紹介させていただきます。

 

①愛犬を地面に立たせて、前肢と後肢の付け根にそれぞれ右腕と左腕をいれます。手の平でなく、腕の面で支えるように手を入れます。

 

②腕の面に愛犬の体を載せながら立ち上がります。この時、内臓を圧迫しないように気をつけます。抱き上げた時の愛犬の体勢は、地面に立っている時とほとんど変わらない状態になります。抱き上げている時は、愛犬の体重は上半身にかける感じに載せてください。胸の部分には肋骨がありますので、内臓に負担がかかりません。

 

③降ろす時は、愛犬が地面にそのまま立てるようにそっと降ろしてください。この時も、お腹を圧迫しないよう気をつけてください。

このように、愛犬が自分の足で立っている時とほとんど同じ体勢で抱き上げると、愛犬の足腰への負担が少なくてすみます。

 

<ご注意ください>

・お腹の部分は、手のひら全体を使って面で支えるようにしてください。特に骨のない部分は力を入れないようにしましょう。

 

 

 

抱っこしたまま手を使いたい場合の抱き方

 

これからご紹介するのは、動物病院で教えてもらった抱き方です。ヘルニアを発症した子を抱きかかえる場合に、この抱き方を推奨しているとのことでした。

この抱き方は、背骨や後肢への負担がなく、犬が地面に立っているような体勢で抱くことができます。腕の上にうまく乗って安定している場合は、もう片方の手を使うこともできます。

 

小型犬の片手での抱き方

この抱き方は、獣医さんからヘルニアを発症した子を抱っこする方法として教えてもらいました。特に胴長の犬種(ダックスフンド等)は腰を痛めやすいため、ヘルニア予防のためにもこの抱き方にされることをおすすめします。

愛犬の後肢から腕を通し、胴体を腕の上に愛犬の胴体を載せます。手のひらで胸の部分を支え、もう片方の手は愛犬の体にそっと沿わせます。腕で体を支えるため、抱き上げた時に愛犬の体は安定しています。

 

※片手で抱く場合は、愛犬が落ちないようご注意ください。極力もう片方の手を愛犬に添えるようにしてください。

 

 

愛犬の足腰を守るために飼い主ができることまとめ

 

極力愛犬には自分の足で歩かせてあげること。これが一番重要です。

 

 

脇の下をすくい上げるような抱き方は、愛犬の体に負担がかかりますので、できるだけ控えましょう。

 

 

抱っこは極力控え、抱っこする場合は腰に負担のない体勢で抱っこするようにしましょう。

 

ほんの少し習慣を変えるだけで、大切な愛犬の機能を守ることができます。愛犬にはいつまでも元気で歩いてほしい!というのは飼い主共通の願いです。少しでも長く身体機能を保つためにも、今日からできることを共に実践しましょう!

 

 

 

 

【ヘルニア予防】専門家に聞く!愛犬のヘルニア予防のために飼い主がすぐに実践できること(1)

愛犬が若くて元気な頃は、まったく考えなかった「歳をとる」ということ。

歳をとると、いろんなところにいろんな不具合が出始めます。どれだけ気をつけていても、どこかしらに何か出てくるのが「老化」です。

中でも足腰に不具合が出ると、飼い主の負担はとても大きくなります。自分の足で歩けなくなった愛犬を見るのはとても辛いもの。

病気で歩けなくなってしまったのは仕方ないですが、予防できることもあります。

我が家の愛犬も、寝起きなど後足のふらつきがみられることがあります。楽しそうに走る姿を見ていると、少しでも機能を長く保ってあげたいと思います。

シニアになっても、自分の足で歩き、大好きなお散歩を続けられるよう、愛犬の足腰を守るためにできることを紹介させていただきます。

 

 

手術ってそんなにかかるの!?

 

足腰の不具合と聞いてまず思い浮かべるのが、椎間板ヘルニア(以下ヘルニアと表記)です。ダックスやコーギーは、胴長短足の体型により腰に負担がかかりやすいため、発症する率が高いそうです。

ヘルニアになる原因は、老化や太りすぎ、激しい運動で椎間板に負荷がかかってしまうことなどが挙げられます。

犬は運動が大好きな動物です。足腰が悪くなってしまうと、大好きなお散歩に行けなくなりますし、何より痛みが伴う傷病のため、辛そうにする愛犬をみるのは飼い主としてとても悲しいことです。

そして、医療費もかかってしまいます。大手ペット保険会社が、2016年に支払った事案を集計したペットの手術ランキングを発表されていたので紹介させていただきます。

出典:2017年ペットの傷病ランキング | ペット保険のアイペット損保

 

特筆すべきは金額です。ヘルニアは手術数では7位ですがトップ10中金額は1位です。手術費用が高額になるのは、医療機器の発達や技術の進歩などによるそうですが、もし手術で治るのなら何とかしてあげたいと思いますよね。

いくらヘルニアを予防したいと思っても、愛犬のすべての動きを飼い主さんがコントロールすることは不可能です。高いところから飛び降りたり階段を行き来したり、飼い主さんがどれだけ気をつけていても、どうすることもできないこともあります。

できれば最期の時まで自分の足で歩いてほしいというのは、どの飼い主さんも思うことだと思います。重度のヘルニアになってしまうと、歩くことができなくなってしまうことも。そして医療費も結構な額になります。ここでは手術費用だけをピックアップしていますが、実際は手術前後の診察など、もっと医療費がかかってしまいます。

大切な我が子をヘルニアから守るために、「ヘルニアの注意信号」と、飼い主さんがすぐに実践できる「愛犬のヘルニアを予防」するためにできることを紹介させていただきます。

 

 

こんな症状は要注意

 

症状1.抱っこを嫌がる

抱っこをすると嫌がる素ぶり(歯を剥く、キャンと鳴くなど)があると、ヘルニアの可能性が高いです。突然抱っこを嫌がったりすることがあれば、可能性大です。

症状2.歩き方がおかしい・足がもつれる

後足を引きずったり、足がもつれたり、腰がフラフラ揺らして歩いたりしている場合もヘルニアの可能性があります。痛みがあると、どうしてもかばってしまうため、動きが鈍くなったりすることも。

症状3.反応が遅い・すぐに立ち上がれない

強い痛みが出ていると、動くこと自体を躊躇するようになることも。その場合、腰回りを触られることや、少し体を動かそうとすることも嫌がります。

症状4.排泄がうまくできない

この場合、神経障害が出ている恐れもあります。下半身の感覚が麻痺していることもあるそうです。この症状が一番重症で、完治は難しい状態かもしれません。

ヘルニアは、痛みを伴う傷病です。言葉を離さない愛犬は痛いといえないため、普段の仕草や行動を見てあげることが大切になります。

 

 

その習慣、見直してみよう

 

日々の習慣で、愛犬の足腰に負担をかけていないか、確認することも大切です。飼い主さんが少し気をつけてあげることで、大切な愛犬の体を守ることができます。飼い主さんの日々の習慣をぜひチェックしてみてください。

☑抱き上げる時、脇の部分を持ち上げる

☑抱っこは縦抱きだ

☑出かける時はスリングを愛用している

☑縦型の抱っこ紐(おんぶ紐)を使っている

 


 

実は、これらすべて愛犬の腰に負担がかかるといわれています。

 

抱き上げる時に脇の部分を持ち上げる。これは抱き上げる時に、後足で立たせる体勢になります。これを続けることで、腰に大きな負担がかかってしまいます。

 

抱っこは縦抱き、これも腰に負担をかけてしまいます。腰が悪い愛犬を縦抱きされている方もよく見かけます。肩に上半身を載せる抱き方も、腰に負担がかかることと、犬に自分がえらいと勘違いさせるという理由でやめた方がいいといわれています。

 

出かける時はスリングを愛用している飼い主さんは多いと思います。うちでも買い物に行く時には便利でつい使いたくなりますが、スリングは体を包み込む形状で柔らかい布を使っているため、犬が上から顔を出すと、全体重が後足にかかる体勢になってしまいます。またその体勢のまま不安定になるため、余計に負担が大きくなります。

 

縦型のおんぶ紐、ビジュアル的には赤ちゃんみたいでとても可愛らしいですが、犬にとっては非常に負担のかかる体勢となるため、絶対にやめた方がいいです。

 

 

ドッグケアマネージャーから聞いた「犬の体を守るために大切なこと」

 

ドッグマッサージ・ペットケアマネージャーの講師であり、長年ドッグケアに携わっておられる今井先生に話を伺いました。

 

今井 みゆり先生

 

老犬訪問介護・ドッグマッサージ リアノン代表

2008年よりドッグマッサージセミナーを始め、2010年より4年間、ペットケアサービスレッツにてペットケアマネージャー養成講座の講師及びマッサージケアに従事。2012年、中部地方初のペットケアマネージャー認定を受ける。現在静岡・中部地方にて老犬訪問介護、病中病後ケア、リハビリ支援、ドッグマッサージなど、ペットケアマネージャーとして活動。

老犬訪問介護・犬のリンパマッサージ・リハビリケア やさしい手*リアゾン

老犬介護・犬のリハビリ・しつけ レッツ


 

わたしが一番初めにドッグマッサージを教えていただいた先生から、「犬の姿勢」「地に足をつける」ことの大切さを学びました。

犬は4本足です。その姿勢が一番自然で、体に負担のかからない体勢であるため、「犬にとって自然な姿勢をキープすること。それが愛犬の健康は勿論、気質にも大きな影響を与えている」と。

ですので、自然な体勢を保てる形で抱くことは、犬の足腰を守るためにとても大切です。飼い主さんからたまに聞かれることがありますが、スリングは体にかなり負担がかかるため、やめたほうがいいです。そして愛犬が歩ける場合は、極力抱っこせず、地に足をつけさせるのが一番効果的です。


 

今井先生に、愛犬の足腰に負担のかからない抱き方をご教授いただきました。こちらは ❝専門家に聞く!愛犬のヘルニア予防のために飼い主がすぐに実践できること(2)❞ にてご紹介させていただきます。

急性膵炎 ~突然愛犬を襲う、大きな痛み~

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックス スムース

病名・症状:急性膵炎・嘔吐を繰り返す

発症年齢:17歳5ヶ月

発症の経緯:いつも通りの生活の中突然発症

治療法:ICU入院→点滴・投薬

 

 

自分で自分の内臓を消化しようとする怖い病気

 

ある日突然愛犬が嘔吐を繰り返し、明らかに異常な見た事のない様子を見せる。
あなたが目の前でその様子を見たら、ただただ困惑するばかりでしょう。
私もそうでした。

それは、本当に突然の事でした。
愛犬のMackが、1時間に3度4度と嘔吐を繰り返し、それまで聞いたことのない、悲痛な力無い声で鳴き続けました。
何の前触れもなく、本当に突然の出来事でした。
見た事のないMackの様子に異常を感じた私はすぐに救命救急へ駆け込みました。

救急へついてもなお悲痛な鳴き声は収まりません。
すぐに検査室へ呼ばれ、血液検査とレントゲンを受けました。

結果は「急性膵炎」……それまで聞いたことのない、未知の病名でした。
別名、「お腹の火傷」とも呼ばれるその病は、激しい痛みを伴う恐ろしい病でした。

 

【急性膵炎】きゅうせいすいえん

 

膵臓の中の膵液が様々な理由で過剰に活性化。
自分で自分を消化しようとすることとそれに伴う炎症反応により、激しい腹痛を起こす。
重篤な場合多臓器不全に発展したり、痛みによるショック症状を起こす。
また心臓や血圧に負担がかかり、そのまま心停止することもある。

 

 

Mackの場合

 

脂肪分を多くとりすぎたなどの起因がありますが、Mackの場合、救急の担当医師は「断言はできないが、甲状腺異常が起因だろう」と言われました。
Mackは甲状腺機能低下症により、薬を服用していました。

そして、この時のMackの膵炎はというと、急変してすぐに病院へ駆け込んだことが功を奏し、異常はあるが炎症値は低いとのことで、担当医からは「今はこれしかできることがない」と注射と点滴を受け、一度帰宅しました。

夫からは「まずは無事に帰宅できたことを喜ぼう」と言われましたが、その時の私は「Mackが死んじゃったらどうしよう!私があげたご飯のせいかもしれない!居なくなったらどうしよう!」ということばかり考えてしまい、動転して泣くばかりでした。

 

帰宅してから、しばらく落ち着いていましたが午前3時を過ぎた頃、薬が切れたのでしょう、また悲痛な鳴き声をあげ始めたので、再び救急へ駆け込みました。
その時は痛み止めの注射のみを受け、朝一番にかかりつけ病院へ向かいました。

 

 

跳ね上がる炎症値・・・即入院

 

かかりつけに着くと、救急から話が来ていたので、すぐに血液検査を受けることになり、結果は炎症値がとても悪いとのことで、即入院となりました。

 

入院時血液検査結果

 

 

家へ帰る道中、夫の運転する車の中、私は子供のように泣きじゃくりました。
「Mackが居なくなったらどうしよう」……頭の中は、昨夜調べた膵炎の中の記述”死亡することもある”という一文が頭の中に大きく現れ私の思考を支配していました。
入院当日から最初に面接に行くその日まで、私は何をするにも手がつかずひたすら泣き続けていました。

面会したその時、Mackは力強い目で私を見上げ、力を振り絞り吠えました。
「姉ちゃん僕を連れて帰って。僕治すから!」
そう言っている気がして、私はその日以来泣くのをやめました。

愛犬の頑張りを目の当たりにして、死を恐れて泣くことは、その頑張りを否定してしまうような気持ちになったからです。

その後、約二週間点滴と投薬を受けながら入院。
入院した晩は徐脈になり、先生が「危険な状態」と電話をしようと悩んだほどだったそうですが、なんとか帰宅することができました。

 

退院後血液検査結果

 

膵炎は、想像を絶するほどの腹痛を伴うと言われている病です。
慢性になることもありますから、特に老犬期に入った愛犬には、食事を見直す、人間の食べ物は与えないなど、気を付けてあげてください。

Mackの場合、成分表示をかならず確認するようになりました。
脂肪分表記を必ず確認、5,0%以下のもののみを与え、手作り食の際には笹身・サツマイモ・ジャガイモなど、消化にやさしい低脂肪なものを主に与えていました。

愛犬の食の安全を守ってあげられるのは、飼い主さんだけですからね。

 

ハイシニア犬(老犬)の飼い主が思う、犬が病気になった時に大切な「3つのこと」

 

犬と暮らす人にとって、パートナーが病気になってしまうのは本当に悲しくて辛いことです。できることなら自分が変わってやりたい、と思う飼い主さんも多いのではないでしょうか。

愛犬は、10歳を超えた頃から、目に見えて体の衰えを感じたり、病院のお世話になることが増えてきます。そして歳を重ねるごとに病気になってしまうリスクは高まります。

わたしはSNSを通じて、たくさんの飼い主さんと知り合うことができました。その中には、愛犬と共に大変な病気と闘う飼い主さんもたくさんいらっしゃいました。

今回は、そんな愛犬の病気と闘う飼い主さんたちが共通して感じている《愛犬が病気になってしまった時大切だと思う3つのこと》を書こうと思います。

 

 

自分が信頼できるかかりつけ病院を見つけること

 

愛犬のための病院選びは、とても重要なことです。

わたしはこれまでに病院を数回変わっています。今通っている病院の先生はたくさんの経験をお持ちで、最新医療を取り入れておられるとても進んだ病院です。その前に通っていた病院は、大学病院で長年経験を積まれた外科治療に定評のある方でした。

しかし、それ以前に通っていた病院は、根本治療でなく症状を抑えるだけ(歯が腫れている時にステロイドで腫れを抑える等)の処置がメインでした。その頃はまだ愛犬も若く、命に関わるような病気でなかったので、不安になることはありませんでした。

4年前、当時14歳の愛犬クリンが胆泥症と診断された時、「手術しないと助からないかもしれない」といわれました。担当の先生はこの手術の経験がないため、「他の病院からわざわざ先生を呼んで、この子の手術をしてもらうから大丈夫。でも麻酔のリスクは半々なので命の保障はないし、麻酔に耐えられなかったら仕方がない」といわれたんです。

実はこの少し前に、我が家の次女、ニコの乳腺腫瘍の手術をしていました。その際に避妊手術も同時に受けたのですが、手術後に請求された手術費用は、当初聞いていた金額のおよそ3倍でした。理由は、子宮に水がたまっていて避妊手術ではなくなったから、というものでした。それならそうと費用についてもう少し詳しく話をしておいて欲しかったと、思っていた矢先の出来事でした。

手術をしないといけない。でも麻酔のリスクは半々なので、ダメだった時は仕方ない。自分はこの手術をしたことがないから、他の先生をあなたのためにわざわざ呼んであげるのだから、手術しましょう…と。

正直その時、ものすごく違和感を感じました。難しい手術で、麻酔で命を落とすかもしれない。それでも手術しないと助かりませんから、わざわざあなたのために先生を呼んであげるんだから、手術するしか手はないですよ。あなたのためにわざわざ他からこの手術ができる先生を呼んであげるんだから、という部分を強調した話だったんです。

 

愛犬が何かしらの病気であると宣告されると、多くの飼い主は大きなショックを受けます。だからこそ、どうすれば治るのか、またどんな治療法があるのかを聞き、その上で納得して選択したい。それなのにこの先生は、こちらの意向を考えず、とにかく手術を受けさせようとしているとしか思えなかったのです。

大事な我が子が病気の宣告をされ、しかも死ぬかもしれないといわれてるのに、他から先生を呼んで手術するから大丈夫という話をされても、ぜんぜんありがたくないし、手術以外に治療法はないのか、と思いました。

 

不信感を持ったわたしは、自らセカンドオピニオンを申し出て、他の病院で診てもらいました。そこでは、図解で今の状態を説明してくださり、治療法についてもいくつか提案してくださいました。

胆泥症を見つけてくださったのはとても感謝しています。でもやたらと手術を勧めてくるところに「助けたい手術」というよりも「商売としての手術」ではないのかと感じてしまったのは事実です。

 

獣医さん選びについては、多くのベテラン飼い主さんから同様の話を聞きました。飼い主と相談しながら治療方針を決めてくれる、質問や不安に思うことについてきちんと説明してくれる病院でないと、何よりも大切な愛犬の命を預けることはできないと考えています。

 

 

 

薬はご飯と分けて与える

 

愛犬が元気なうちは、ご飯もパクパク食べてくれるし、薬を処方されてもご飯の上に乗せてしまえば大抵普通に食べてくれます。ところが、これがずっと続くとは限りません。

薬の中にはとても苦いものもあります。最近はペットも人間と同じ薬を処方されることがありますが、その場合体重に合わせて錠剤をカットして与えたりします。苦い薬は甘いコーティングの糖衣錠タイプが主流ですが、カットされていると断面図は薬がむき出しになり、その部分を舐めてしまった時かなりの苦味を感じます。

薬=苦いことが一度インプットされてしまうと、薬を嫌がるだけでなく、薬が仕込んであるご飯そのものを嫌がってしまうことにもなりかねません。

これは我が家でもそうですが、多くのシニア犬の飼い主さんからも同様の話をいくつも伺いました。

投薬の際には、投薬専用のおやつ投薬補助食品等を使うことを強くお勧めします。たとえ食いしん坊の子であっても、年齢と共に食べムラや食い渋りが出ることがあります。ほんのささいなきっかけであっても、それで食べなくなってしまうと、それこそ投薬も一苦労になります。うちはこれで本当に苦労しましたし、今でも薬に対する不信感をぬぐうことはできません。

 

病気を治すために薬は必要なもの。でも薬を与えることより、薬を混ぜたせいでご飯を食べなくなってしまい、結果体力を失い、危険な状態になることの方が大問題なのです。薬で大きな失敗をしてしまった経験者として、薬とご飯を分けて与えることを強く強くお勧めします。

 

 

「笑顔」と「言葉」は最高の治療薬

 

わたしの知っているハイシニア犬の飼い主さんたちが口をそろえて言うこと、それは、飼い主の「笑顔」と「言葉」は、愛犬にとって何よりも大切だということです。

愛犬の病気を嘆いてずっと泣いていると、愛犬は飼い主さんのことが心配で不安になってしまいます。犬ってわたしたちが思う以上にいろんなことを感じ取っているものなんですよね。

愛犬にとって一番安心できるのは、飼い主さんの笑顔です。大好きな飼い主さんが笑顔でいるだけで、愛犬には生きる力がみなぎります。それほど笑顔には、とてつもない力があると実感しています。

 

そしてもうひとつ、とても大切なことがあります。
愛犬にたくさん「声」をかけてあげることです。

「大丈夫だよ」「心配ないからね」「ずっとそばにいるからね」

優しく触れながら声をかけると、愛犬はとても安心した表情になります。

飼い主は愛犬が病気になると、心配で夜も眠れなくなったり、元気のない姿を見て涙を流すことも多いと思います。犬は口がきけないため、どうしてほしいのか確認することもできません。痛いのかもしれない、辛いのかもしれない…そう思うと悲しくてやりきれない気持ちになってしまいます。

ですが、そんな時こそ、笑顔で優しく愛犬に語りかけてあげて、愛犬の不安を取り除いてあげることが大切だと思うのです。

 

犬は素直で賢くて、とても勘がいい生き物です。だから飼い主の気持ちはすぐにばれてしまうんですよね。焦ったり不安になったりイライラしたりすると、それはそのまま愛犬に影響してしまうことがあります。

わたしも愛犬クリンが食べムラでなかなか食べられない時、薬を飲んでくれないことで病状が悪化するのではないか、と気が気でなく、無理に食べさせようとしていました。その結果、クリンはご飯の時間そのものがストレスになってしまい、余計に食べなくなってしまったという経験があります。飼い主に気持ちの余裕がなくなってしまうと、愛犬に大きなストレスを与えることになりかねません。

 

もし愛犬が病気になってしまったら、わたしはこの3つのことを気をつけるようにしています。特に3つめはとても効果があります。クリンが元気のない時は、いつも耳元でこう囁いています。

 

「クリンは絶対に大丈夫。もっともっと元気になるし、ご飯もいっぱい食べられるよ。」

 

 

 

 

【犬の老化チェックリスト】そのしぐさ、大丈夫? 10のチェック項目でわかる「犬の老化」のサイン

いつまでも元気でいてほしい大切な愛犬。

残念ながら、わたしたちと同じように愛犬も歳を取ります。老化は少しずつ進行するため、毎日一緒に過ごしていると見過ごしてしまい、ある時ふと「あれ?いつもと違う」と気づくことが多いと思います。

まずは下のチェックリストで、日頃の愛犬の様子をチェックしてみてください。

 

 

【チェックリスト】愛犬の老化度チェック

 

▢ ご飯は1分くらいで完食する

▢ 固いガムやおやつなどを喜んで食べる

▢ 飼い主さんがいる間はほとんど起きている

▢ 飼い主さんが動くと、寝ていても必ず起きる

▢ ぼーっとしている時間はほとんどない

▢ 運動した後でも足がもつれたりすることはほとんどない

▢ お散歩は10分以上止まることなく歩く(走る)

▢ ソファーやテーブルの上に平気で飛び乗る(飛び下りる)

▢ 足を崩さずにお座りの姿勢がとれる

▢ 自分の体高くらいの段差でも躊躇することなく歩く

 

 

実はこれ、1~10歳頃までは、病気やケガなどがなければ、どの項目も問題なくチェックできる質問なんです。ですからチェックがつかない場合=老化が始まっているかも、ということなんです。

老化は一気に進むものではありません。日々少しずつ少しずつ衰えていき、今まで当たり前にできていたことがある時できなくなり、その変化に気付いた時、飼い主さんは愛犬の老化を実感することが多いのではないでしょうか。

では、上記10項目について、1つずつ解説していきます。

 

 

各項目の解説

 

▢ ご飯は1分くらいで完食する

犬はほとんど丸飲みでご飯を食べます。なのでご飯を食べるのにさほど時間はかからないのです。噛まずに飲み込めるというのは若い証拠で、年齢を重ねるにつれ、少しずつ飲み込む力が弱まります。一気に飲み込めなくなるため、食べるのに時間がかかってしまうのです。

 

▢ 固いガムなどを喜んで食べる

犬には虫歯はないそうですが、歯周病にはなります。固いガムを食べることができるのは、顎の力が強いことと、歯がしっかりしているから。噛む力は年々弱まってきますので、顎に力がなくなったり、歯に不具合が生じると、ガムを噛む時間が長くなったり、食べられなくなったりします。

 

▢ 飼い主さんがいる間はほとんど起きている

犬は飼い主さんが大好きです。大好きな飼い主さんと一緒の時間は至福の時。飼い主さんの一挙手一投足が気になり、飼い主さんの行くところを目で追ったり、後追いしたり。でも歳をとると、少しずつ睡眠時間が長くなってきます。飼い主さんがいるにもかかわらず、寝ている時間が長い場合は、それだけ睡眠時間が長くなった=老化が始まったといえます。

 

▢ 飼い主さんが動くと、寝ていても必ず起きる

犬は浅く眠ることが多く、ほとんど熟睡しないといわれています。飼い主さんが動くと気配を感じ、パッと顔を上げて飼い主さんを見たりしますが、これも若い証拠です。年齢と共に、眠りが深くなるのか、ぐっすりと寝ていることが多くなり、飼い主が動いても眠ったまま起きなくなることが多くなります。

 

▢ ぼーっとしている時間はほとんどない

飼い主さんと一緒に過ごしている時は、犬は飼い主さんのことで頭がいっぱいです。飼い主さんのことをまるで見張ってるかのようにじっと見つめていたり、飼い主さんにおもちゃで遊んでほしいとねだったり、落ち着きなく動いたりしていることが多いですが、耳が衰えてきて聞こえにくくなったりすると、今まで反応していたことに反応しなくなったり、ぼーっと宙を見つめたりする行動が出てきます。

 

▢ 運動した後でも足がもつれたりすることはほとんどない

犬は運動能力がとても高い動物です。ドッグランにいって散々運動した後も、平気な顔でお散歩に行くことができます。ところが足腰が弱くなってくると、足(特に後足)がもつれたり、しりもちをついたりすることも。後足がもつれたりするのはヘルニアの可能性もありますので、注意深く観察してあげた方がいいでしょう。

 

▢ お散歩は10分以上止まることなく歩く(走る)

犬は散歩が大好き。排泄や他の犬の匂いを嗅いだりする時間以外はほとんど動いています。ところがシニアになると、散歩の途中で急に立ち止まったり、歩くスピードが遅くなったりすることが出てきます。続けて長い時間歩くことができなくなったのは、足腰が衰えてきたサインといえます。

 

▢ ソファーやテーブルの上に跳び乗る

ソファーが大好きな犬は多いと思います。少し背が高くてふかふかのソファーは、家族みんなを見渡せるし寝心地はいいし、最高の場所ですよね。またいたずら好きな犬はテーブルの上に飛び乗ったりすることもあります。しかし足腰が弱ってくると、それまで平気で飛び乗ったり下りたりという行動がしづらくなってきます。最初は1回で飛び乗れていたのに、乗るまでに数回かかるようになったり、飛び降りた時に踏ん張る力が弱まり、前につんのめるようになったりします。

 

▢ 足を崩さずにお座りの姿勢がとれる

たまに横座りのくせがある犬もいますが、背筋をまっすぐにした体勢でお座りができるのは、背筋がしっかりしている証拠。足を崩してしまうのは、筋力の低下も原因のひとつ。今まで背筋をまっすぐにしてお座りできていた子が横座りするようになったら、筋力の低下が疑われます。

 

▢ 自分の体高くらいの段差でも躊躇することなく歩く

若い時は平気でひょいと飛べていた段差でも、歳と共に飛び越えるのが一苦労になり、自分の体高の半分くらいの段差でも躊躇するようになります。犬は後肢から衰えが始まります。段差を飛び越えるために後肢を踏ん張る体勢を取りますが、年齢と共に踏ん張れなくなり、足が上がらなくなってすり足のような歩き方になっていきます。更に老化が進むと、前足も上がりづらくなってきます。

 

 

少しでも長く身体機能を保つために

 

これ、一般的に言われていることでもありますが、すべて自分自身が経験したことでもあります。

うちの愛犬クリンは、13歳で散歩の途中で急に立ち止まるようになり、14歳で持病持ちになり、15歳でソファーに飛び乗れなくなり、16歳で足がもつれるようになりました。

18歳の今は、部屋の中を歩いている途中でしりもちをつくこともあります。目もほとんど見えていないようで、壁にぶつかってしまうこともあります。

以前は、寝ていてもわたしが動くとすぐに起き上がっていたので、「この子はわたしといると安心できないのだろうか」なんて思ったこともありましたが、今は先にわたしが起きても熟睡しています。

犬は人の4倍ほど早く歳をとります。わたしたちの時間の感覚よりもずっと早く、犬の時間は過ぎています。老化を止めることはできませんが、少し気をつけて見てあげることで、身体機能を長く保つこともできます。

足腰が衰えてきたら、段差などに気をつける、フローリングなど滑りやすい床は滑りにくいようカーペットを敷く、ソファーは階段やスロープをつける。

ご飯が食べにくいようであれば、ご飯を食べやすくするため台の上に載せたり、小粒サイズにしてあげたり、お湯でふやかして柔らかくしてから与えてあげると食べやすくなります。また歯に不具合がないか、お口の中をチェックして、もし歯石などがついていたら、獣医さんに相談するのがおすすめです。獣医さん曰く、歯のケアをしている子は長生きするということでした。

身体機能を長く保つには、やはり日頃のケアが一番効果的だと思うのです。

大切な愛犬には、少しでも長く、元気で健康に過ごしてほしいもの。老化のサインに気付いたら、それは生活習慣を見直してあげるタイミングなのかもしれません。

犬の様子は日々変わります。愛犬の老化はあっという間にやってきます。昨日まで当たり前にしていたことが、今日はできなくなっているということもあります。

そして、犬は誇り高いため、できないと思った瞬間に諦めてしまい、そのままどんどんできなくなっていくということも考えられます。

愛犬の変化に気付いてあげられるのは飼い主さんだけです。できるだけ長く身体機能を保てるよう、共に頑張りましょう。