【老犬・シニア犬の食欲不振】年齢と共に変わる食い渋り・食欲低下の悩み①

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:食べムラ・食い渋り・食欲不振・食欲低下

発症年齢:15歳~

発症の経緯:投薬の失敗~加齢による食欲低下

治療法:自宅での工夫

 

 

飼い主の精神的負担が大きい愛犬の『食べない悩み』

2019年2月撮影 ご飯を食べさせていたキッチンにて。口の周りにいっぱいご飯をつけて冷蔵庫に激突していたのでたくさん跡がついています。

 

我が家の長女クリンの「食べない悩み」が出始めたのは、15歳の頃からでした。ある日突然前足の不具合が出始め、病院でもらった痛み止めの薬を食べ物に隠して無理やり飲ませようとしたことで、《食べること=苦い薬を隠されている=嫌なこと》と認識させたことがきっかけでした。

以来クリンが旅立つまでの約4年間、毎日食べムラ・食い渋り等の「食べない悩み」がありました。食事に関する悩みは歳を重ねるごとに少しずつ変化し、18歳を超えてからは「うまく食べられない悩み」が出始め、19歳を少し迎える前あたりからは、今度は「うまく口に入れられない悩み」になり、「うまく飲み込めない悩み」に変わっていきました。

うちの場合、食事に関する悩みにも段階がありました。今回は、時系列で実際に起こったことや、どのように対処したかをお話させていただきたいと思います。

 

 

その①:食べない悩み

2015年撮影。食べムラ・食い渋りがひどく痩せていた頃。

 

クリンが15歳の時に、食べ物に薬を隠したことがきっかけでご飯を食べることに対して躊躇するようになり、それからクリンが旅立つ19歳までずっと「ご飯を食べさせること」がわたしの毎日の悩みの種になりました。

 

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クリンが14歳の頃から1日2回2種類の薬を飲むようになりました。最初はご飯の上に薬を載せて何の問題もなく完食してくれていましたが、15歳の時に痛み止めを無理やり口に入れて飲ませようとしたことで、薬は苦いものだとインプットされ、以降薬と口を触られることを拒否するようになりました。

それでもトッピングの工夫で食欲を刺激したり、好きなものを探してそれを食欲の呼び水にすることで、何とか食べさせることができていました。

 

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同じく15歳の頃に見つかった子宮の不具合により、子宮に慢性疼痛があり食欲が落ちてしまっていたことが転院して初めてわかりました。約2年間内科治療をしていたことが、結果こじらせてしまうことになりました。当時の主治医の先生に対処療法で逃げる治療を勧められたこと、年齢的に積極的治療はやめたほうがいいといわれたこと、わたし自身外科治療が怖かったことなどから、結果クリンも自分も苦しむ結果となってしまいました。

転院し、初めて診察してもらった時にすぐ子宮の痛みがあることがわかり、見つかった時にすぐに手術をしていたらもっと早く改善していたかもと言われた時、早く転院すればよかったととても後悔しました。年齢的に外科治療を選択できないと思い込んでいたんです。病院・先生によって治療の選択が違うということを、この時実感しました。

すぐに手術を決意し、子宮摘出手術を受けたのは17歳9ヶ月でした。

食べない原因がはっきりしている場合は、それを改善することで食べてくれることもありますが、病気が原因の食べムラ・食い渋りや食欲不振も考えられます。

また、わがままも考えられます。いつものフードを食べないからと、様々な種類の食べ物やフードを次から次へと出してしまうと、「今我慢したらもっとおいしい物が出てくる」と学習してしまい、食べなくなることもあります。

食べない原因が体のどこかにあるのか、ただのわがままなのか、食べなくなってしまった原因に心当たりがあるかなどを見極めることが、食欲不振・食い渋りを改善するために必要だと考えます。

 


食べない原因は何か

・食事で嫌な思いをしたことはないか

・食べない時に新しいフードや食べ物を次々と出したことはないか

・食べない時に病院で検査(血液検査・エコー等)を受けているか

・歯の痛みや歯石など、口の中に原因はないか

 

 

その②:うまく食べられない悩み

 

15歳になるまでは、毎日ではないものの口の中のケアはガーゼや専用の指サックなどで拭きとっていたので、歯石以外はさほど大きな問題を感じることはありませんでしたが、一切口を触らせてくれなくなってから、あっという間に歯石だらけとなってしまいました。特に上の奥歯がひどく、歯石が頬側に飛び出してずっと当たっている状態でした。

17歳9ヶ月で手術を受けましたが、その際歯石取りと抜歯も合わせてお願いしました。

優先順位は子宮摘出⇒歯石取りということでしたが、歯石除去とぐらつきのあった歯を1本抜歯してもらうことができました。

病院では子宮の痛みがなくなれば食欲も戻るだろうし、口の中がきれいになったら食べやすくなるだろうとのことでした。術後5日目にやっとドライフードを食べるようになり、食欲もどんどん戻ってきました。麻酔の影響でそれまで問題のなかったヘルニアの痛みが出始めましたが、手術前よりもクリンの食欲は安定しました。食べ始めの食い渋りはあるものの、まるまる1日何も食べないということはなくなりました。

 

 

その③:機能低下による嚥下・咀嚼の悩み

 

クリンは年齢の割には機能を長く保てていたと思います。18歳になっても自力で走っていましたし、ご飯も食い渋りはあるものの、パクパクと食べてくれていました。

ところが、18歳半を迎えた頃から、目に見えて機能が低下していきました。

まずは視力の低下でした。それまではうっすらと見えていたようで、アイコンタクトもできていましたが、少しずつできなくなり、いつのまにかできなくなっていました。

次に筋力の低下。最初はしりもちをつくようになり、次にコロンと転ぶようになりました。そして前足がガクンとなりつんのめって顎からこけることがありました。そして転んだ後になかなか起き上がれなくなりました。

そして嚥下障害。それまでは超小粒のフードをそのまま食べていましたが、術後からフードを半分~1/3くらいにカットして与えていました。ところがその粒を全部飲み込むことができず、口の中に残ってしまうようになりました。

この頃は食欲不振が見られたらシリンジ食を与えていたんですが、以前は嫌がりながらも飲み込んでくれていましたが、口の横から漏れてうまく飲み込めないということも見られました。

それまでは好きなトッピングを準備して、一度食べてくれたらその後は最後まで食べてくれていましたが、嚥下障害が出始めてからは、途中で食べることをやめてしまい、あとから確認すると口の中にフードが残っているということも見られました。

クリンはそれまでふやかしたフードを拒否していたので、ドライフードを砕いてジャーキー等をすりおろして上にふりかけて食べさせるのが定番でしたが、この頃からは牛乳や鶏ガラスープなどの水分を一緒に与えるようになりました。

フードはフードプロセッサーで粉状になる手前くらいのかなり細かく砕いた状態にして、できるだけ飲み込みやすい状態にし、ご飯を食べた後の投薬時にシリンジで頬側を水で流すようにして、口の中に食べかすが残らないように気をつけていました。

年齢と共に機能が低下するのは当たり前のことですが、クリンに関していえば、18歳半を境に一気に落ちていったように思います。筋力を維持できるよう、日に数回のお散歩とバランスディスクは欠かさず行っていましたが、足の筋力が落ちるのと同時に体の機能もどんどん落ちていきました。

 

 

【老犬・シニア犬の食欲不振】年齢と共に変わる食い渋り・食欲低下の悩み②に続く

 

 

ライター:福井 惠子

 

 

【シニア犬の食事】老犬(高齢犬)の食べさせ方の工夫

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:老化によりご飯がうまく食べられなくなった

発症年齢:18歳半~

発症の経緯:老化による視力・嗅覚の低下

治療法:自宅ケア

 

 

目に見えて進む老化現象

 

我が家の愛犬クリンは、先日19歳1ヶ月の生涯を終えました。

クリンはとても丈夫で、14歳の時に胆泥症が発覚するまでは持病もありませんでした。

ところが、投薬の失敗がきっかけで「食べムラ」「食い渋り」に悩むようになりました。体調不良が重なり入院した時は、食べなさ過ぎてこのままだと危ない、とまでいわれたこともありました。

若い頃は1日食べなくても問題ありませんが、老犬にとっては一大事。食べないとすぐに痩せてしまい、体力が落ちてしまいます。

食事は毎日のこと。どうしたら食べてくれるか、日々悩み続けました。先輩飼い主さんからアドバイスをいただいたり、いろんなフードを試したりしながら、何とか食べてくれるようになりました。

体の不具合が治まり、かなり食欲も改善され、食べない悩みから少し開放された18歳半を超えた頃、新たな悩みが生まれました。

今までは「食べたくないから食べない」だったのが、「食べたいけどうまく食べられない」に変化していたのです。

今回は、クリンがご飯をうまく食べられなくなった時に実践していた「食べさせ方」を紹介させていただきます。

 

 

徐々に衰える機能

 

クリンは18歳を迎える前までは目が見えていました。当時は自宅前でノーリードで運動をさせていましたが、一目散に飼い主に向かって走ってきてくれていました。

毎日お散歩と自宅前での運動を続けていました。ヘルニア予防のため、大きな段差は避けていましたが、小さな段差はあまり気にしたことがありませんでした。

ところが、ある日いつものように自宅前を走っていた時、玄関前のほんの数センチの段差につまづいたことがありました。それまでは段差前で止まっていたんです。

それからどんどん視力は低下し、18歳半を迎える頃には、うっすら光を感じる程度にまで視力は低下していたようです。

視力と共に、嗅覚も低下していきました。今まではおやつなどを近づけると、鼻をクンクンする仕草を見せていましたが、この頃になると鼻先につけないと気づかなくなっていました。

視力・嗅覚が衰えると、食事をするのも大変になりました。

それまではお皿にフードを入れて、高さ調節してやればご飯を食べてくれましたが、目も鼻も利かなくなると、ご飯がどこにあるかがわからなくなり、同時にうまく距離感を測れなくなっているようでした。

ご飯を食べたくても、お皿に顔をうまく近づけることができなかったり、鼻をお皿で強打してしまうこともありました。

年齢と共にわがままに頑固になってきたこともあり、些細なことでもご機嫌を損ねると食べなくなりました。

このあたりから、うまく食べられるようにするにはどうすればいいかを考えるようになりました。

 

 

食べさせ方①:ご飯の場所を確認させる

 

食べムラ・食い渋りでご飯を食べさせることにとにかく苦労していたので、食事はまずは食いつきのいいトッピング用のジャーキーや肉などを先に食べさせるという方法をとっていました。

器を2つ用意し、1つの器に先にジャーキーなどをおろし金ですりおろします。もう1つの器に、ドライフードを準備し、その上にジャーキーをすりおろしたものをふりかけ、全体を混ぜ合わせておきます。

そして、食事台の前にクリンを座らせ、2つの器を床にセット。まずすりおろしジャーキーの器を手に取り、クリンの鼻に器の中にあるジャーキーを近づけます。その時に少し鼻先にジャーキーをつけると、たいていペロッと舐めてくれます。

クリンの場合、ペロッと舐める=今日はこのジャーキーを食べる、という合図だったので、すかさず器をクリンの口元に持っていき、今度は口先にすりおろしジャーキーを少しつけると、そのままペロペロと食べ始めてくれました。

そのまま少しずつ器を降ろしていき、食事台のところまで誘導します。この時クリンはずっとジャーキーを舐めています。

台の上にセットできたら、もうひとつの器に準備していたフードを、ティースプーンで横からそっと入れていきます。

フードに絡めるジャーキーを多めにしておくと、器のすりおろしジャーキーからジャーキーまみれのフードに変わった時に、比較的違和感なく食べてくれます。

ジャーキーを食べているつもりが、いつの間にかフードに変わるんですが、先にジャーキーの味がするからか、この方法だと比較的うまくフードを食べさせることができました。

ただしひどい食い渋りの時は、フードとわかったらすぐに逃げていました。逃げられた時はめちゃくちゃガッカリしたものです。

 

 

食べさせ方②:汁物を使う

 

最初は①の方法で問題なく食べることができていましたが、今度はうまく飲み込めないという悩みにぶち当たりました。人間でも固いものがうまく食べられなくなったり、喉に詰めてしまうことがありますが、犬もまったく同じでした。

特にドライフードは口の中の水気をとってしまうのか、もさもさしてとても食べにくそうにしていたので、鶏ガラ・ささみ等を水煮にしたスープや、牛乳(クリンは牛乳が大好きで、下痢もしなかったためずっと使っていました)を一緒に与えるようになりました。

これもやり方は①と同じで、先にスープまたは牛乳を入れた器を口先に近づけ、飲みだしたら少しずつ器を下げ、食事台にセットできたら、横からフードを少しずつ入れていきました。

この方法も結構うまくいきました。

 

 

食べさせ方③:スプーンを使う

 

クリンが18歳8ヶ月の時、頸椎ヘルニアが発覚しました。それまでは食事台の上に置いた食器に顔を近づけていましたが、ある時から器に顔を近づけなくなりました。食事台に誘導しようとしても、下を向かないため、フードに誘導するのが難しくなりました。

そして飲み込む力がさらに落ち、4mmほどの超小粒フードもうまく食べられなくなっていました。この頃からフードプロセッサーで細かく砕いたフードを与えていました。(クリンはお湯でふやかしたフードは食べませんでした)

器を顔に近づけたいのですが、下を向いてくれないため、器からこぼれてしまいます。

この時に使用したのがティースプーンでした。

この頃はスープか牛乳がマストだったので、ティースプーンでスープまたは牛乳をすくい、それを口元まで持っていきます。

クリンは水頭症があり、首を反らせる仕草が見られたため、最初の一口を飲ませるコツをつかむまでは結構大変でしたが、ペロッと舐めてくれると、その後は少しずつ首をおろして飲んでくれました。

最初は水分をティースプーン3~4杯くらい飲んでもらいます。そしてスープの器に砕いたフードを入れて、今度はスープ+ほんの少し砕いたフードが浮いた状態のものを飲ませるようにしました。

スープと思って飲んだものに、異物(フード)があるので、最初に口に入った時は少し拒否反応のような仕草がありましたが、そのままスープと共に口に入れてくれたら、少しずつスプーンですくうフードの量を増やしていきました。食事が進むとフードはスープと混ざってドロドロになりますが、水気があるため食べやすいようでした。

この方法は、クリンが旅立つ前日まで実践していました。同じものばかりだと飽きるので、牛乳・鶏ガラスープ・ミキサーでスープ状にしたウェットフードなどでアクセントをつけていました。ウェットフードは、お湯や温めた鶏ガラスープをフードプロセッサーで混ぜ合わせていました。温かいとより匂いが立ち、とても食いつきがよくなりました。

事前にドライフードを測っておけば、食べた量の把握ができるため、食事の管理をしたい場合に向いている方法だと思います。

 

 

若い頃は当たり前に食べてくれますが、高齢になってからは「食べてくれることがとてもありがたいこと」になりました。クリンは食欲にムラがあり、余計に食べてくれるありがたさを実感することができました。

19歳を超えてからは、食べても全く太れなくなりました。でも食べないとすぐに体重は落ちてしまうため、最後の2ヶ月は1日の食事の回数は4~5回になっていました。

1回の食事でかかる時間は、うまくいくと5分。なかなか食べ始めてくれない場合は30分を超えることもありました。

約4年食い渋りに悩んでいたので、当時は食べないことにイライラしたり、本気で怒ったこともありました。

でも、その悩みがあったからこそ、食べてくれるありがたさが身に沁みましたし、スプーンからとてもおいしそうにペロペロとご飯を舐めている姿は、もう可愛くて可愛くて、こんなに食べにくくなっているのに一生懸命食べてくれると思うと、嬉しくて泣いてしまうこともありました。

残念ながら、もうクリンはいません。「今日は食べてくれるかな」と毎日ドキドキでしたが、その悩みもありがたいことだったんだとつくづく思います。

 

 

皆様のおうちの大切な我が子が、今日もおいしくたくさんご飯を食べてくれますように。

 

 

 

 

 

ライター:福井 惠子