【犬のセカンドピニオン】わたしが転院した理由(3)

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:胆泥症/子宮蓄膿症

発症年齢:14歳/15歳

発症の経緯:ヒート症状から食欲不振 陰部の腫れ

治療法:投薬治療(2年間)→17歳9ヶ月で手術

 

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驚きの診断内容

【セカンドピニオン】わたしが転院した理由(3)

 

初めて訪れたその病院は、今まで行ったことのないような雰囲気でした。

待合とつながった診察室。間仕切りのない診察台がいくつも並び、複数人のドクターと忙しそうに走り回るたくさんのスタッフの方たち。その中で、ひときわ大きな声で指示を出されていたのが院長先生でした。

初診で見ていただいた先生に、抗生剤投与しても8ヶ月CRPが下がらないこと、心臓の薬を飲んでいること、胆泥症であること、子宮水腫の治療をしていること、胆管肝炎と診断されたこと、わたしは歯が悪いのではないかと思っていること、2年以上食べムラに悩んでいることなどをお伝えし、持参した前の病院の検査結果などをお渡ししました。

まずはきちんと診断した方がいいということで、CT(無麻酔)とレントゲン、血液検査・心電図・血圧・エコーでの検査をすることになりました。

血液採取してCTとレントゲンを撮った後、院長先生が来てくださり、先生から状態の説明をしていただいた後、ちょっと触らせてとクリンの体を触られました。

「この子、子宮に痛みがあるよ。だからご飯食べないんじゃない?」

なんと1分もかからず、食べムラの原因を究明してくださいました。そして検査の結果、子宮はすぐに取った方がいいといわれました。

心電図の結果、不整脈があることがわかりました。そして中度の水頭症であることもわかりました。胆泥症は軽度でこのまま投薬でいいとのこと、そして重度のヘルニアであることがわかりました。

前の病院に行った3日後だったのですが、その時に2週間効く抗生剤を注射してもらっていたため、CRPは高いけどクリンの負担になるから2週間経ってからでないと何もできないといわれました。

痛みがあること、アリジンでの治療が2年続いていることなどから、もしかしたら子宮が癒着しているかもしれないこと、エコーで診た限り少し腫れがあるようなので、これ以上アリジンでの治療は効果が期待できないかもしれないこと、歯の状態がかなり悪いため、炎症は歯の可能性もあること、きちんと治療したいなら手術しかないことなどの説明を受けました。年齢的にももう猶予はないため、決断するなら早い方がいいといわれました。

そして、ものすごく分厚い本を持ってきてくださいました。それは獣医さん用の薬の辞典のようなもので、今まで使っていた薬をひとつひとつ説明してくださいました。

 

 

炎症の原因と術前の準備

【セカンドピニオン】わたしが転院した理由(3)

 

抗生剤には種類があり、どういった炎症に効くか、どの臓器に負担がかかるのか、薬の種類により効果がない炎症があるため、どこで炎症が起こっているかを把握して薬を選ばないと、効果はないのに臓器に負担だけがかかる、ということを教えてもらいました。クリンが受けていた2週間タイプの抗生剤は、歯には効かないタイプの抗生剤とのことで、8ヶ月間も下がらないところをみると、炎症は歯で起こっている可能性が高い、といわれました。

それまで原因のわからなかった炎症の原因に見当がついたことと、食べムラの原因がわかったことで、わたしの決心は固まりました。この先生にクリンの命を預けよう、そう心に決めました。

手術を受けることを伝えると、まずは2週間の薬が切れるのを待つこと、不整脈があるため、寝ている時に不整脈が乱発していると麻酔のリスクが高まるため、24時間心電図で事前に調べておくこと、そしてもしもの時の場合の処置ができるかどうか、血液の流れをよくする薬を投与し、状態を確認しましょうといわれました。

 

心電図の結果、不整脈はあるものの、大きな問題はないということでした。血の検査も問題なし。あとは手術の日を待つばかりとなりました。

「15歳で子宮水腫がわかった時すぐに手術をしておけば、クリンはこんなにしんどい思いをしなかったのかもしれない。」

この時に、選ぶ病院でここまで差があるということを痛感しました。

前の病院も決して悪いところではありませんでした。わたしの友人も何人か紹介しましたが、転院して命を救われた子もいました。もしかしたら、14歳でセカンドオピニオンを受けた時に「手術を受けるのが怖い」という入口だったから、手術をしないという前提になってしまったのかもしれませんし、手術に自信があるからこそ、できるだけリスクを避けてギリギリまで待つという方針になったのかもしれません。

 

まもなく18歳を迎える高齢の子に積極的治療を提案するのはかなりリスクが高いと思います。でもその病院では、15歳16歳で手術する子はたくさんいて、高齢での手術がはそう珍しいことではないとのことでした。クリンの胆泥症がわかった14歳の時、子宮の異常がわかった15歳の時、もしこの病院を知っていたらきっと治療法は違ったと思うと、心の底から後悔しました。

クリンは、最初に病院を訪れてから約3週間後の11月3日に手術を受けることになりました。年齢的にも急変に備え、他に手術が入っていない日でドクター2人体勢で手術をしてくださるとのことでした。

この日から、手術前日までは祈るような気持ちで過ごしていましたが、一方で転院してから食欲も旺盛になり、元気に過ごしているクリンを見て、「きっと大丈夫」そう思えました。

 

 

手術を受けてからの変化

【セカンドピニオン】わたしが転院した理由(3)

 

手術当日、抱っこされて手術室に向かうクリンを祈るような気持ちで送り出し、待つこと1時間。

先生からは「心臓の様子によって、歯の治療はできないかもしれない」と言われていましたが、無事歯石を取り、1本抜歯をしていただくことができました。

摘出した子宮も見せてもらいました。1ヶ所腫れている部分がありそこに痛みがあったのではないかということ、癒着はしていなかったこと、歯の状態は思ったほど悪くなかったけど歯石はかなりひどい状態でおそらく痛みもあったであろうこと、そして年齢的にも術後の急変も考えられる状況であるため、今日は終日病院で様子をみましょうといわれました。

 

クリンは麻酔の影響でぐったりしていましたが、1時間後には自力で起き上がりました。

【セカンドピニオン】わたしが転院した理由(3)

 

長い1日が終わり帰宅すると、足元はおぼつかないながらよたよたと歩いてくれて、クリンの生命力にとても感動しました。傷口が癒着してしまうためできるだけ動くようにといわれてたので、翌日からお散歩再開。傷口が突っ張るのか本調子ではないものの、クリンは走ろうとするくらい元気でした。食欲はなかなか戻りませんでしたが、術後4日目でやっとご飯を完食してくれました。術後初めてご飯を食べた時、「あれ?」という顔をしたんですよね。大きな歯石がべったりついていて、それが歯茎に食い込んで痛みがあったようだといわれていたので、きっといつもの痛みや引っかかりがないことに気付いたのだと思いました。歯石も食べムラの原因であったのだと思いました。

 

病院を変わってから、クリンに良い変化がありました。まずは食べムラ。それまでよりも明らかに食欲が戻りました。特に通院から帰宅した後はなぜか食欲が増していて、帰るなりガツガツと食べてくれることもありました。もしかしたら今の病院で痛みがあることを最初にわかってもらえて安心したのかもしれない。そう思いました。

実はクリンが下痢をしたので昨日も病院に行ったんですが、少し食べムラがあると伝えたところ、体を触ってすぐに❝ヘルニアの痛みが原因だと思うから、ヘルニアの注射と鍼治療をして痛みを取ったら食欲は戻ると思いますよ❞といわれ、治療を受けたところ、昨夜はしっかり食欲が戻りました。

 

犬は話ができませんので、飼い主は愛犬のしぐさや表情から推測するしかありません。前の病院はクリンにとって良い思い出がないのかもしれませんが、同じようなに嫌なことをされても痛い思いをしても、それでも震えたり嫌がったりすることはなくなりました。クリンはわたしに自分なりに伝えていてくれていたのだと思うと、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

 

 

飼い主だからこそできること

【セカンドピニオン】わたしが転院した理由(3)

 

手術を受け、クリンは今まで以上に元気になりました。今でも食べムラは多少ありますが、以前と比べるとかなりご飯を食べるまでの時間は短くなりました。体の悪いところをしっかりとわかってくださっていて、飼い主のわたしにもわかるように伝えてくださるので、本当に安心してお任せすることができます。

 

今の病院に移り、薬によって負担がかかる臓器が違うことや、症状に合わない薬を投与しても効果は全くないということを知りました。誤診で間違った治療を続けていても、症状は全く改善されず、ただ体に負担がかかるだけということも痛感しました。

そして、高齢であっても積極的治療ができるということを知りました。

 

わたしの友人は、愛犬の不具合である病院を訪れ、きちんと検査を受けないままに手術を受けました。そして開腹して何もできないまま閉じたそうです。手術を受ける前にはCTを撮るなど、病変をもっと詳しくみてからというのが一般的ですが、その病院ではエコーだけで手術に踏み切ったそうです。そして「うちでできることはない」と退院させられたそうです。

その病院はとても綺麗で、結構流行っているとのことでした。

 

今回の件で、わたしは知人からの口コミにとても救われました。もし情報がなければ、きっと病院を変わることはなかったと思いますし、今クリンと一緒に過ごせていなかったかもしれません。

 

ネットは情報が溢れています。口コミサイトもありますがほとんどは匿名で、中には自作自演のものもあると聞きます。リアルな情報かどうかも正直わかりません。そしてどの情報をチョイスするのかにより、結果は大きく変わってしまいますが、もちろんそれは自己責任。ネットは手軽ではありますが、発信されている情報がすべて正しいとはいえないんですよね。

だからこそ、愛犬家同士のリアルなつながりは大切だと考えています。

 

もし今、セカンドオピニオンを考えておられる飼い主さんがおられたら。

近所のドッグランに行って他の飼い主さんと動物病院の情報を交換したり、周りに犬を飼っている方がいない場合は、ネットで愛犬ブログをやっておられる飼い主さんを探し、コンタクトを取ってみるといいかもしれません。闘病を経験している飼い主さんは、情報の宝庫です。いろんなことを試されたり工夫されているので、お話を伺うだけでも参考になります。

なにより、愛犬家の皆さんはとても優しくて、とても親身になってくださいます。

 

どうかお一人で悩まないでください。必ず手を差し伸べてくれる優しい飼い主さんがおられますから。

 

 

ライター:福井 惠子

【犬のセカンドオピニオン】わたしが転院した理由(2)

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:胆泥症/子宮蓄膿症

発症年齢:14歳/15歳

発症の経緯:ヒート症状から食欲不振 陰部の腫れ

治療法:投薬治療(2年間)→17歳9ヶ月で手術

 

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初めての入院

 

クリンは2015年10月24日に入院しました。点滴の針を刺されて、冷たいステンレスのケージの中に入ったクリンを見ているだけで悲しくて悲しくて、やりきれない思いでいっぱいでした。

当初膵炎の疑いといわれてましたが、血液検査でリパーゼの数値が上がることはなく、おそらく膵臓と胆のうが合流しているあたりが炎暑を起こしているのであろうとのお見立てでした。

その病院は、先生が年中寝泊まりされているとのことで、何かあれば連絡をくださるとのことで安心して預けることができました。入院中はほぼ1日2回病院にご飯を持って通いました。点滴の針は入院して2日後に抜いてもらいましたが、全く食欲がない状態で、先生が強制給餌でフードを食べさせてくれていました。嫌がって暴れるクリンを無理やり押さえて食べさせるため、胸元はウェットフードでガビガビになっていました。

当時の自分には押さえつけて食べさせることはできませんでしたので、食べさせてもらえるだけでありがたいと思っていました。毎日薬を飲んで血液検査をしていましたが、CRPはなかなか下がらず、体重はとうとう3㎏を切り、2㎏台になってしまいました。

その時に先生から「死の宣告」をされました。

面会に行くと嬉しそうにこっちに来てくれるし、顔を見ていると元気そうだったんですが、これほどまでに食べない子はなかなかいないし、何よりも食欲がないという状態はとても怖い状態だといわれました。

相変わらず食べない日が続いていましたが、入院して1週間が経った頃くらいからようやく炎症数値が下がり始め、エコー検査は問題なし、血液検査も特に悪い数値は出ておらず、CRPが2を切ったら一旦退院しましょうといわれました。

 

ちょうど入院して2週間経った頃、病院のスタッフの方が「退院した方が食べるようになるのでは」と言ってくださり、CRPはまだ少し高めではありましたが、11月4日に一旦退院することになりました。

帰ってきたらびっくりするくらい元気になり、帰宅後はなんと2食もりもり食べてくれました。

とはいえ年齢的には決して楽観できないと思い、食べないと病院に行って点滴をしてもらう日々は続きました。ムラはあるものの、ご飯も食べてくれるようになり、ホッと一安心でした。

 

 

ヒートと陰部の腫れ

退院後は食欲も戻り、16歳の誕生日を元気に迎えることができました。体重も3㎏台になりました。

ところが5月になり、また強い食べムラが出始めました。ここから現在までの約2年近く、ご飯の時間になったら普通に食べに来てくれるということはなくなりました。そして、ヒートではないのに陰部が付いている部分が腫れるという症状が出てきました。(陰部が垂れ下がる感じ)

病院に行って診てもらいましたが、子宮の腫れはなく、点滴と抗生剤の注射をするだけで、なぜ陰部が腫れているかなどの話はありませんでした。その頃から少しずつ不信感が芽生えていましたが、ずっとお世話になっていることもあり、自分の気持ちにフタをするようになりました。

それからも陰部が腫れることはありましたが、時間と共に治まることもあり、それからはヒートのような症状が出たらアリジンを打って、食欲が落ちたら点滴をするという治療が続きました。

アリジンは、最初の時は目に見える効果がありましたが、2回目・3回目と回数を重ねていくごとに効果を感じることはありませんでした。ただ子宮蓄膿症を発症することもなく、なんとなく状態が安定していたので、その治療を維持していました。

そして2017年、17歳の誕生日月にワクチン注射と検診に訪れた時、血液検査でCRPが上がっていることがわかりました。

 

 

理由のわからない炎症

当時、食べムラと陰部の腫れ以外に気になることがひとつありました。それは「歯」です。

ご飯を食べた後などに、クッションなどにマズルをこすりつけるようなしぐさをよく見せていました。実際クリンの歯は歯石だらけで、奥歯の頬側には大きな歯石が固まりとなってべったりついていました。歯のケアをしたかったのですが、投薬の失敗からクリンは一切口周りを触らせてくれなくなっていたので、隙を見て唇をめくって状態を見るくらいしかできませんでした。

もう少し若ければ歯石除去をお願いしたかったのですが、年齢的に難しいと思っていたので、取れそうなところだけ取ってもらえないか病院で頼んだことがあるのですが、なかなかやってもらえませんでした。

 

CRPが上がっている原因は「子宮」だろうとのことで、アリジンと炎症を下げる薬を注射してもらいました。この時点で約3年通っていたのですが、最初の頃に比べて診療が雑になっているように感じていました。

「本当に子宮なのだろうか」と思っていましたが、言い切られてしまうとなかなかそれ以上聞けなくて、2週間効くタイプの抗生剤と点滴を打ってもらっていました。

ここから10月まで、ずっとこの治療が続きました。いつまでも下がらない炎症数値。血液検査をしても特に異常はなく、ただCRPが高いだけ。たまにこちらから子宮と胆のうの状態を見てほしいとお願いしてエコーで確認してもらうことはありましたが、大きな変化もなく、ヒートっぽい症状が出たりきつい食べムラが出たりするとアリジンを打って様子見していました。

 

 

8ヶ月間続く不調

 

8ヶ月にも及ぶ抗生剤投与と点滴。でも炎症数値は改善されず、下がっても1を切ることはなく、食べムラや食い渋りがひどくなることもありました。2月から数えると通院は20回を超えていました。

9月半ばに改めて炎症の原因について、先生に聞いてみました。エコー検査と血液検査を受け、先生の答えは子宮と胆のう炎ではないか、ということでした。そして自宅で皮下注射をする方法を提案されました。

もしかしたら歯が原因ではないかと思っていたので、歯を診てほしいということ、そして歯石もできる範囲でいいので何とかしてもらえないか、とお願いしました。

しかし、歯は診てもらえませんでした。理由は、「噛むから」でした。

実は転院してきてすぐの頃、クリンの歯石を麻酔なしでペンチのような器具で割って取ってくださったことがあったんです。それを見ていたので、簡単に取ってもらえるのでは、と考えていました。

長い治療の中でいろんな「嫌なこと」が積み重なり、クリンにとって病院そのものがストレスになっていたのだと思います。病院に行くととても嫌がるようになってしまっていました。

この時、これ以上クリンを診てもらうのは難しいと感じました。

実はずっと心のどこかで「このままではクリンは治らないかもしれない」と感じてはいました。でもそれまでの経緯や、入院した時にお世話になったから…重篤な状態の場合深夜でも連絡がとれるから…もし手術をすることになったらほかの病院では受けてもらえないかもしれないから…と、転院しない理由を考えていたんです。うちから車で10分かからない距離であったのも大きかったです。

 

この時のセカンドオピニオンは、わたしにとってはとても大きな決断でした。約3年間、ほぼ毎月のように通っていた病院で、クリンの状態を一番わかってくださっている先生だと思っていたので、気持ちの上でもかなり依存していたのだと思います。

でも今できることがあるならなんとかしてやりたい。病気でなく、自然に心臓が止まるその日までは元気に過ごしてほしい。そのためには、クリンの不調の原因を調べてくれる病院を探さなければ。

 

そして、SNSを通じて知り合った犬友さんが通われていたという、隣の市の病院に行ってみることにしました。

 

 

(3)に続く

 

ライター:福井 惠子

 

【犬のセカンドオピニオン】わたしが転院した理由(1)

愛犬情報

犬種:ミニチュアダックスフンド

病名・症状:胆泥症/子宮蓄膿症

発症年齢:14歳/15歳

発症の経緯:ヒート症状から食欲不振 陰部の腫れ

治療法:投薬治療(2年間)→17歳9ヶ月で手術

 

 

動物病院を選ぶ基準って?

 

我が家の長女クリンは、14歳の時に胆泥症と診断されました。病気を見つけていただいた病院では、手術を強く勧められましたが、その時に違和感を感じ、自らセカンドオピニオンを申し出、違う病院で投薬治療でもいけるといわれ転院しました。

その病院に1年ほど通った時に、今度は子宮の不具合が見つかりました。約2年間、子宮の治療も投薬で行っていましたが症状は改善されず、別の病院で診察を受けたところ、手術をした方がいいといわれ、転院して手術を受けました。

今回は転院の経緯と、飼い主として思ったことを書きたいと思います。

 

 

胆泥症発覚!その時の心境と感じたこと

 

我が家の愛犬クリンは、14歳になるまで病気もなく、動物病院には毎年のワクチン及び狂犬病接種とフィラリア予防のお薬をもらう以外にはほとんどお世話になることがありませんでした。

なので病院を選ぶ基準は、利便性が一番で、自宅から近くて駐車場があって、待合室が広くてそこそこキレイな病院を選んでいました。

13歳を過ぎたあたりから、フィラリア検査で血液を採取してもらった時に健康診断として血液検査を受けるようになりました。2014年の6月に、当時通っていた病院で血液検査を受けたところ、GPT(肝臓に異常がある時に基準とする数値)が高かったので、エコー検査とレントゲンをしてもらい、胆泥症であることがわかりました。

 

※胆泥症とは → 何らかの原因で胆汁が濃縮して変質し泥状になったもの(胆泥)が胆嚢に貯留した状態

 

クリンの胆泥症が発覚する数ヶ月前に、我が家の次女ニコの乳腺腫瘍が見つかりました。腫瘍は3つあり、避妊手術と合わせて手術をすることになりました。初めての手術でどのくらいの費用がかかるのか心配で確認しましたが、実際に請求されたのは最初に聞いていた額の3倍以上の金額でした。

事前に費用は変動すると聞いていましたが、高くてもこのくらい、といわれた額よりも2倍以上の金額だったため非常に驚きましたが、この時は無事手術が終わったことと、良性腫瘍でホッとしていたので、あまり深く考えていませんでした。

 

クリンの胆泥症がわかった時、担当医から「手術しないと助からないかもしれない」と聞き、目の前が真っ暗になりました。しかし、その先生は胆泥症の手術をした経験がないとのことで、院長に相談するといわれました。

 

そして提案されたのは、

「他の病院から手術のできる先生を呼んであげる」

「今の状態であれば、死んでしまうかもしれない。でも麻酔リスクもあり、年齢を考えると半々の確率で亡くなるかもしれない」

「でも手術しないと助からない」

ということでした。

 

初めての大きな病気ということだけでもショックなのに、いきなり「死」という言葉を突きつけられ、しかも半々の確率で死んでしまうかもしれない「手術」という治療しかできないということで、その場ですぐに決めることができませんでした。目の前のクリンはとても元気で、こんなに元気でピンピンしているのにわざわざリスクを冒す必要があるのか…

ニコの手術のこともありましたし、先生と話をしていても、「クリンの命を助けたい」というより「手術をさせたい」という印象を受けました。麻酔のリスクの話なんて、めちゃくちゃ雑な感じだったんですよね。半々で死んでしまうかもしれないのに。とにかく手術、手術しかないという感じだったので、正直「手術したらお金になるからじゃないのか」と思ってしまいました。

 

 

初めてのセカンドオピニオン~転院まで

 

 

手術以外の治療方法はあるのか、また手術のリスクについて別の先生の意見を聞きたいと思い、以前友人から教えてもらった病院にセカンドオピニオンに行きたい、と申し出ました。申し出るのはものすごく勇気がいりましたが、大切な我が子の命がかかっているためこちらも必死でした。

診断書を書いてもらい、セカンドオピニオンの病院で診察と検査をしてもらいました。その先生のお見立ては、「今とても元気だから、わざわざリスクの高い手術はしないで内科治療で様子を見て、状態が悪化した時に手術は考えればいいのでは」ということでした。

ただ、肝臓に何か影のようなものも見えるから、一度CTを撮った方がいいといわれ、CTの撮れる病院にてサードオピニオンを受けることになりました。

3つめの病院で血液検査とエコー検査してもらった結果、胆泥症はあるけどその他は問題ないので、CTを撮る必要はないといわれました。3つの病院で検査を受け、うち2つの病院から手術しなくても治す方法があるといわれ、とてもホッとしたことを覚えています。

そしてわたしは、迷わずセカンドオピニオンを受けた病院に転院することを決めました。

手術を勧められた病院で、手術を受ける意思はないことと、内科治療をしてくれる病院に転院することを伝えました。するとそこの院長に、びっくりするくらい感じの悪い態度を取られました。確かに転院するというのは病院にとってはいい話ではないですが、それまで長い間通っていたこともあり、とても残念な気持ちになりました。

 

 

胆泥症治療~子宮水腫発覚まで

 

転院してから胆泥症の投薬治療が始まりました。「ウルソ」と「ニチファーゲン」という薬が使われましたが、どちらも肝機能の改善のための薬で、大きな副作用はないとのことでした。14歳当時のクリンは、薬をフ―ドの上に乗せても普通に食べてくれていました。

そのまま投薬治療を続け、胆泥はあるものの初めてエコーで確認した時よりも改善されていってたので、このまま問題なく行けると思っていました。

ところが2015年5月に、突然前足を引きずりだし、その時にもらった痛み止めがきっかけで食べムラが始まりました。

※食べムラについての記事 シニア犬の食べムラ ~食べムラで悩んでいる飼い主さんへ伝えたいこと

 

足を引きずるのは3日ほどで治まりましたが、レントゲンで見る限り関節の状態はよくないといわれていたので、通院は続けていました。食べムラは多少ありましたが、それでも何かは口にしてくれていました。

ところが翌月になり、ヒートのような症状が出始め、クリンが全然食べなくなってしまったんです。それまでの食べムラや食い渋りよりもひどい状態で、匂いすら嗅ぐのを嫌がりました。これはどこかに不具合があるのかもしれないと思い、血液検査とエコー検査をしてもらった結果、子宮内に水が溜まっていることがわかりました。

 

この時クリンは15歳4ヶ月。主治医の先生からは、

「今の年齢と状態を考えると、このまま積極的治療はせずに投薬で逃げましょう。もし命にかかわる重篤な状態になったら、子宮と胆のうを同時に摘出する手術をすればいいから大丈夫です」といわれました。

主治医は有名な大学病院に長年勤務され、数多くの手術の経験がある先生だったので、「大丈夫」という言葉でとても安心し、先生の言う通りにしようと思いました。

子宮水腫の治療は、「アリジン」という注射で水腫が悪くならないようにする方法でした。まだあまりメジャーではないとのことで、ネットで調べても全然出てきませんでしたが、副作用があまりなくて効果は結構出るという話で、試してみることにしました。

1回目の注射の24時間後に2回目の注射を打つとのことで、初回は注射の後に食欲が戻りました。子宮内の炎症はあったようで、CRPが少し高かったので抗生剤を飲んだ方がいいといわれましたが、薬を嫌がることも十分ご存知だったので、2週間効くタイプの抗生剤を注射してもらいました。

 

とにかく一番困っていたのは「投薬」でした。それまではご飯の上に乗せてフードと一緒に薬を食べる方法しかとってなかったので、ご飯を食べないと薬も飲めないことになります。でも体に不具合が出ると薬を処方されます。薬が出ても、飲ませることができないので、八方ふさがりの状態でした。

 

薬を飲ませることがどうしてもできない、と先生に相談したところ、

「薬は必ず飲ませてください」

「好きな食べ物に薬を包んで食べさせてください」

「口を開けて舌の奥に薬を入れて口を閉じさせれば飲み込みます」

「甘いガムシロップに溶かして飲ませてください」

 

そこで好物に隠して食べさせたり、ガムシロップに薬を溶かして舐めさせようとしたり、とにかく言われたことはそのまま実行してみましたが、ものすごく苦い薬だったため、クリンは薬そのものが恐怖になりました。そして口すら触らせてくれなくなり、全く投薬ができなくなってしまいました。

 

 

食べムラと投薬

 

投薬の失敗から強い食べムラや食い渋りが出始め、精神的にかなり参っていたわたしは、すがる思いで主治医の先生に食べムラについて相談しました。

先生からは、食べなかったら病院に来て、といわれてたので、丸1日食べない時は翌日病院で点滴を受けていました。輸液の中に食欲増進作用のある薬(ステロイドの副作用を利用する方法)を少量入れてもらったり、別の薬をもらったりしました。

 

その頃には「好物」はすっかりなくなってしまっている状態で、薬も苦みのあるものは一切ダメ。ウルソとニチファーゲンは無味だったので、匂いの強いトッピングで何とかごまかして食べさせたりしていましたが、薬を飲まない子に薬を飲ませるのって本当に大変なんですよね。病院では「薬を飲ませてください」しかいわれないし、どの方法も失敗しているから、どうしていいかわからない。もはや口すら触らせてくれないクリンを前に、泣いたりわめいたりしていました。

 

当時は精神的にかなり追い詰められた状態で、ご飯を食べなかったら弱ってしまうかもしれない、薬が飲めなかったら状態が悪化するかもしれない、どうしようどうしよう……と焦りと不安で押しつぶされそうでした。(※投薬と食べムラについては別記事にまとめます)

この時の経験が、サイトを始めるきっかけにもなりましたが、本当につらくて苦しくて、思い出しただけでも吐きそうなくらいしんどくなってきます。そのくらい参っていました。

 

不思議なもので、飼い主の精神状態が悪くなると、愛犬の調子も悪くなるんですよね。毎日、今日はご飯を食べるだろうか…ばかり考えていました。多い時では缶詰やジャーキー類、ふりかけや肉や魚など5~6種類くらいの食べ物を用意し、クリンの前に差し出しましたが、あれもこれもいらないといわれて、食べ物を放り投げたこともあります。冷蔵庫の中はクリンが食べなかったウェットフードや調理したものが入ったタッパーでいっぱいになっていました。ドライフードも、おそらく30~40種類試したと思いますが、なかなか食べてくれるものに当たらず、置き場所のないような状態でした。

 

そんなこんなでクリンの食べムラはひどくなり、徐々に体重が減ってきました。子宮水腫が発覚した時は3.6㎏あった体重が、10月半ばには3.3㎏になりました。そして全く食べなくなってしまったため病院に駆け込んだところ、炎症数値が1.2に上がっていました。エコー検査の結果、子宮の腫れはありませんでしたが、膵臓がエコーに写っていました。もしかしたら膵臓に炎症があるかも、とのことでしたが、この日の血液検査では数値としては出ておらず、抗生剤を点滴してもらい様子見といわれました。

翌日は何とか少しは食べたものの、その日の夜は全く食べなくなったため、翌朝に病院に行くとCRPは6.7に跳ね上がっていました。点滴をしてもらいましたが、その日の深夜にぐったりとして動かなくなり、うずくまるような体勢で尿を垂れ流しているような状態になりました。

夜が明けるのを待って朝一で病院に駆け込んだところ、CRPがさらに上がっていて、即入院となりました。

 

 

(2)に続く

 

ライター:福井 惠子